「うちは男の子だから」は危険。デジタル性犯罪、保護者が性別を問わずに取るべき対策
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小学生の約半数がスマホを持つ時代、テクノロジーの恩恵の裏に隠れるリスクをどこまで把握していますか? コミックエッセイストのハラユキさんといっしょに、いま保護者が知っておきたいネットリテラシーを専門家に伺う新企画。第一弾は、ITジャーナリストの高橋暁子さんに、デジタル性犯罪の手口と対策について伺いました。
▽▼▽前編はこちら▽▼▽
デジタル性犯罪と聞くと、狙われるのは女の子に限った話だと思うかもしれません。しかし現実には男の子も被害に遭っています。
2019年に香川県在住の女が、荒野行動を介して知り合った福岡に住む小6の男の子を自宅まで呼び寄せ、強制性交に及ぶ事件がありました。
NHKの『クローズアップ現代+』で昨年男性の性被害が取り上げられ、これまで性暴力に遭ったことのある男性のうち半数以上が10代のころに被害に遭ったと判明しています。男の子をターゲットにする男性加害者も存在することを知ってほしいです。
また男の子の場合、女の子以上に自分の受けた被害に気付けないことが多く、また気付いたとしても言い出しにくい現状があります。男の子を育てる保護者側も「うちは男の子だし」と油断しがちで、女の子に比べると注意喚起が十分ではありません。
女の子ほどプライベートゾーンを大事にするよう教育されていないこともあり、ふざけて下半身丸出しで踊る動画などを送ってしまい、それが拡散されて学校に行けなくなってしまった例もあります。
ここまでの話でおわかりかと思いますが、保護者は子どもの性別にかかわらずデジタル性犯罪の対策をする必要があります。
自分の裸を撮らない、送らない。
直接面識のない人に住所や学校、本名などの個人情報を言わない。
呼び出されても会わない。
これらを男女問わず伝えていきましょう。
また、気を付けるべきはスマホやタブレットだけではありません。オンラインゲームはネットワークに接続できるあらゆる端末を使って遊ぶことができます。子どもはゲーム機のNintendo Switch やDSなどからログインする場合も多く、まさにその点に目を付け、ゲーム機からログインしているアカウントに狙いを定めたと証言する加害者がいました。
ゲーム機でも「Nintendo みまもり Switch」のような保護者による使用制限をかける、GPS機能をオフにするなどの工夫が必要です。
さらに、学校で配られるタブレットやパソコンも油断はできません。自治体によって制限内容に大きな差があるからです。ある自治体ではYouTubeやWikipediaなど一部のサイトが閲覧できない、夜間にはアクセスできないなどの制限がある一方、何の制限もない自治体もあります。
また制限がかかっている場合でも、検索で制限を外す方法を見つけ出し、自由にサイトを閲覧する子どももいます。過去にはGIGAスクール構想で配布された端末からデジタル性犯罪被害に遭った子どももおり、保護者は気にかけておく必要があるでしょう。
そういったことを踏まえると、子ども用のスマホやタブレットを用意し、携帯会社が無料で提供しているフィルタリングサービスに加入し、さらにはiPhoneであればスクリーンタイム、Androidであればファミリーリンクを設定して、年齢に合わせて機能を制限したり、離れた場所からでも子どものスマホを確認できるようにしておくのが望ましいでしょう。
設定はアプリごとに変更することもできます。たとえばTikTokにはフレンド同士でないとDMが使えない、コメントもできないようにする設定があるのでそれぞれ確認してみましょう。
そして大前提としてお話したいことですが、SNSやオンラインゲームにはそれぞれ対象年齢が設定されています。Twitter、Instagram、TikTokなど主要なSNSはだいたい13歳以上の使用を推奨しています。フォートナイトは原則15才以上を(iPhone版のみ12才以上対象)、荒野行動は原則17歳以上を対象としています。
しかし実際にはたくさんの小学生がこれらを利用しています。対象年齢以下の子どもが利用する場合は、保護者の見守りが必須ということを意味しています。SNSやゲームの年齢制限はあまり知られていないのですが、ぜひ意識してほしい点です。
上記のように保護者がさまざまな対策を取れば、加害者による子どもへの接触はある程度減らすことができます。それでももし子どもがデジタル性犯罪の被害に遭ってしまった場合、保護者はどのように対応すべきでしょう。
まず被害が発覚した時に保護者が最も優先すべきことは、子どもの心のケアです。
「なんでそんなアプリを使ったの」「なんでそんな人についていったの」など、子どもの行動を非難したり責めるような声がけは、被害に遭って動揺している子どもの心をさらに傷つけます。保護者からの非難は、保護者が思う以上に子どもにショックを与えるものなのです。
デジタル性被害に遭って誰よりも傷ついているのは子ども本人であり、誰よりも悪いのは加害者です。子どもの行動を批判するのではなく、心に寄り添って味方をしてあげてください。
「(性被害に遭った)自分が悪い、自分は汚い」などと子どもが自分を責めてしまうことがないよう、専門の相談機関を利用しながら子どもの心をケアしましょう。
もし子どもの画像や動画がネット上に流出している場合は、専門機関などに削除依頼することも可能です。
デジタル性犯罪の相談窓口リスト
【電話での受付】
#9110
※性被害に限らない警察本部相談窓口
#8103
【ネットからの受付】
活動内容:児童ポルノ・リベンジポルノ・性的な盗撮などのデジタル性暴力、アダルトビデオ業界、性産業にかかわって困っている方の相談窓口
活動内容:リベンジポルノ画像・動画の削除、悩み相談、警察への通報などの相談窓口
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(※1)全国拠点一覧
相談先、削除依頼先に迷う場合はこちらから
(※1)一カ所で必要な支援を提供する施設。主に性犯罪・性暴力の被害者に対し被害直後から総合的な支援を行う施設を指す。精神と身体の回復を図り、さらに警察への被害届出促進などを行う。性的被害を受けた女性が適切な治療や支援につながりにくく、また警察への被害申告率は1割程度となっている問題を解決するために作られている。
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高橋暁子
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<漫画>ハラユキ
<取材>ハラユキ、KIDSNA編集部
<執筆>KIDSNA編集部