スマホが孤独時間=自己対話の機会を奪い去る…「現実」「自分」から逃げ続ける人が人に優しくなれないワケ

スマホが孤独時間=自己対話の機会を奪い去る…「現実」「自分」から逃げ続ける人が人に優しくなれないワケ

いつでもどこでもスマホで他人とつながれる今、「孤独」が失われていると指摘する谷川氏。新進気鋭の哲学者が提案する、老後に向けた「ひとり時間」の使い方とは――。

ひとりになることがなぜ不安なのか

空いた時間に予定を詰め、目先のニュースやトレンドを追い、移動中にSNSを更新する――私たちはひとりになることの不安から逃れるように、他者とのつながりを求めています。

ほぼリアルタイムで世界中の情報にアクセスでき、世界中の人とつながれる環境は、「つながっていてもひとりぼっち」をもたらす、と心理学者のシェリー・タークルは言っています。逆説的に聞こえますが、寂しさを感じるのは周囲に人の気配があるからですよね。情報技術を介して、私たちは常に誰かを意識させられるけど、本質的な接触を持っていない。だから、つながっていても寂しいのです。

歴史を見ると、19世紀後半に「都市化」を経験して以降、見知らぬ他者とともに生きる都市生活がスタンダードになっていきます。農村的な共同体の、顔なじみに囲まれた小規模で閉鎖的な関係性とは違い、多様な人との多数のつながりに開かれているけれど、不安と表裏一体です。互いに素性がわからず、何を考え、何を食べているかもわからない人々が隣にいるわけですから。しかも遠隔地の人とつながる手段は手紙や電信などに限られています。

スマホは「都市化」で生まれる不安を加速しました。SNSは、互いに結びつく理由をあらかじめ持っていない人同士の薄いつながりを基調とした、開放的なネットワークです。しかし、互いに薄い興味と一瞬の接触だけで成り立つつながりだとも言える。そこで交換不可能な関係を特定の誰かと濃密に築き上げることは困難です。

人は基本的に空気を読む生き物なので、他人に同調するような行動をとる。情報の中身や質よりも、人々の注目を集めることそれ自体が価値を持つ「アテンション・エコノミー」という経済のあり方が、同調好きという人間の特性を利用しています。

企業やメディア、娯楽だけでなく、一般の人同士も何かを発信し、互いに注意(アテンション)を奪い合っています。そこで世間の波に同調できそうなものを見つけては落ち着きなく感情を動かし、会話のネタにする。飽きたら次へ行く。この飽きっぽい関心の中で、長期的で地に足がついた関係を特定の誰かと築くのは至難の業です。

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2025.04.11

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