なぜJRは「往復きっぷ廃止」を決断したのか…便利さもおトク感も上回った「オンライン予約」のインパクト
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JRの往復乗車券と連続乗車券が来年3月に廃止されることが決まった。一体なぜなのか。鉄道ライターの杉山淳一さんは「JR各社は国鉄時代から続く、複雑すぎる旅客営業規則をシンプルにしたいのだろう。その第一歩が、オトク感がなくなり使われなくなった往復きっぷだ」という――。
サービスの後退か、変化への対応か
2024年12月2日、JRグループは「往復乗車券」と「連続乗車券」の発売を2026年3月に終了すると発表した。往復乗車券の廃止と共に「往復割引」も廃止される。きっぷの廃止となると不便に思うかもしれない。割引の廃止は実質的に値上げである。諸物価が値上げムードになっている中で「JRよ、おまえもか」と思うかもしれない。
先に結論を書くと、「これらはすでに利用されなくなっている」制度で、「お客様にもっと便利で安いきっぷを提供できる」状況にある。だから利用者にとって大きな影響はない。
JRグループの報道資料にも「交通系ICカードの普及やインターネット予約サービスの利用増によって発売枚数が減少している」とある。あなたやあなたの周りでも「往復乗車券」と「連続乗車券」を利用した経験は少ないだろう。私のまわりでも「往復割引なんて初耳」という人がいた。
「帰りのきっぷ購入で混雑」は解消しつつある
「往復乗車券」は「A駅からB駅まで」のきっぷと「B駅からA駅まで」のきっぷを同時に販売する制度だ。ただし両者の経路は一致する必要がある。往復乗車券は指定席券売機でも購入できる。乗車券を選択したときに「往復」というボタンが表示されている。これを選択すると、往路と復路のきっぷが1枚ずつ発券される。
しかし、往路と復路を一緒に買う必要があるだろうか、行きはA駅できっぷを買い、帰りはB駅できっぷを買えば済む話だ。
それでも往復きっぷが重要になる場面があった。日帰りでスポーツ観戦やイベントに行く場合だ。帰りの駅のきっぷ売り場が混雑するから、あらかじめ往復きっぷを買っておけばすぐに乗車できる。
イベント後の食事や飲み会などで終電に間に合わなくても、往復乗車券は翌日に復路のきっぷを使える。往復乗車券の有効日数は、往路と復路の有効日数を加算する規則だからだ。100キロまでのきっぷの有効日数は1日だけれども、往復乗車券では2日間有効になる。
もっとも、交通系ICカードが普及したたため、駅できっぷを買うという人は減った。帰りのきっぷ売り場の混雑も改善され、この事例の往復乗車券の役割は終わった。