産後の壮絶な体験、家族の変化、なみそ流ポジティブ育児の誕生まで

産後の壮絶な体験、家族の変化、なみそ流ポジティブ育児の誕生まで

Twitterで3人のお子さんとの楽しい日常を発信し、大人気のなみそさん。インタビュー前編では、子どもの「好き」を見つけて伸ばす子育てについて伺いました。後編では、なみそさんがポジティブな育児スタイルにたどり着くまでに経験した、闘病や家庭環境の変化についてお話いただきました。

第一子出産後の壮絶な体験

ーー前編では、子どもの「好き」を見つけて伸ばす、なみそさんの全肯定育児スタイルについて伺いました。後編では、なみそさんがこのスタイルに行きつくまでのお話などを伺っていきたいと思います。

こっちの方が本編かもしれないです(笑)。

ーー実は今回の取材は、なみそさんのこのツイートがきっかけでした。

 
 

ーーこういったお話について、可能な限りでお話いただければと思います。まず、「レアケースな出産を経験し、実際死にかけた」とありますが、ここから伺えますか?

第一子の出産の時のことですね。ちょっとここからは痛い話が苦手な人は飛ばしてほしいのですが、出産時のトラブルで、赤ちゃんが出てくる部分が通常よりも広く、尿道の方まで裂けてしまったんです。

子どもは元気に生まれたけど、私は出血と痛みでしばらく意識がない。でも初産だったので、出産ってこんなものかなと思っていました。でも、一週間経っても痛みがおさまらない。便もちゃんと出ないから、病院に行って器材で掻き出してもらわないと出ないレベルで。

ロキソニンでは到底痛みがおさまらなくて、ボルタレンって強い薬を飲んでいたので授乳もストップ。トイレに行くまでの数メートルを歩くのにも10分かかるくらいで、もう全然歩けない。

 
※写真はイメージ(iStock.com/Chinnapong)

そんな私を見た両親が「ここまでひどいもんかね?」と心配して、大きな病院を紹介してくれたので行ってみたら、そこで腸が破けていると判明しました。それは便も出ないわけだっていう。しかも敗血症まで併発していて、緊急手術をすることになったのですが、それがまた、手術後に麻酔が切れた途端うめき声をあげてしまうほどの痛みでした。

手術後しばらくのあいだはご飯を食べるんじゃなく、首の太い血管にカロリーの高い薬剤を入れて栄養を摂っていました。このやり方だと便にならないので、腸を休められるということだったのですが、1~2か月経ってもよくならない。 普通なら1cmは厚みがある部分も、ストッキングみたいに薄くなっていて、縫っても縫っても、縫った場所からビリビリ破ける感じ。

しかもこの時お医者さんに「もう夫婦生活はできない」と言われて、これが一番落ち込みました。自然妊娠は厳しくて、体外受精ならできないことはないと。悩みによるストレスと薬漬けで母乳がストップするし、もう踏んだり蹴ったりでした。

 
※写真はイメージ(iStock.com/FatCamera)

この時もまだ思うように歩けなくて、一ヶ月リハビリを頑張ってもようやく数メートル進む程度でした。この頃赤ちゃんが3キロくらいになっていたけど、抱っこしようとしても、破れた腸の回復手術の傷跡や局部が痛むから無理で。もう一つ一つの動作をするのがとにかく大変でしたね。

この一連のことは「昔なら死んでた」とお医者さんに言われるほどで、お産の辛さとしては、立て続けに40人産むのと同じくらいという話でした。

ーー……想像以上に壮絶な体験をされていたのですね。

でも結果的には二人目、三人目を産めて本当によかったです。関西の病院で手術を受けた時、「夫婦生活はもう無理」と言われたことを相談したら、ゆっくりであればまたできるようになると言ってもらえて。何度も挑戦するのは大変だろうからってことで、タイミング療法を指導してもらいました。

 
※写真はイメージ(iStock.com/Chinnapong)

最初の病院で「もう夫婦生活は無理」と言われて落ち込んだけど、その後違う病院をまわったら、本当はいろんな解決策があることがわかりました。だから、最初にお医者さんに言われたことを信じて、そのままあきらめなくて本当によかった。正解はひとつじゃないはず、と可能性を信じて行動したのが功を奏したのかなと思います。

ーー最初の出産で大変な苦労をされても、あきらめずに頑張ることができたんですね。

ちょうど先日両親に会った時、「お前が結婚した時に言ったことのなかで、忘れられんのがある」って言うので聞いてみたら、「私、信じられんくらい子ども産むよ」と言っていたらしいです(笑)。昔から、子だくさんのお母さんへの憧れがあるんですよね。子育てはお金もすごくかかるし、今はもう年齢的にもむずかしいけど、もし産めるなら7~8人でもほしい。

でも、過去にかなり辛い思いをして死にかけているからこそ、多少のことには動じなくなりました。あの時がどん底だったことを思えば、これくらいなら耐えられるし、死なない程度なら大丈夫、って。だから、入学式前日に子どもの持ち物全部に名前書いたりシール貼ったりするのもまあ、あの時に比べたらって思える(笑)。

 

ーーちなみに、一連のことはお子さんに話していますか?

話しました。お腹に7~8箇所、傷跡があるんです。帝王切開と腸の手術の跡が。子どもたちにその傷を見せて、大変なことはあったけど、みんな健康だしかわいいから、本当に産んでよかったって話をしています。

大変なことばっかり言うと、娘がいずれ「私のせいでこんなことに」と責めてしまうかもしれないので、そうならないように伝え方には気を付けますが、基本的にはなんでもオープンに話しますね。知っておいた方がいいことだと思うので。

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「お母さん、ゾンビみたいな顔しとった」

ーーポジティブな全肯定育児には、その裏に大きな苦難があったのですね。現在のなみそさんののびのびとした子育てスタイルですが、夫さんをはじめ、周りの方とはどのように目線合わせをされてきましたか?

夫はずっと仕事で家にいなかったので、育児や家事は全部私がしていて、特に誰かと目線合わせをすることはなかったかもしれないですね。夫は温厚な人で、そんなに色々口出しするタイプでもないですし。

……というか実は私、離婚してるんですよ。

ーーえっ、なんと! ちなみにいつ頃のことか伺ってもいいですか?

一年ちょっと前くらいですね。詳細は伏せますが、元夫は朝7時に出て夜23時に帰ってくるような生活だったので、毎日5分くらいしか子どもに接する時間がなくて、正真正銘のワンオペ状態でした。

それであることがきっかけで離婚をして、家も引っ越して。新しい家は県内とは言え元の家からけっこう離れているので、みんな「前の家がいい」と言うかと思ったけど、誰も腐らなかった。

 

両親が大声を出したりケンカしたりしてるところを、子どもたちに見せるのは悪影響だとわかっていたし、私も夫も大声を出すようなタイプではなかった。毎朝子どもたちと玄関に一緒に行って「行ってらっしゃい」と元夫を笑顔で見送り、会話の方も、ずっと無言……ってわけでもなく、普通に接していました。 

元夫とは20年以上一緒にいたんですよ。 誰よりもお互いを知ってたからこそ、スンナリ静かに離れることができました。

外から見れば、私の意思だけで離婚したと思われるかもしれないけど、子どもたちや両親はもちろん、弁護士さんや友人などなど、たくさんの第三者の意見を聞いた上での決断でしたね。

ーー離婚を通して、なみそさんご自身にはどんな変化がありましたか?

離婚するまでは、「良い妻/母であるために頑張らなくちゃ」みたいな気負いがあったんです。

だから、これは前編でも少し話したように、18時にはご飯、19時にはお風呂、20時には寝かさないといけないって決めてそれを守るようにしていたし、寝る前に絵本を読まなきゃって思っていたので、前は4~50冊くらい絵本を持ってました。

だけど、離婚のおかげで、「母/妻はこうあるべき」みたいな気持ちがなくなって、その分子どもに向き合えるようになりましたね

ーーなみそさんのように、自分軸での子育て代表のようなお母さんでも、これまでそういった無言の圧力と戦って来られたのですね。

新しい生活になってからKENに「お母さん、前は死んだような顔をしとった。今の方が笑っとる」って言われて、「死んだような顔しとったと?」と聞いたら、「ゾンビみたいだった」って(笑)。でもよく見てますよね。今の方が私自身、楽しく生活できているんでしょうね。

やっぱり子どもは親の変化に気付くものなので、特に一番年上のお姉ちゃんには自分の気持ちを伝えるようにしていますね。自分たちのことで揉めてると、子どもたちに勘違いさせたくないので。

ーー子どもたちに対して誠実な姿勢ですね。

ピカピカの床やシンクよりも大事なもの

それで実はこの話には続きがあって、今は他の男性とお付き合いをしています。先日は私の両親の元に挨拶もしてくれました。

ーーなんと、そうなんですね! ちなみにどんな経緯だったのでしょう?

離婚して引っ越しも済ませた矢先、子どもたちも私もコロナにかかってしまったんです。まだ周りに友だちもいないし、子どもや猫のお世話をどうすれば……と。両親は高齢だし遠方なので呼べない。

「やばい、詰んだ……」と絶望している時に力になってくれたのが、たまたま近所に住んでいた今のパートナーです。もともと趣味のラジオを通じて知り合った人なんですが、毎日食料や飲み物を届けてくれたんです。

ーーそれは、やさしさが沁みますね……。

そんなきっかけだったのですが、お付き合いするとなると気になるのが子どもたちの心境で。ひとりひとりに意思があるので、ちゃんと気持ちを尊重したい。

でもパートナーは子どもや猫ともすぐに馴染んでくれたし、子どもたちは、彼といると私がよく笑っていると喜んでくれて。それが結局は大きかったですね。

 
なみそさん、娘さん、現在のパートナーでカレーを食べた報告ツイートも。

ーーお子さんに背中を押されるかたちだったんですね。

今も子どもたちは元夫と面会しているし、「もし新しいお父さんができても、君たちのお父さんはあのお父さんだし、君たちは何も変わらん」って話したら、子どもたちも泣いたりするようなこともなく、割とあっさりしていました。

これからどうなるかはわかりませんが、信頼できる人、自分を大切にしてくれる人、そして家族を大切にして、毎日おもろいネタであふれる生活を送りたいです!

ーーでは最後に、なみそさんから、現役ママやプレママ、ママになりたい方たちに向けて、何かメッセージをお願いできますか?

とにかく、無理をしちゃダメと言いたいですね。「お母さんならこうあるべき」をやめて、私はだいぶ楽になりました。寝る前は床もシンクもピカピカにしないと、母親・妻として失格だとずっと思っていたのですが、それは全部自分で勝手に決めていることでした。子どもたちにとってはピカピカの床やシンクよりも、一緒にゲームをしたり、話をしたり、そういうことの方が大事かもしれないなって。

そうやって一緒に楽しく毎日過ごす中で、子どもの「好き」が伸びていくのかなと思います。

子どもの「好き」を伸ばす、Twitterで話題のなみそ流全肯定育児とは

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<取材・執筆>KIDSNA STYLE編集部 <写真提供>なみそ

2023.05.10

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