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子どもの「読解力」向上のためにできることは?幼児期から取るべき対策
子どもたちが経験する受験の出題傾向が親世代とは大きく異なっています。つまり、「出題の多くが表現力や思考力、判断力を問う方向にシフトしている」と言われることからも、ますます「読解力」を高めることが重要になっています。そこで、今回は幼児期のうちから「読解力」を育むために必要な情報をご紹介します。
「読解力」とは何か
“(文章を)読み解く力”と書いて「読解力」。そもそもどんな力を指すのでしょう。
「物語に出てくる人の気持ちを考える」「文章に書かれている言葉の意味を記す」「要約する」といった国語の授業やテストで問われてきたことを想像する方が多いのではないでしょうか。
PISA(ピサ)型読解力
文部科学省の定義によると、PISA型読解力は「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」となっています。
つまり「読解力」は、文章だけでなく図表やグラフなどの文字以外の資料からも情報を取り出す能力をも指しています。
【PISA型読解力】
・テキストを読み、正しく理解できる力
・テキストの意味を熟考できる力
・テキストに基づいて自分の意見を論じられる力
ゆとり教育から「脱ゆとり」への転換
日本は2000年からPISA型という国際的な学習到達度に関する調査に参加しています。
PISAは、世界79ヵ国・地域の15歳の若者を対象に3年に1度、経済協力開発機構(OECD)が実施している学習到達度調査であり、この結果を受けて2011年施行の学習指導要領から「脱ゆとり教育」への舵が取られることになったと言っても過言ではありません。
調査では「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野の調査が実施されていますが、特に「読解力」の低下が問題視されているのです。
具体的には、最新調査結果は2018年に実施され、79の国と地域が参加。日本の「読解力」は、2012年の4位、2015年の8位から15位に後退しており、平均点の低下にも歯止めがかかっていません。
なお、次回本調査については、新型コロナウイルス感染症の影響で1年延期となり、2022年の実施、2023年の結果公表が予定されています。
そして、文部科学省を中心に読解力も「生きる力」として子どもたちに育むことを目的に文部科学省は学びの見直しを行っています。
「読解力」がないとどうなるのか
ところで、なぜ「読解力」が必要なのでしょうか。「読解力」が低下するとどのような問題が生じるのでしょうか。
勉強することが嫌になる
小学生のうちは丸暗記でも、テストを切り抜けられてしまうことが多いため、書かれたテキストは覚えている知識、公式などを利用して解くことが可能です。そして、丸暗記での成功体験を持って中学校へと進学します。
学年が上がるに連れて、丸暗記での学習は難しくなっていきますが、暗記の多い教科に限っては対応可能なため、ママ・パパはもちろん、子ども本人も問題を感じないかもしれません。
しかし、「読解力」がないと言葉の意味も書かれている内容も理解できないため、本来の回答に辿りつけません。しかも今、多くの学校が取り入れている試験問題は文章題です。
わからなくなると、そのまま勉強嫌いになる子どもも少なくありません。学業の成績が全てではないとはいえ、勉強嫌いにさせてしまうのは避ける方がいいでしょう。
友人とのトラブル、関係性がこじれてしまう可能性がある
「読解力」がないと、友だちの気持ちや心の動きに気づくことができません。
つまり、相手の立場にたって発せられた言葉の意図を想像したり、配慮したりすることが苦手です。また、空気を読まず余計な一言を口に出してしまうことも多いため人間関係のトラブルに発展しがちです。
子どもの「読解力」を家庭で育む方法
では、家庭で「読解力」を育む方法はないのでしょうか。
ここでは特に自分で本を読む年齢になる幼児期を中心に、家庭で行うことで「読解力」を育む活動についてご紹介したいと思います。
たくさん「本の読み聞かせ」を行う
親子でたくさんの本を手に取って、楽しい時間を過ごしましょう。幼児期は短い文章の絵本からはじめ、「読書が楽しい」という体験を積み重ねることで、本が好きな子になることでしょう。
また、普段使わない言葉に触れる機会が増えることで、「語彙力アップ」にもつながります。
読み終わったら「あらすじ」「内容」について話をする
ママやパパと本の内容について話すことも大事です。本を読んだら「どんなお話だった?」とあらすじを聞いてみること。
また、「あなたならどうする?」と問いかけると、内容の理解や考察が深まるかもしれません。
文字が書けるようになったら親子で「読書日記」をつけてみるのもいいですね。
読書だけでなく、1日の出来事を短く書いて説明できることは「問題文を正確に素早く読み取る」能力につながることでしょう。
声に出して読む「音読」を日常化させる
小学校に入ると国語の宿題で「音読」を出す学校が多くあります。子どもがひらがなを読めるようになったら、親子で一緒に絵本を声に出して読んでみましょう。
「声に出すこと」は物事を記憶する良い方法で、文章や単語の切れ目、文字の読み方や話の流れを理解しやすくなります。また、視覚と聴覚を使って言葉をインプットすることで「語彙力」が飛躍的に向上し、語学や文学を好きになると言われています。
しかも、「音読」は、国語に限らず算数や社会などほかの単元でもその効果を発揮するとも言われています。
子どもと一緒に声を合わせて読んだり、一文ずつ交代で読んだり、登場人物のセリフ部分を子どもに読んでもらったりするなど、さまざまなパターンで挑戦して読書を楽しみましょう。
「親子の会話」をたくさん持つ
「読解力」は、日常の親子がする会話でも育むことができます。小学校にはいると文章を書くうえで、「いつ・どこで・誰が・どのように・何を」といった5W1Hや説明文の「序論・本論・結論」を学びますが、幼少期には知りません。
もし、保育園や幼稚園から帰ってきて「今日ね、こんなことしたんだよ」と言われたら、「いつ?」「どこで?」など、聞いてみてください。
また、子どもが疑問をなげかけてきたとき、できる限り時間をつくって一緒に考えたり、感じる習慣をつくりましょう。
親子の楽しい会話や体験を積み重ねるほど「読解力」が育つといわれています。手軽にできる勉強法ですので、ぜひ実践してみてはいかがでしょう。
親子で楽しむ!遊びを通して行う「読解力」向上
文章を読む際に知らない言葉が出てきた場合、前後の文脈から意味を想像することができます。でも、わからない言葉が多すぎると、文章そのものを大人でも読むことが嫌になってしまいますよね。
そこで重要なのが、言葉(単語)の知識とそれを使いこなす能力「語彙力」。つまり、どれだけ物事を言い表す言葉の種類が豊富でわかりやすく的確に説明する力と言い換えることができます。
この「語彙力」をはじめ、読解力向上に役立つ遊び感覚で学べるゲームやドリルをご紹介します。
カードゲーム
質問をしながら、カードに描かれている動物を推理していくカードゲーム『これな~んだ?動物編』。家族やお友だち同士で、または1対1でプレイして、ゲームカードに書かれた動物について、10個まで質問。
遊びながら動物の生態が学べるだけでなく、正解をいかに早くたどり着くか。逆に正解を惑わす答えを考える知能戦です。シリーズには世界の町編などもあります。
ボードゲーム
『ことばのカードゲーム もじぴったん』は、ひらがなが1文字ずつ書かれたカードと、マスが描かれたシートの2つで構成されたカードゲームです。プレーヤーは手持ちのカードの中から、既にシートに置かれたカードと繋げて言葉になるものを選んでシートに置いていきます。言葉が作れなかった場合はカードをもう1枚引かなければならず、最初に手持ちのカードがなくなったプレーヤーが勝利となります。
ひとりで楽しめる「名作おはなしドリル」
「絵本を読むのは好きだけど、ちゃんと理解できているのかしら?」。そう感じているママやパパが、文章の内容や教訓を正しく読み取れたか等が確認できるドリルです。
シールを使った問題や、イラストいっぱいの選択肢問題などでクイズ感覚で子どもが楽しく取り組める工夫でいっぱいです。
読解力向上は大人にとっても重要な力
インターネット、SNSの普及により、私たちは自らの考えを積極的に発信することができるようになりました。しかしその一方で、配慮を欠いた発信をする人も少なくありません。
さらに、他者の発言についても、前後の文脈を無視して一部分だけを切り取って、批判する人がいることも否めません。
そういったことも、「読解力」が影響しているのかもしれません。
「読解力」は、大人になっても重要な力です。
この機会に子どもと一緒に本を読むことからはじめてみませんか。