【専門家監修】子どもの好奇心はなぜ大切?好奇心が育つ時期や高める方法

【専門家監修】子どもの好奇心はなぜ大切?好奇心が育つ時期や高める方法

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大宮 明子

大宮 明子

十文字学園女子大学教育人文学部幼児教育学科教授

十文字学園女子大学教育人文学部幼児教育学科教授 博士(人文科学) 専門は発達心理学、認知心理学 子どもの思考の発達、乳幼児期の親子の関わり等について研究している

子どもの好奇心は大切だと思っていても、なぜ大切なのか、どのようにしたら伸ばすことができるのか、分からない親も多いかもしれません。本記事では、子どもの好奇心が最も育つ2~6歳の間に、保護者がどのようなことに気を付けると子どもの好奇心をより育むことができるのかを紹介します。

子どもの好奇心が大切な理由

未就学児の子どもは興味の対象が移り変わりやすく、「車のおもちゃにハマってると思ったからたくさん買ったのに、すぐに見向きもされなくなった」などという経験をしたことがある保護者も多いでしょう。

また、会話でのコミュニケーションがスムーズではないうちは、子どもが何に興味を持っているのか分かりにくいこともあるでしょう。

好奇心というのは、「新しいことを知りたい」「なぜそうなるのかを知りたい」などの目的で湧いてきます。赤ちゃんのうちは少し分かりにくいですが、身の回りのいろいろなものに興味を示したり、「なんで?」と繰り返したりすることは、好奇心が発達している証拠です。

この好奇心は「わかった! 楽しい!」という気持ちを感じられるだけではなく、さまざまな課題に直面したときに、どうしたら解決できるのかを考える力の源になります。

また、小さい頃に好奇心を伸ばした子どもは、遊びや勉強、スポーツなどにおいても意欲的になり、その分上達も早くなります。このように好奇心は、子どものときだけではなく、長い人生を生きていくうえで欠かせない力となるのです。


子どもの好奇心はいつから芽生えるのか

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※写真はイメージ(gettyimages/Demianastur)

好奇心は、まだ言葉を話したり、うまく意思を伝えたりすることができない赤ちゃんの時期から持っています。赤ちゃんは興味があるものにしばらく視線を向け、「これなんだろう?」「おもしろいな」「不思議だな」と思っていたり、「触ってみたい」「手元に置いてみたい」という気持ちがあるので手を伸ばします。

その他にも、ハイハイなどで動けるようになった赤ちゃんは、興味があるものに自分から近づいていったり、何かを見ると「あー」と声を出したりすることもあります。

自分の手や足の存在に気が付いて、ジーっと見つめたり、なめてみたりする「ハンドリガード」も、赤ちゃんの好奇心の現れですね。このように赤ちゃんの好奇心が、赤ちゃんの周りの世界を知っていくことに役立っています。


子どもの好奇心がもっとも伸びる時期

2〜6才頃は好奇心を伸ばすのに最適な時期だといわれています。

2歳頃までの好奇心は、「あれは何?」「これは何?」と物に対する興味がほとんどです。一方、3歳を過ぎる頃からは「雨はどうして降るの?」「空はなんで青いの?」といった、その事柄の理由に対して興味を持つようになります。

それによって好奇心は爆発的に大きくなっていきます。「どうして?」「なんで?」という疑問を持つには思考力が必要で、また、ひとつの疑問から次から次へと新たな疑問が出てきます。

「なぜなぜ期」の子どもからの矢継ぎ早の質問に、ついうんざりしてしまったり、受け流してしまった経験のある保護者もいるかもしれません。しかし、人生でもっとも好奇心の強いこの時期に、保護者がどのような対応をするかによって、子どもの物事への興味・関心に影響を及ぼします。


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※写真はイメージ(gettyimages/Userba011d64_201)

また、3歳を過ぎた頃からの子どもは、五感だけでなく言葉による知識も獲得することができるようになることも、好奇心をぐんと広げる理由のひとつです。この時期に親子で一緒にさまざまな活動を楽しく行うと、その後の子どもの好奇心のさらなる伸びに有効だと考えられます。

そうは言っても、人間の脳は刺激を与え続けると、何歳になっても成長します。子どもが6歳を過ぎてしまったからと言って諦める必要はありません。


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子どもの好奇心の育て方のポイント

では、好奇心はどのようにして育てることができるのでしょうか。家庭でもできる好奇心を育てる方法を紹介します。

インプットする情報量を増やす

本や図鑑を使い、世の中にはさまざまなモノや事象があるということを、子どもにインプットさせておくことが大切です。同時に、本や図鑑のように目で見て理解するだけでなく、実物にできるだけ触れさせることも重要です。子どもが本物を見たときに「本で見たやつだ!」と気付くことは、子どものさらなる好奇心をかき立てます。

イラストや写真は2次元のものですが、この世にあるモノは3次元のものです。実際にはどのくらいの大きさなのか、重さなのか、どんな感触やにおいがあるのか、そういったことは実物と関わることで理解でき、その中から興味を持つ対象が出てきます。

本や図鑑だと、どうしても「覚えさせる」ことに親の意識が向きがちということも気を付けておくべきです。

また、興味を持てば自然と「覚えている」ことは、よく見られることです。すべてのモノを実物で体験することは不可能なので、そういう場合には、動画等をうまく利用することもひとつの方法です。たとえば生き物の育ちの変化過程などは、本や図鑑よりは動画の方がわかりやすく、子どもの興味をよりかき立てることがあります。


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※写真はイメージ(gettyimages/Hakase_)

子どもの「なんで?」と向き合う

子どもが「なんで?」と聞いてきたその意味がとても大事です。全く興味を持たなければ、そもそも「なんで」とは言いません。「不思議に思った」ということ自体が好奇心が育つ一歩です。したがって、大人は「そこにあなたは興味を持ったのね」と受け止め、「なんで?」と思ったことを肯定的に捉えることが必要です。

すぐに答えを教えるのではなく、「なんでだと思う?」と、子どもに考えてみるように促す声かけが大切です。でも、「なんでだと思う?」と問い返しても「わからない」という答えが返ってくることもあります。そのときにどう大人が答えるかも重要です。

わざと「ママ(パパ)にも難しいなあ」と答え、「大人だってなんでも知っているとは限らない」ということを伝えたうえで「じゃあ、いっしょに調べてみようか」ということから「調べること」に繋げていく、という流れが好ましいです。

ぜひ図鑑や本、インターネットなどを使って、答えを調べる「方法」を教えてあげましょう。それによってだんだんと、疑問を持ったことを自分で調べることができるようになるので、より好奇心が育まれていきますよ。

親も学びを楽しんでいる様子を見せる

親が楽しそうに本を読んでいたり、なにか勉強をしている姿を見せることは、子どもの好奇心をかき立てます。何歳になっても、知らなかったことを知ることは楽しいことだと親が背中を見せることで、子どもも学びをより楽しめるようになるでしょう。


子どもの好奇心にまつわる体験談

子どもの好奇心について、先輩ママが感じたことを教えてもらいました。


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※写真はイメージ(gettyimages/guruXOOX)
5歳児のママ
5歳児のママ

0歳の赤ちゃんが、次第にいろいろなものに好奇心を持って、手を伸ばしてみたり、口に入れてみようとするときの、キラキラした目が心に残っています。

大宮先生
大宮先生

赤ちゃんは、くち(触覚)も使って(なめて感触を確かめる)、世界を知ろうとしている、ということですね。

10歳・6歳・4歳児のママ
10歳・6歳・4歳児のママ

子どもが3人いますが、好奇心の示し方が3人とも全然違いました。次男は高いところに登ってみたり、触ってほしくないものも触ろうとしたりするので、当時は「余計なことばっかりするなぁ」と、つい思ってしまうこともありました。

でも、今になって思うと、好奇心の現れだったと思うので、もう少し余裕をもって対応してあげられたらよかったなと思います。


大宮先生
大宮先生

安全面の配慮は大事なことなので、高いところに上ることとケガをしないようにすること、そのバランスが大事です。上ってもけがをしないようなものを別に用意しておいて、興味を別のものにそらす、という方法も考えるとよいです。

9歳児のママ
9歳児のママ

子どもの好奇心は、大きくなるにつれて薄れていくのを感じました。小学3年生になった今、もっといろんなことに興味をもってほしいなと思いつつ、私たち親の声のかけかたひとつで興味を持ってくれるときもあるので、親としてもっと工夫していきたいです。

大宮先生
大宮先生

子どもの年齢が上がってくると、子ども自身の好き嫌いも出てきますので、その子どもによって、興味の対象はさまざまです。いろいろなものに興味を示さなくても、特定のものに深い興味を示す子どももいます。興味のある特定のものの周辺から少し興味を広げさせるような声掛けがあるとよいと思います。

7歳児のママ
7歳児のママ

私は料理が好きで、レシピ本をたまに眺めています。そして、あえて子どもの手の届く場所に置いておくようにしていました。そうすると、ふとしたときに子どもがその本を見ていることがあり、親が楽しそうに見ているのものは、子どもの好奇心も引き出すのかなと感じたことがありました。

大宮先生
大宮先生

大好きな親が楽しそうにやっていることは、子どもを引き付ける大きな力になります。これがネガティブな方に現われると、親が夢中になっているスマホを、1・2歳児でも触りたがり手放せなくなります。大好きな親が楽しそうにやっていることは、子どももやってみたいと思うので、どのような親の姿を見せていくか、がとても大事だというよい例です。

子どもの好奇心をいっしょに楽しんで見守ろう

興味を持つことというのは、親や他人から言われたからではなく、子どもの自発性から生まれます。大人も同様ですが、人から強制されてイヤイヤやっても学びにはつながりません。

自分で興味をもったこと、知りたい・身に付けたいと思ったことが、学びのエンジンになります。自分がもっと知りたい・もっと身に付けたいという気持ちが、集中力や持久力、できるまで諦めない心やわかるまで探究をやめない心、我慢してもう少しやってみようとする姿勢などといった生きる力を育てます。

つまり好奇心は、「これからの時代を生き抜く力になる」と言えるでしょう。子どもの「なんで?」「どうして?」を大切に、好奇心を最大限に伸ばしていけるとよいですね。


監修:大宮明子

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大宮 明子

大宮 明子

十文字学園女子大学教育人文学部幼児教育学科教授 博士(人文科学) 専門は発達心理学、認知心理学 子どもの思考の発達、乳幼児期の親子の関わり等について研究している

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