「天才=創造性が高い人」発達障がい遺伝子の有意性 AI時代を生き抜く子どもを育てる!脳教育メソッド【澤口俊之】
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神経科学者/人間性脳科学研究所所長
神経科学者/人間性脳科学研究所所長
人間性脳科学研究所所長 武蔵野学院大学&大学院教授 1959年、東京生まれ。 京都大学理学研究科博士課程修了(理学博士;Ph.D)、日本学術振興会特別研究員、米国エール(Yale)大学医学部研究員、京都大学霊長類研究所助手などを経て、1999年に北海道大学医学研究科教授に就任。2006年人間性脳科学研究所(Humanity Neuroscience Institute, HNI)所長。2011年9月武蔵野学院大学教授、2012年4月から同大大学院教授も兼任。専門は神経科学、認知神経脳科学、社会心理学、進化生態学で前頭前野(前頭葉の最前部)の機能ならびに構造を中心に研究。
「発達障がいの“障がい”という表現は不適切である」と、脳科学者の澤口俊之さんは言います。第4回となる今回は「10人に1人がADHD」と言われる発達障がいとされる児童の増加背景と私たち大人が「改めるべき考え方と行うべき行動」についてお話いただきました。
文部科学省の最新調査「通級による指導を受けている児童生徒数の推移」(令和元年)によるとは国公私立の小・中・高等学校において、通級による指導を受けている児童生徒数は134,185 名(前年度 123,095名)であり、11,090 名増加。障がい種別では、言語障がいで 937 名、自閉症で 1,460 名、情緒障がいで 3,083 名、学習障がいで 2,096 名、注意欠陥多動性障がい(ADHD)で 3,409 名の増加となっています。
なぜこれほどまでに、発達障がいとされる子どもが増えているのでしょうか。
ひとつには、発達障がいの診断基準が変更されたことが理由と考えられています。
しかし、一方で発達障がいは、生まれつき(生物学的要因)と後天的要因(環境要因)の両者が関係していると考えられていますので、遺伝子レベルで発達障がいの素質(変異も含む)をもった子どもはこれまでも、一定程度存在してきたとも言えます。
だからこそ、逆をいうと本当のASDやADHDのお子さんは珍しいのです。
つまり、その子の育つ環境によって改善するからです。
脳科学者は脳機能テストをし、定量化をすることでASD、ADHDの傾向があるか否かを見極めます。
テストの結果、軽度だったら個性と見なし、まったく問題ありません。
さらに進化論の見地からASDやADHD、統合失調症などの遺伝子が今も存在する理由として、人類に役立つからこそ残っている、とみなすことが妥当です。
しかも、ASD、ADHDの人は、「天才(創造性が高い人)」とする研究結果も あり、さらに知能が高ければ、創造性を活かした仕事で成功します。
しかも、人が今も狩猟民族であり続けていた時代であれば、ASDやADHDの人はそれだけで尊敬に値する人物であった、とする論文が発表されているのです。
つまり、ADHD、ASD遺伝子をもっている方がいいとも言えるのです。
その素晴らしい個性を引きあげてあげないと現代社会ではじかれてしまいます。
残ってきた遺伝子なのに、活かせない。こんなもったいないことはありません。
一般的に発達障がいのある子は、ワーキングメモリが低いと言われています。
ワーキングメモリは、前頭前野の神経システムが作る働きです。短期記憶と混同されがちですが、短い時間、一時的に頭の中で情報を保持しながら処理する能力のことを指します。
つまり、「自己制御力」「注意力」「創造性」「協調性」「社会力」「社会関係力」の基礎となる脳機能です。
ですから、ワーキングメモリはトレーニングで改善できます。
「ある情報を短時間覚えてもらい、その情報に対して特別な質問を出して覚えている情報から答えを引き出す」という訓練です。
しかし、ちょっとしたことで“改善が改悪”になるので注意が必要です。
個人の脳の特性などにより、覚えてもらう情報や方法は適宜、異なります。したがって、専門家の指導を受けて実施することが推奨されます。
そして学校の先生には「この子は改善する」と信じて指導して頂きたいと思います。
そして家ではできなかったことに対して、「ダメだな」とは言わず、「惜しかったなあ、もう少しで〇点だったな」と褒めたり、興味をひかせたりしていくことが重要です。
一番よくないのは、分けてしまうことです。発達障がいをネガティブに捉え、支援学校や学級を作って入れてしまう。そうすると一生、発達障がいということになってしまいます。
何より、「障がい」という言葉がよくないので、親はその言葉で絶望してしまいます。
「こだわりが強い」「コミュニケーションがうまくできない」「偏食が激しい」「動き回る」「突然叫ぶ」「キレて物を投げる」「文字が書けない」などの症状から発達障がいを疑う人もいますが、これらは細部でしかありません。
きちんとした診断は専門医に診てもらうべきですが、家庭でもチェックできる項目があります。