愛着障がいの専門家が教える!愛着形成に必要な3つの基地のつくり方

愛着障がいの専門家が教える!愛着形成に必要な3つの基地のつくり方

2024.03.12

KIDSNA STYLE編集部が選ぶ、子育てや教育に関する話題の最新書籍。今回は、『発達障害? グレーゾーン? こどもへの接し方に悩んだら読む本』(フォレスト出版)をご紹介します。臨床発達心理学・実践教育心理学を専門とし、“こどもの愛着障がい”の第一人者である米澤好史氏が、こどもの行動の原因と、困ったを減らす接し方、愛情を伝える接し方をわかりやすく解説する一冊から、後編は、愛着の結び方と愛着が結べていない場合に起こりやすい特徴を抜粋してご紹介します。

この本の発見ポイント
 

▼▽▼前編はこちら▼▽▼

発達障がいと愛情不足の違いを“こどもの愛着障がい”の第一人者・米澤好史氏が解説

愛着の問題は誰ともうまく絆が結べていないと起こる

愛着とは「特定の人と結ぶ情緒的なこころの絆」のことで、その愛着の絆がうまく結べていないのが、愛着の問題。つまり誰とも愛着の絆を充分に結ぶことができず、 関係性をきちんとつくれていないという「関係性」の問題です。

でも、勘違いしないでください。愛着の問題は、愛情を与えたか与えなかったから起こる問題ではありません。

特定のふたりのあいだの関係性の問題ですから、親としては適切なかかわりをしているつもりでも、愛着の問題は生じます。いわば愛情の行き違いです。

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※写真はイメージ(iStock.cm/Prostock-Studio)

そのため、上の子とは愛着を結べているけれど、下の子とは結べていないという状況が起こり得ます。

愛着の問題を抱えるこどもたちに共通するのは、特定の人との絆を体感できていないために、情緒や感情が未発達だということ。自分で自分の気持ちがわからないのです。だから混乱し、困った行動を起こします。

愛着の正体は3つの基地機能

こどもたちの感情を育む土台となる「愛着」には、3つの基地機能が備わっています。〈安心基地〉〈安全基地〉〈探索基地〉の3つです。

愛着とは「特定の人と結ぶ情緒的なこころの絆」のことでした。3つの基地機能は、こどもにとって、この「特定の人」となる人物が担う機能と考えていいでしょう。特定の人はもちろん母親だけに限られず、父親や身近な大人にも可能です。

この3つの基地の機能がしっかり働くことによって、愛着の絆が結ばれていくことになります。その過程で、こどもたちは「自分は自分でいいんだ」「ここに居ていいん だ」と何の疑いもなく自分の存在を肯定し、他者からの愛情を素直に受けとれるようになっていくのです。

つまり、この3つの基地機能こそが、愛着という「特定の人と情緒的に結ばれるこころの絆」の正体なのです。

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※写真はイメージ(iStock.cm/fizkes)

実際には、①安心基地→②安全基地→③探索基地という順番でつくられていくことになります。まずはそれぞれの基地機能について、順にお話ししていきましょう。

【安心基地】一緒にいるとほっとする安心感

〈安心基地〉とは、とくに不安や心配などがないときでも、「一緒にいると心地がいいな」という安心感を得られる基地のことです。

普段から、この人のそばにいると「ほっとするな」「落ち着くな」「なんだか幸せだな」というように、ポジティブな気持ちよさを感じさせてくれる存在としての機能ですから「会いたい」「いつも一緒にいたい」という気持ちも生まれます。

この誰にも侵されることのないゆるぎない安心感が、愛着形成におけるいちばん最初の基地機能です。この人と一緒にいれば大丈夫 ――そう思える「誰か」との絶対的な「つながり」の感覚です。

愛着の問題を抱えるこどもたちの感情の問題の多くは、この〈安心基地〉を得られていないことからきています。問題の根本原因がこの安心感の欠如にあると考えると、こどもたちの行動の理由もまた、よく見えてくるのです。

【安全基地】必ず守ってくれる信頼感

愛着形成における2番目の基地機能は〈安全基地〉です。自分が何か嫌な気持ちになっても、「この人が必ず守ってくれる/自分は守られている」という信頼感です。

生後5〜6カ月のあかちゃんが、「人見知り」をするのはご存じですよね。この時期のあかちゃんは、知らない人が近づいてくると怖くて泣き出すわけですが、そこで「お母さん/お父さんがいるから大丈夫だよ」と守られた経験が、安全基地の認知につながります。

「こわい、どうしよう」という恐怖や不安、怒りや悲しみのような強いネガティブな感情に襲われたときにも、嫌な気持ちから必ず守ってくれる。そうした存在として機能するのが安全基地です。

【探索基地】ひとりで探検できる自立心

愛着形成における3番目の機能である〈探索基地〉は、こどもたちが安心基地や安全基地から離れ、ひとりで新たな関係を結んでいくための精神的自立の基盤となる基地です。

〈安心基地〉や〈安全基地〉は、その基地を担う人と一緒に過ごすことで確認する機能で、「この人と一緒にいると心地いい」「この人が必ず守ってくれる」という存在でした。

それに対して探索基地は、居心地のいい基地からいったん離れ、また基地に戻ってくるという動線のなかで確認される機能です。こどもたちは、特定の人のもとを離れてひとりで探検し、また戻ってきてエネルギーチャージすることで、つぎの探検へと出かけます。

〈探索基地〉は、いわば愛着形成のゴールです。探索基地が機能すれば、「愛着形成が完成した」と言えるのです。

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※写真はイメージ(iStock.com/kokoroyuki)

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基地機能が働いていないこどもにあらわれる特徴

愛着の絆は、特定の人とのあいだに〈安心基地〉〈安全基地〉〈探索基地〉の3つの基地機能が働くことで育ちます。ですが、これらの基地機能が充分に働いていないと、「愛着の問題」としてさまざまな特徴があらわれます。

「安心基地」をもたないこどもに起こること

・モノをさわる

・いろんなモノを口へもっていく

・床に触れる

・愛情欲求行動

・過剰にスキンシップをする

「安全基地」をもたないこどもに起こること

・人を警戒する

・危ない行動をする

・痛みに鈍感

・自己防衛

「探索基地」をもたないこどもに起こること

・姿勢や服が乱れる

・自己評価が低い

愛着の絆は誰でも、いつでも結ぶことができる

お子さんに当てはまるものがあって、不安になってしまった方もいるかもしれませんね。でも、あわてる必要はありません。愛着の絆を結ぶことは、誰にでも、いつからはじめても、可能です。

「自分をわかってくれる人がいる」「必ず守ってくれる人がいる」「ポジティブな感情にもネガティブな感情にも共感し、励ましてくれる人がいる」こうした基地機能を充分に経験したこどもたちは、たくましく育ちます。「あるがままの自分でいい」というゆるぎない自己肯定感が、しっかり備わるからです。

誰かとしっかり愛着を結べたという体感は、こどもたちのなかで潜在的な記憶としてその子のなかに刻まれます。すると、その後の人生において、その子の存在を認め、 癒やし、守り、励ましつづける“目に見えない効力”となって機能しつづけます。

自信をもち、自立し、他者と喜びを分かち合い、愛を受けとって健やかな関係性を築く。そのための基盤として愛着の絆は、すべてのこどもに必要なものなのです。

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発達障害? グレーゾーン? こどもへの接し方に悩んだら読む本(フォレスト出版)
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