【教えて!高濱先生】ひらがなや計算の勉強は何歳から始めるべきですか?

【教えて!高濱先生】ひらがなや計算の勉強は何歳から始めるべきですか?

2021.04.20

Profile

高濱正伸

高濱正伸

花まる学習会代表

1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数

読者からお悩みを募集し、子育て、教育、健康など各分野の専門家にご回答いただく人生相談コーナー。今回は花まる学習会代表の高濱正伸先生が、教育に関するお悩みに答えます。お悩みはオンラインで随時受付中。

【お悩み】ひらがなや計算の勉強は何歳から始めるべきですか?

(7歳男子・0歳女子のパパ)
(7歳男子・0歳女子のパパ)

何歳頃から「ひらがな」や「計算」の勉強を始めるのが適切なのでしょうか。

 

また、教え方や学び方もいろいろあると思いますが、教え方にこだわる必要はあるのでしょうか。

たとえば、公文式などでは繰り上がりの足し算をするときに、「繰り上がる数字を『1』と記載しないで計算できるように」と指導されることもあり、どのような学び方が適切なのか悩んでしまいます。

高濱先生の回答「幼児期から始めても大差はなし。まずは夫婦間で、教育方針としつけのすり合わせをしましょう」

まず、字と計算の習得ということであれば、とくに幼児教育の必要はないでしょう。

 

小学校に入学すれば国語力は自然にしっかりしてくるし、計算も小学生になってからスタートして東大に合格する子をたくさん見てきました。もちろん幼児期に始めても害はありませんが、大差はありません。

 

次に、計算などの学び方については、学校と塾、学校と通信教育、学校の中でも先生ごとに手法が違うということはよくあります。だから、親御さんは「どっちのやり方が正しいの?」と不安に思っちゃうんですよね。

 

これに関してよく話題になるのが、かけ算の「かけられる数とかける数」。

たとえば「50円の団子が8個ありました」という問題で、「8×50」でも「50×8」でも、どちらも正解にも関わらず、日本の教育現場では「8×50」は不正解になってしまう場合があります。世界標準では計算ができて答えが合っていればよくて、暗算ができるようになることが目標なので、そのための手段としての流派の違い程度と捉えましょう。

 

相談者さんは今回、読み書きや計算の勉強について聞いてくださったのですが、実は昨今の幼児教育では、読み書きや計算よりも「非認知能力」に集中した方がよいという話が注目されていて、すでにエビデンスも出尽くしています。

 

たとえば積み木を高く積み上げて崩すとか、なんでもいいから「子どもが熱中していることを大事にすること」が非認知能力そのもの。ただし、これは“大人にやらされてる感”があってはいけません。「これをやれば非認知能力が伸びるからやりなさい」というスタンスではなく、迷路やパズルなど子どもにとって遊びの一環であることが重要です。

幼児教育に限ったことではありませんが、こうした話題では夫婦で意見が分かれることも多いでしょう。

 

夫婦ですり合わせるべきなのは、子どもの「教育方針」と「しつけ」です。

 

たとえば、受験をするのか、ピアニストを目指すのか、スポーツ選手を目指すのか、東大を目指すのかが教育方針で、それを実現するための核となるのがしつけです。

 

私が見てきた中で、高校生から世界に飛び出して学んだり活動したりしている子や、有名大学に進学して研究者を目指す子など、「良い育ち方をしたな」と思うような生徒は、「3つだけ守りなさい」というようなシンプルなしつけをする家庭が多いのです。

 

ある家庭は「靴を揃える」「挨拶をする」「『はい』という返事をする」この3つだけはきちんとしなさいという教えでした。こうした一見シンプルなことをきちんと守りさえすれば、ほぼすべてのモラルは維持できる人になりますから、するどいご両親だなと思いました。

 

つまり、こうした一番核となる部分を夫婦できちんと決めておかないと、すれ違ってケンカになってしまうんですね。

育ってきた環境や文化圏が違うからこそ、内なる価値観は妻も夫も必ずしも同じではないはずです。しつけにはこれという正解はありませんが、哲学や文化、因習は全然違うはず。こうしたものは、本人は「これが当たり前」と思っていることなので、それをないがしろにされるとすごく腹が立つものです。

 

だからこそ、教育方針というのは夫婦のラブだけではできあがらない。テレビを消し、スマホを置いて、「子どもに、どんな人に育ってほしいか」「そのために何を大切にしたいか」を、しっかり時間を取って意見をぶつけあって決めてください。決まったら、お互いにそれを条約だと思ってしっかり守るようにしましょう。

日本人はそもそも、「少しでも相手が不快に思うことは言ってはいけない」と思い、話し合いや議論を避けてしまう文化ですよね。話し合えない夫婦は、父親学級などで僕のような第三者が言わない限り、話し合わなくてもどうにかなると思ってる人も多いです。そういう人には、ぜひ一度僕の講演を聴いてほしいですね(笑)。

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1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数

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