「東京の大学→地方で就職」は負け組なのか…北海道の地銀にUターン就職した新入社員が就活で抱いた違和感
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どこででも働け、生活できる時代に人はなぜ上京するのか。元号が令和になってから上京した人にその理由を尋ねるシリーズ「令和の上京」。第4回は、東京就職を夢見て北海道から立教大学に進学するも、この春から北海道の地銀で働くことを決めた新濱諒陽都りひとさん(23)――。(取材・構成=ノンフィクションライター・山川徹)
東京就職をやめ、地元就職を決意
北海道に帰るまで、あと2週間くらいです。春からは札幌の銀行で働きます。東京の生活もあと少し。大学時代の4年間を過ごした東京を離れるわけですが、寂しさとかはないんですよ。東京で何かをしたければ、飛行機で1時間半かけて、遊びにくればいいわけですから。
ぼくは、大学を卒業したら東京で働くつもりで上京しました。地方に比べて東京のほうが、仕事があるだろうし、きっと自分の知らない世界に巡り合えるはずだ、と。
でも、東京で暮らしていくうちに、この街に残ることに疑問を覚えてしまって……。北海道に帰って、地元に貢献できる仕事をしたいと考えるようになったんです。
もしも、自分のやりかった仕事を続けていたのに、どうしようもない理由で……たとえば、親に何かあって地元に帰らなければならない状況だったら、気持ちの整理はつかなかったかもしれません。
でも、自分で考え、自分が生活したい街で、自分で選んだ仕事に就くわけですから、いまは期待感の方が大きいです。だから、東京とはさよならだ、みたいな感傷的な気分ではないんですよ。
立教大学観光学部に在籍する新濱さんから上京の動機や、新卒での就職先を北海道に決めた経緯を綴ったメールをもらった。彼は好きな音楽や美術の最先端に触れたくて上京したと記していた。
しかし憧れの言葉のあとに続くのは、東京への思いの揺らぎだった。
〈東京生まれ東京育ちの同期が就職活動をしている際「地方は何もないし絶対行きたくないから、東京配属が確定している企業しか受けない」と笑いながら話していて、よく地方生まれの自分の前でそれを言えるな、と驚きました。その人は海外経験があり、知識も豊富で気遣いもできて、少し東京的だなと思って憧れていた友人だったのでなおさら印象に残っています〉
〈自分の視野を広げるために東京に来たのに、そこで見たのは海外志向どころか、東京でしか満足できない人たちで、私は半ばこの街に失望して、この春、地元に帰ります〉
東京で就職を考えて上京した2002年生まれの新濱さんが“東京での失望”にいたるまでに何があったのだろうか。