「早来学園」がついに開校! 地域と学校が連携し、日本一の公教育を目指す「安平町」の教育現場に迫る
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日本一の公教育の町を目指す北海道安平町。ユニセフの推進する「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)」を実践する自治体として、子育て教育を政策の大きな柱として掲げている町です。「学び」を「挑戦」につなげる独自の教育事業「あびら教育プラン」を推進し、子どもから大人まで挑戦をし続けられる町づくりを行っています。そして、2018年に起こった震災の復興シンボルでもある「早来学園」が2023年4月ついに開校。生徒や保護者、地域住民たちからの生の声をご紹介します。
教育のまち 北海道安平町が挑戦する大プロジェクト
ユニセフの推進する「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)」を実践する自治体として2021年に日本で初めて承認された安平町は、2018年9月に起こった北海道胆振東部地震の被災地でもあります。被害を受けた早来中学校は、老朽化が進んでいた早来小学校と一体化した新校舎を設立することに。
安平町では校舎を元に戻すだけではなくより良い学校をつくることを目標に、新設する小中一貫義務教育学校「早来学園」を復興のシンボルとして取り組んできました。「自分が“世界”と出会う場所」をコンセプトとして、専門家と力を合わせながら、子どもたちも主体となって学校づくりを進めてきました。
今年4月に「早来学園」が開校! 生徒や住民からの反響は?
2023年4月、町内の早来小学校、安平小学校、遠浅小学校、早来中学校の4校が統合し、地域住民が待ちわびていた早来学園がついに開校。子どもたちは新しい環境にも慣れ、毎日をいきいきと学校生活を過ごしています。開校後の子どもたちの様子や、地域住民からの反響はどのようなものでしょうか?
2019年に東京から移住し、あびら教育プランの推進や学校魅力化コーディネーターなどを担当してこられた教育委員会職員の松岡亮さんに詳しいお話を聞きました。
縦割り文化でいきいきと
早来学園では、縦割り活動の機会が多く設けられています。たとえば毎日の掃除時間も縦割り清掃で、さまざまな学年がいっしょになって実施しています。
松岡さん:5月に行われたスポーツフェスティバルも縦割りのチームで競い合い、学年の枠を超えて勝負をして応援して、大盛り上がりでした。
松岡さん:また、休み時間にもまなびお図書室やオープンスペースを使い、1年生~9年生までが楽しそうに交流している姿が見られます。
中央の廊下にあるピアノを弾く子がいれば、周りに人が集まりストリートピアノのように盛り上がっていたり。廊下に設置された柔らかいベンチのようなものでリラックスする生徒、ダイナースペースで談笑をする生徒など、自分の教室だけではなく開かれたスペースで自由に過ごしています。
松岡さん:元気いっぱいの低学年の子どもたちが、校舎内にとどまらず裏の丘の上まで一気に駆け上がるにぎやかな声も聞こえます。
地域に開かれた学校が大好評
地域開放スペースの中央にある「まなびお図書室」は、予約なしでいつでも気軽に入れるので、小さな子どもから高齢者まで毎日多くの住民が利用しています。
大小あるアリーナは、さまざまなスポーツ団体の練習や、映画上映会のようなイベントにも使われています。創作アトリエでは学童や放課後教室「あびらぼ」の授業が行われたり、キッチンではおさいほう教室や地域食堂が行われる日もあります。
松岡さん:まなびお図書室では、未就学児のママたちがランチを食べていたり、学生が宿題やテスト勉強をしていたり、イベントが開催されていたり、多様な地域住民が自然に利用している光景が見られます。
松岡さん:アリーナなどのスペースはインターネットから簡単に予約ができることや、21時まで使えることがありがたいと好評です。
そして、地域住民にも開けた設計になっていることで、子どもたちの学校での様子や授業風景が見えることが、なによりも喜んでいただいています。「今の学校ってこんな感じなんだ」「孫が見えました!」「自分の小さな子どもが中学生のお兄ちゃんお姉ちゃんに遊んでもらえるなんて思いませんでした」などの声が聞けたのはうれしいことです。
「あびら教育プラン」で大切にしていること
安平町では、子どもから大人まで生涯を通じて「学び」から「挑戦」につなげる独自の教育手法「あびら教育プラン」に取り組んでいます。乳幼児~小学生は「遊育」、小学5年生~中学生は「あびらぼ」「ワクワク研究所」、小学生~大人まで全世代を対象に「ABIRA Talks」という4つの事業があります。
※以前あった「カイタク」事業を「ワクワク研究所」と「ABIRA Talks」に分割したため、3事業が4事業になった
松岡さん:幼児から小学生を対象にしたあそびの事業「遊育」では、遊びの機会・場所・遊びそのものを提供しています。
与えられた遊びをただこなしているのではなく、「作り手になる」という考えを大切に、その子ならではの「やりたい」を解放することを目指しています。子どもたちは遊びを通じて、やってみたいことや、もっと知りたいことがどんどん増えていきます。
その次に、世の中のヒト・モノ・コトとの出逢いを通して、子どもたちの好奇心に火をつけることを目的にした放課後教室が「あびらぼ」です。医療・音楽・建築・ビジネス・お金などさまざまなテーマを探求し、子どもたちの視野を広げます。
このような取り組みを続けるうちに子どもたちは世界を「おもしろフィルター」を通して見ることができるようになります。見つけたテーマと自分らしさを掛け合わせたときに、どんな面白いことに挑戦できるんだろう、と自分だけの挑戦ができる場所が「ワクワク研究所」です。
そして見つけた自分のやりたいことやアイディアを形にするためには、仲間や資金が必要です。それを集うために挑戦できるクラウドファンディングイベントが「ABIRA Talks」です。子どもから大人まで誰でも挑戦することができます。
安平町に移住したら、子どもたちはどんな経験ができるの?
東京から安平町に移住した松岡さんに、住人として「移住してよかった」と感じている点や、子どもたちにとってメリットになる点について教えてもらいました。
季節ごとの自然遊びができる
松岡さん:遊育の取り組みの中で、季節ごとにさまざまな遊びに参加することができます。たとえば夏は、山に行ってカブトムシを採ったり、水鉄砲でサバイバル合戦をしたり。
冬には雪遊びの運動会『スノーパークフェスティバル』を開催したり、スーパー雪合戦をしたり。安平町の大自然だからこそできる遊びをたくさん経験できます。
核家族ではできないことが「遊育」でできる
松岡さん:季節ごとの自然遊びもそうですが、各家庭だけで行うことはなかなか難しい遊びを「遊育」でたくさん企画しているので、気軽に参加できるのが良いところです。家族だけでは「外で雪合戦しよう!」とはなかなかならないけど、「イベントがあるから行ってみよう!」と外に出る機会が増えるのがいいなと実感しています。
私は3歳の子どもがいますが、イベントに参加すると、初めて会ったお兄さんお姉さんが自然と遊んでくれることが多いんです。私自身も気付いたら知らない子といっしょに遊んでいたり。家族だけではなく、みんながほどよい距離感で過ごせるところが都会とは違うなと感じます。
「遊育マルシェ」という自分が好きなことややってみたいことを出店するイベントも盛り上がりました。小学生がポップコーン屋さんをやったり、輪投げ屋さんをやったり。お母さんたちは手作りのケーキや手芸品を売っていたり。大人もいっしょに楽しんでいる姿を見て、子どもたちもうれしそうにしていました。
安平町ならではの学校教育が受けられる
松岡さん:安平町内の小中学校における総合的な学習の時間では、地域のモノ・コト・ヒトを生かしたカリキュラムが設計されています。
特産品であるアサヒメロンを学校で栽培する学習、被災地として地震を学び、災害時に自立した行動をとるための防災キャンプ、馬産地として馬について学んで謎解きゲームを観光客向けに提供する学習、地域の農家さんの協力を得て田植えから脱穀・精米まで自分たちで行う米学習など、地域の特性を生かした安平町ならではの取り組みがあります。
早来学園や安平町の情報を発信中!
大自然に囲まれ最新のICT技術を取り入れた「早来学園」や、子どもから大人まで生涯の学びをサポートする「あびら教育プラン」について、さらに詳しく知りたいと思いませんか?
早来学園ホームページでは、学校の特徴や校舎の詳細についても紹介しています。
また、安平町の暮らしやあびら教育の魅力、実際に移住した方のリアルな声も知ることができます。