トランプ関税砲で日本の食卓に何が起きるか…エコノミストが「食材の価格高騰よりも心配」という意外な影響
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第2次トランプ政権が発足した。「米国第一」の高関税政策が及ぼす、日本の食生活への影響は何か。エコノミストの崔真淑さんは「トランプ前政権では、日本政府は安い輸入品や農作物をアメリカから多く受け入れた。今回も関税を武器にさまざまな交渉を推し進めてくる可能性を考えておかなければいけない」という――。
トランプ関税砲が放たれる
プチ農業を始めて4カ月。春菊やカブ、ブロッコリーなど自分で育てた野菜を食べる喜びを味わいながら、「食」への関心もいっそう高まる新年の始動です。
日々、食べているものが、実際どんな経緯で自分の口まで届くのか。私が今、最も気になっているのは、“タリフマン(関税男)”を自称する米トランプ大統領の関税による、輸入食品への影響です。
「トランプ関税砲」という言葉もちまたで聞かれるように、対中国に60%、カナダやメキシコに25%、それ以外の国にも10~20%の関税をかけるといった公約を掲げてトランプ政権は始まりました。
この関税政策に対し、「The Washington Post(ワシントン・ポスト)」は、輸入品すべてではなく特定分野に絞って関税を課す方向で議論が進んでいると年初めに報じましたが、トランプ氏自身がこれを、「誤りでフェイクニュースだ」と否定。実際、「関税など外国からのすべての歳入を徴収するために外国歳入庁を創設する」と自身のSNSに投稿し、大統領就任の1月20日からの新庁創設となったのです。
高関税時代に執着するタリフマン
英国経済誌『The Economist(エコノミスト)』は昨年末、トランプ新政権に対して次のような見解を報じていました。
「共和党にも、海外に一律関税をかけることを反対している議員もいる。なぜなら関税をかけると、輸入品が値上げになるため、結果的に国民の負担が増えてGDP(国内総生産)がマイナスになる。よって間接的に増税になることから、景気が失速してしまうのではないかと懸念しているからだ」と。
こうした臆測をものともせず、トランプ氏は25年1月1日にSNSで「関税。そう関税だけが、かつて我が国に大きな富をもたらした」と発信します。19世紀末の「高関税時代」への郷愁をストレートに表明、まさに、タリフマンの声明です。
日本としても、トランプ氏の関税政策のみならず、関税を武器にさまざまな交渉を推し進められる可能性を考えておかなければなりません。なにしろ米国は、日本の農林水産物輸入国の第1位(第2位は中国)、輸出国の第3位(第1位・中国、第2位・香港)であり、輸入額は約2.1兆円、輸出額においては2062億円(2023年統計)という関係だからです。