【小児科医監修】言葉の発達段階の目安は?遅い子の原因や発達を促す遊び方

【小児科医監修】言葉の発達段階の目安は?遅い子の原因や発達を促す遊び方

子どもはどのように言葉を喋るようになるのでしょう。言葉の発達について「うちの子は言葉が遅い……?」と心配したり「言葉が早い子は頭がいいのでは」と期待することもあるかもしれません。今回は、言葉の発達段階の目安や、言葉の発達を育むポイント、発達が遅れる要因、言葉の発達を促す遊び方などをご紹介します。

月齢、年齢別の言葉の発達段階の目安

人間社会で生きていくうえで、大切なコミュニケーションツールである“言葉”。生まれたばかりの赤ちゃんは言葉を喋れなかったはずなのに、年齢を重ねるごとに少しずつ言葉を使ったコミュニケーションをとれるようになっていきます。

言葉の発達段階にはどのような特徴があるのでしょうか。子どもが言語を獲得していくまでの段階を年齢別に解説します。


【生後2カ月頃~】クーイング

生後2か月頃から赤ちゃんは周囲の環境に適応するための準備期に入り、「あー」「うー」といった母音を発するようになります。これは「クーイング」といい、低月齢の赤ちゃんの発声のひとつで、赤ちゃんの機嫌がよいときに出る声です。

生後4か月頃から「あーあー」「うーう」と母音を繋げたクーイングを発し、徐々に「喃語(なんご)」へと移行していきます。


【生後6カ月頃~】喃語

前段階であるクーイングを経て、赤ちゃんは喃語を発するようになります。クーイングが母音を発声することが多いのに対し、喃語は「ぶー」「まんま」などの子音や濁点を含みます。

「ばばばば」と連続する喃語の繰り返しは「規準喃語」と呼ばれます。

言葉の発達段階で喃語を発するようになると、より複雑でバリエーション豊富な音を出せるようになっていくでしょう。

※写真はイメージ(iStock.com/Prostock-Studio)
※写真はイメージ(iStock.com/Prostock-Studio)

【1歳頃~】一語文

喃語では言葉の意味を持たず発声していましたが、1歳頃からは言葉に意味が宿り、単独の言葉を表す「一語文」を口にするようになります。

喃語の時点では、特定の何かを示していたわけではない「まんま」という言葉も、この頃には「母親」や「ご飯」を理解して示すようになるのです。


【1歳6カ月頃~】二語文

1歳半頃からは、単語を二つ組み合わせた「二語文」を口にし始めます。「まんま、こっち」「わんわん、おいで」などと話すようになるので、より会話らしいコミュニケーションが可能となるでしょう。


【2歳頃~】三語文

2歳を過ぎた頃から徐々に「ママ、いっしょに、あそぼう」「パパ、おしごと、いくの」など三つの単語を組み合わせた三語文を話し始めます。

「相手+目的語+要求語」や「主語+目的語+述語」などで構成され、覚えている単語の数も広がりを見せるため、言葉によるコミュニケーションがとりやすくなるでしょう。

「どうして?」「なんで?」といった疑問や好奇心を持つ時期でもあります。質問に答えてもらうことにより言葉を覚え、そのやりとりを繰り返しながら語彙を増やしていくのです。


【2歳半頃~】主観的な会話

だんだんと相手を意識した会話ができるようになってくる時期です。たとえば、自分がわかっていること、わからないことの区別ができるようになり、わからないことにはわからないと言えるようになります。

自分の経験した範囲内での会話となるため、「主観的な会話」であることも特徴のひとつです。

上・中・下などの位置関係を表す言葉や、色の名前を理解するようになります。また、「ハサミは紙を切るもの」「スプーンはご飯のときに使うもの」など物の用途がわかるようになってきます。


【3歳頃~】複文

複文とは、二つ以上の述語が組み合わさっている構成の文です。たとえば、「わたしは ママが おむかえにくることを わかっている」といった会話が可能となる時期です。


【4歳頃~】関係性の理解

それまで真似をしたり、なんとなく使っていた「〜を」「〜が」「~と」といった助詞を、4歳頃からは理解して使えるようになってきます。

この頃には「いぬ」「ねこ」といった個々の名前だけでなく、「動物」などのカテゴリーの名前を理解できるようになるでしょう。

単語と単語の関係性を理解できているため、会話の内容が大きく逸れることも減り、会話が成立しやすくなります。


【5歳頃~】場面に応じた会話内容の変更

自分の感情を俯瞰して捉えることができるようになり、認知していることを認知する「メタ認知」の段階に入ります。この時期には、話の要約、状況の説明に加え、相手やシーンに応じたコミュニケーションをとることができるようになってきます。

ほかの人の感情を汲む力が育まれ、悲しい話を聞いて感情移入するようになることもあります。

言葉の発達が早い子と「頭の良さ」の関係は?

言葉の発達が早いと「もしかしたらこの子は頭がいいかも?」と、期待が膨らむこともあるかもしれません。言葉の発達は頭の良さに関係しているのでしょうか。

言葉の発達の早い子どもと遅い子どもを比較した研究によると、2歳前後に言葉の発達が早かったとしても、必ずしも他のことを達成できる決定因子にはならないそうです。

反対に、2歳前後で言葉の発達が遅かったとしても、大半は数年以内に他の子どもの学力と変わらなくなるといいます。

言葉の発達の遅れにつながる4つの要因

言葉の発達段階はあくまで目安であり、子どもによって個人差が大きいものです。しかし、子どもの言葉がなかなか出てこないと心配になることもありますよね。言葉の発達の遅れにつながる要因を見てみましょう。

「言葉」が発声されるためには、耳から聞こえた言語を脳で理解し、その言語を言葉として発するという流れが大切です。言葉の発達が遅れる要因として以下の4つがあります。


1.言葉を聞き分ける聴力

言葉は耳で聞いて覚えるため、まずは耳が聞こえているかどうかを確認しましょう。

新生児1,000人のうち1~2人は、生まれつき耳の聞こえにくさがあるといわれているため、出産した病院等で新生児聴覚スクリーニング検査を行います。

中等度以下の難聴の場合は気づかれないケースもあるため、自治体の乳幼児健康診査は必ず受診し聴覚検査で耳の聞こえを確認することが大切です。言葉の発達も含めて、気になることがあれば医師に尋ねてみましょう。

※写真はイメージ(iStock.com/Tom Merton)
※写真はイメージ(iStock.com/Tom Merton)

2.言われたことが理解できる知力

3歳を過ぎても言葉がほとんど出ない場合、脳の機能に問題を抱えている場合もあります。

言葉の発達以外、そのほかの発達に問題が見当たらない場合は「発達性言語障がい」の可能性があります。言葉の理解は年齢相応にできているのに発語が遅れるタイプの「表出性言語障がい」と、言葉の理解も遅れる「受容性言語障がい」の二つのタイプに分かれています。

知的な発達が全体的に遅れていることにより言葉の発達も遅れている場合は「精神遅滞」の可能性があり、認知能力、身体能力、学力などの発達に影響が見られます。

また、言葉の発達の遅れとともに、強いこだわりや、目が合わないといった兆候が見られる場合は「自閉性障がい」の可能性も考えられます。心配なことがあれば、かかりつけの医師にご相談ください。


3.運動機能

舌や唇の運動機能も大切です。顎などの形態異常から来ることもありますが、舌や唇の運動がうまくいかないと発音の不明瞭さ(構音障害)を認めます。言語療法のトレーニングで改善することもあります。

舌や唇だけでなく、声を発するためには体幹の運動も大切です。体幹トレーニングでお手軽なのは、歩ける子はたくさん歩かせる、抱っこ紐ではなく単に抱っこをする、あとはブランコに乗らせるなどです。


4.子どもの「話す」という欲求

3歳くらいまでの間は、言葉の発達に遅れを感じたとしても個性の範疇です。もともと自分からはあまり喋らない内向的な性格なのかもしれません。子どもが呼びかけに応答したり、大人が話すことを理解している様子が見られれば問題はありません。

また、子どもの気持ちや言いたいことを先回りして、大人が言語化してしまうと、子どもは自ら喋る必要がなくなってしまいます。子どもの感情を先読みせず、言葉を発するのを我慢強く待つことも大切です。


言葉の発達には、これらの要素が関わっているため、子どもの言葉の発達が遅いと感じたら一度チェックしてみるとよいかもしれません。

言葉の発達が著しく遅れると、コミュニケーションをとりづらく、人格や社会性の形成が難しくなる可能性もあるため、気になる場合は早めに医療機関を受診しましょう。

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言葉の発達を育むポイント

子どもの言葉の発達を促す関わり方を紹介します。


積極的に話しかける

乳児期には「おむつを替えるよ」「眠たいんだね」など、動作を言葉にしたり、気持ちを代弁したりして積極的に話しかけましょう。

子どもにとってわかりやすく、「短い言葉」で話すことがポイントです。子どもにとって安心できる声色やトーンで、聞き取りやすいようゆっくりと話しましょう。

※写真はイメージ(iStock.com/GeorgeRudy)
※写真はイメージ(iStock.com/GeorgeRudy)

子どもの話をよく聞く

子どもは言葉のストックが少ないため、話す時に時間がかかるかもしれません。大人が先回りして話してしまうと、子どもは話す必要性がなくなってしまいます。子どもの話す機会を奪わないよう、子どもの話に耳を傾けましょう。

相づちを打ち、よく聞いていることを示すと、子どもはもっとたくさん話したいと思うかもしれません。

その際に、言い間違いを指摘することはせず、話すことの楽しみを優先させ、自然な会話の中で正しい言い方を聞かせてあげるとよいでしょう。


絵本の読み聞かせをする

幼い子どもはまだ自分で字を読むことができません。そのため、絵本の読み聞かせをすることで絵本に描かれている内容と、耳で聞く言葉の意味を紐づけていくのです。

さまざまな絵本に触れることで語彙の幅が広がり、同じ絵本を反復して読むことで言葉の意味が定着していくでしょう。


口回りの機能を高める

話す時は口を使うため、物を噛む、吸い込む、吹くなど様々な動きで口腔機能の働きを促すことも大切です。よく噛んで物を食べることは大切です。食べ物の大きさや固さ、形を工夫しましょう。その他、口の周りの機能を高めるのに笛やシャボン玉などのおもちゃを取り入れてもよいでしょう。

出典:幼児期の言葉の発達/大垣市子育て支援ポータルサイト

出典:子どもの言葉を育むためには/岩手県紫波町の子育ち・子育て応援サイト

言葉の発達を促す遊び

子どもの言葉の発達を遊びの中で育むことはできるのでしょうか。言葉の発達を促す遊び方を紹介します。


親子で触れ合う遊び

特に乳幼児期の間は、言葉によるコミュニケーションも大切ですが、それ以上に親子のスキンシップも大切です。「楽しいね」「この動きは好きかな?」と積極的に話しかけたり、子どもの動きを言語化してあげるといいかもしれません。

また、わらべうたや童謡は、歌詞に子どもの覚えやすい言葉が使われています。優しく歌いながら遊びの中に取り入れてもよいでしょう。

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ごっこ遊び

2歳頃から始まるごっこ遊びは、大人の言動を真似するなどの単純な遊びから始まります。

言葉の発達とともに本格的な遊びへと発展し、4~5歳ごろになると、友達と意思疎通しながら集団でのごっこ遊びができるようになります。

役になりきることで、普段は話さない言葉を使い、自然と言葉による表現力が豊かになる遊びです。また、友達と一緒に遊ぶためにはイメージを共有するために、相手に伝わる言葉遣いを遊びを通して学ぶ必要があります。

ごっこ遊びは、言葉の発達のみならず社会性やコミュニケーション力、想像力もつく遊びです。

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五感を使った遊び

言葉の発達には、「その名称が何を指しているか」意味を理解することも必要になります。そのために、実際に体を使って触ったり、味わったり、嗅いだりして「名称」と「意味」をつなげることが大切です。

また、五感を使ったさまざまな体験を通すことで、子どもの内にある感情が、思わず声や言葉になることもあるでしょう。聴覚、視覚、触覚、嗅覚、味覚……五感を使った遊びは子どもの感性を育みます。

たとえば粘土やスライム、砂場遊びでは触覚が刺激されます。遊びの中で育むことが難しい嗅覚や味覚は、食事やおやつの時間に子どもにたくさん話しかけて言葉の発達を促しましょう。

※写真はイメージ(iStock.com/FreshSplash)
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「言葉の発達」に関する体験談

子どもの言葉の発達について悩みを抱えている人や、言葉の発達を促すために取り入れた工夫について体験談を集めました。

息子の言葉が出るのがかなり遅くて3歳になってもあまりしゃべらないので、周囲から「大丈夫?」と心配されていました。読み聞かせをたくさんするようになったためかどうかわかりませんが、4歳になって洪水のようにしゃべり始めました。

語彙力をつけてほしかったので0歳の頃から、フラッシュカードを見せていました。私の根気が続かず、1、2カ月しか継続することができなかったので、言葉の発達に影響しているのかわかりません(笑)。

2歳頃、周りの子どもたちと比べて息子が全然喋ってくれないことが悩みでした。笑顔も少なく、もしかしたら知的障がいがあるのかもしれないと心配だったのですが、幼稚園に通い始めるとどんどん口数も増えるように。相変わらず笑顔は少ない方ですが、これも彼の個性だと思えるようになりました。

男女の兄妹がいるのですが、よく言うように、女子より男子のほうが言葉の発達がかなりゆっくりでした。ゆっくりなこと自体は可愛いなーと思っていませんでしたが、3、4歳になってペラペラしゃべるようになった頃、話始めに毎回どもることがありました。

子ども扱いしすぎるような赤ちゃん言葉をなるべく使わず、普通の口調で娘と会話するようにしてます。口達者な女の子でよくしゃべるので、発達が遅いなどは気にしたことはありません。

いろいろな動画を見ることも言葉の発達を促しているのではないかと思いますが、最近は子どもが自然にロシア語の数字や色の発音を覚えていたのでびっくりしました。

子どもの発達に応じて言葉によるコミュニケーションを楽しもう

※写真はイメージ(iStock.com/fizkes)
※写真はイメージ(iStock.com/fizkes)

子どもは「言葉を聞いて理解する力」と「言葉を実際に話す力」の両方が備わって徐々に話すことができるようになります。

乳幼児期の子どもの発達は個人差が大きいものですが、言葉の発達も同じです。周りの子どもと比べるのではなく、子ども自身の成長を見守りましょう。

子どもの気持ちと言葉が結びついていくように、言葉の発達を促す遊びを取り入れ、楽しみながらコミュニケーションをとれるとよいですね。


監修

Profile

保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)

保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)

日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。

2023.04.19

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