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【#私の子育て】高木綾子 〜フルート奏者と大学准教授、代役のきかない仕事をこなす3児の母
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KIDSNA編集部の連載企画『#私の子育て』。#04は3児の母とフルート奏者、大学准教授の3つの顔を持つ高木綾子氏にインタビュー。代役のきかない仕事をこなしつつ、3人の子どもを育てる彼女は、育児と仕事と家事をどのように両立しているのだろうか。
「子どもを授かったら自分の時間はなくて当たり前」
「子どもが第一なのは絶対。でも、自分が求められていることも大切にしたい」
「育休をあえて取らなかった。その選択への後悔は、今でも心に残っている」
こう語るのは、3児の母とフルート奏者、大学准教授の3つの顔を持つ高木綾子氏。
3歳からピアノ、8歳からフルートを始め、東京芸術大学付属高校、東京芸術大学を経て、同大学院修了。
国内外で多数の受賞歴を持ち、NHK交響楽団をはじめとする国内主要オーケストラとの共演のほか、海外オーケストラの日本ツアーにソリストとして同行。2004年にパリ室内管弦楽団との共演でパリ・デビューを果たす。
2009年4月には皇室の記念コンサートにおいてNHK交響楽団とフルート協奏曲を共演するなど各地でリサイタルなどに多数出演するほか、通算12枚のCDをリリース。
演奏家としての活動を続けながら、東京藝術大学准教教授、洗足学園音楽大学客員教授のほか、武蔵野音楽大学などの非常勤講師を務めている。
日本を代表するフルート奏者と、大学准教授。代役のきかない職業をこなしつつ、2歳差の子どもを3人育てている。休日にも仕事が入る環境の中で、彼女はどのように子どもたちと向き合い、育児、家事、仕事を両立させているのだろうか。その方法を紐解いていく。
子どもがいれば、自分の時間はなくて当たり前
代えのきかない仕事をこなしながら、3児の子育てを両立する高木綾子氏。事前に答えていただいた質問シートからは、その華やかな印象とは対照的な自然体で過ごすママの表情がうかがえる。
日本を代表するフルート奏者としての活躍を続けながらも、時に講師として生徒のために授業以外にも時間を割く。自身の演奏会前には自宅での練習も必須だが、子ども3人を育てていれば、その時間を確実に、予定通り確保することは困難だ。
高木綾子氏は日頃から「子どもを授かったら自分の時間はなくて当たり前」という気持ちで過ごしているという。
子育てを念頭においたキャリア選択をしてきた彼女だが、特に楽器奏者となれば代えのきかない役割に対し、母親としてプレッシャーを感じることもあるだろう。子どものために時間を割けなかった過去の日々に、後悔がないといえばウソになる。しかしその思いと同等に、自身の仕事に対する想いは深い。
子ども、家族、音楽のすべてに愛情を注ぐ高木綾子氏は、育児と仕事、家事をどのように両立し、バランスを保っているのだろうか。それぞれに対する彼女の考えと想いを聞いた。
すべては計画性
あらかじめ子育てをする将来を見越して仕事を決めてきたという高木綾子氏。実際に子どもを授かり3人の育児を経験してきた中で、いかにして子育てと仕事の両立を実現してきたのだろうか。
キャリア選択は子育てとの両立ができるかどうか
ーー楽器奏者となればオーケストラ入団を目指されるのが一般的な印象を持ちますが、大学准教授の道を選ばれた理由は?
「31歳のころ、オーケストラの入団試験を受けようと準備をしていた時に、27歳から非常勤講師を務めていた東京藝大から常勤講師募集のお話をいただきました。どちらもやりたい仕事だっただけに、非常に悩みました。
ただ、そのころには結婚もしていて『この年齢で子どもを産みたい』という希望もありました。ソリストとしての活動も含め、どちらの方が自分のペースを保てるか、子育てと両立できるかを考えた結果、大学講師受験の道を選びました。
オーケストラ奏者は代わりがきかないので、子どもの熱などでお休みをいただくことは難しい。一方、大学講師であれば時間調整はある程度きかせることができます。子育てとの両立がしやすいだろう、というのが決め手でした」
3度の出産、育休はゼロ
ーー子育てを念頭において選んだ結果、産休や育休からの仕事復帰はスムーズでしたか?
「私、育休ゼロなんです(笑)。
産後、大学講師の仕事は身体的負担のない業務から、産休明けすぐに復帰しました。奏者としての仕事は産後一カ月以内に始めました」
ーー3度とも育休ゼロで復帰できるスケジューリングとは?
「3人とも8月または9月に出産していますが、その期間はちょうど大学が夏休みで、大学院入試などが実施されるため業務が多忙ではないんです。できればその間を産休に充て、後期授業で復帰したいと考えていました。
奏者の仕事は、一人目の時は初めてで不安があったので、出産予定日の2カ月先までは予定を空けてもらえるように事務所に事前にお願いをしていました。
出産方法も、万が一帝王切開になると腹筋を傷つけてしまい、演奏に支障が出てしまうかも、という不安があったので、リスクの少ない最善の方法として3度とも計画出産を選びました。
一人目を32歳で出産し、3人目は36歳と決めていたので、二人目は間を取って34歳。運よく3人とも、希望の時期に生まれてきてくれました」
「おうちのママが、僕たちのママ」
ーー産後間もない職場復帰に不安はありませんでしたか?
「不安よりも、特に奏者の仕事は代わりがいないので、『依頼を受けたら断りたくない』という気持ちがとても強かったです。
子どもが0歳児の時期はむしろ身軽でした。演奏会に一緒に連れて行き、合間に私がお世話しつつリハーサルから本番が終わるまでの約4時間をシッターさんなどにお願いできれば、できる限り長い時間一緒に過ごすことができます。
連れていけない時もありましたが、その日1日一緒に過ごす時間が短くなってしまっても、それで私を嫌いになるわけではない、と自分を納得させていました」
ーー子どもが幼いとなおさら、一緒に過ごせないことに対する罪悪感も感じますよね。
「感じますね。平日の昼間、公園に集まっている親子連れを見るたび『こうした過ごし方を私はしてあげられなかったなぁ』と思うことは、たくさんあります。育休を取ることもできたのに、私はあえて取らなかった。その選択への後悔は、今でも心に残っています。
でも、私は自分が求められていることも大切にしたい。子どもが第一なのは絶対なのですが、求められている時間は一緒にいてあげられない、と割り切っていました。
その選択が子どもたちにとってよかったのかどうか、まだわかりませんが、私の活動を見て子どもたちは『これがママの仕事』と納得してくれています。
舞台のママは舞台のママ、先生のママは先生のママ。おうちのママは僕たちのママ、という感じですね」
子どもの体調不良は事前対処で回避
ーーどんなに計画立てていても、子どもの体調不良などは避けられないと思います。そういった時の対処法は?
「子どもが熱を出したとしても、奏者の仕事は代わりがいないので、キャンセルは絶対にありません。演奏会は休日の場合が多いので、その時は主人か、私の妹にお願いすることが多いですね。
平日の時は夫婦でスケジュール移動が可能な方が調整します。大学講師の場合、事情を説明し代講の日程を提示して休講にさせてもらえるよう調整します」
ーー子どもが体調を崩さないように、事前に気を付けているケア方法などありますか?
「基本的には何もありません(笑)。3人の子どもが小学校や保育園などそれぞれ違う場所で過ごしているとなると、病気になるのも仕方がない。
ただ、対処療法はできる限りしています。子ども2人が喘息なのですが、悪化しやすい天候などあらかじめ予測ができる時は事前に薬を飲ませたり、少しでも体調が悪そうな時は近所のかかりつけ医に早めに注射を打ってもらうようにしています」
仕事の現場に連れて行く覚悟を常にもつ
ーー元トロンボーン奏者のご主人は現在、企業の経営者とのことですが、出張や土日に両親とも仕事、という場合もあるのでは?その時の子どもたちの預け先はどのように確保されているのでしょうか。
「基本的には、休日は主人が子どもたちを見てくれることが多いです。ただ2人ともに仕事が入ってしまったとき、最初にお願いをするのは私の妹です。
妹はフリーのバイオリニストなので、お願いしたい日に彼女の予定が空いていれば、食事の準備など整えて、なるべく負担のかからない状態でお願いしています。
主人も妹も頼めない時は、ベビーシッターさんにお願いしたり、時には私の生徒が引き受けてくれることもあります。子どもたちは人見知りをしないので、今では『今日は誰が来るの?』とワクワクしています(笑)。きっとすごく甘えていると思いますが、私としては安心できて助かっています。
一人ひとりに確認した結果、誰にも頼めない時は、演奏会に連れて行きます」
ーー演奏会の楽屋に子どもがいると、演奏中も気になってしまうこともあるのでは?
「それはないですね(笑)。舞台に立つ寸前までママとして行動していても、舞台に立ってしまえば全く違う世界になるので、影響を受けることはありません。
最近では子どもたちが客席で聴いていることも多いので、ステージ上からチラリと様子をうかがうことはあります。また寝てるな、とか(笑)。でも演奏中は集中するので、子どものことも考える隙間はないですね」
海外と定年後の活動に夢を馳せる
ーー今後のキャリアにおける目標や考えているビジョンはありますか?
「いつか海外研修に行きたいと目論んでいます(笑)。
文化庁が支援している『新進芸術家の海外研修』という制度を知ってから、半年から1年くらい海外研修に行けたらいいな、と思っています。ただ家族のことを考えると、どのタイミングで行けるかな、と期待半分ではありますね(笑)。
将来的には、クラシック音楽が発展していない南アジアなどの国で、音楽を教えてみたいと考えています。時々、異文化交流の一環でフィリピンやベトナムの大学生に教える機会があるのですが、彼らはまだまだ知らないことがたくさんあることに気づかされます。同じアジア人として、私が教えられることがあるのではないかと。
東京藝大講師の定年は67歳なのですが、定年を迎えてからみなさんとても元気なんです。いろいろなことにチャレンジされている方が多くて、私もいつかそんなおばあちゃんになりたい、というのが夢ですね」
子づくりの時点から綿密に練られた計画性の高さに驚かされつつも、子育ては予定通りにはいかないものだ。想定外の出来事が起こるたび、みんなが幸せでいられる方法を見出し、無理を感じさせない対応で窮地を乗り切っている。
奏者としての高いプロ意識と、子どもに対する愛情や感謝の想い、理解と協力を惜しまない家族の姿勢がそれを可能にしているのだろう。
柔軟に変化する高木綾子の一日
大学講師を務める一日と奏者として過ごす一日、演奏会前には自身の練習も必須となる。予定によって必要な時間が変化する毎日を、高木綾子氏はどのように乗り切っているのだろうか。
臨機応変なやりくりで自分時間を確保
ーー日常的な育児タスクに加え、ご自身の時間もしっかり確保されていますね。効率的に時間を使うコツはありますか?
「その時々によって、時間設定を臨機応変に変更することですね。
スケジュール表は普段の時間割ですが、演奏会が近く自分の練習時間を多く取りたい時は、全体的にすべてのスケジュールを前倒しにすることもあります。
例えば、5時に起床し、次男を保育園に送る時間を一時間早めて時間をつくったり、大学の業務予定を調整して空き時間を捻出し練習に充てることもあります」
ーーいつもと違う時間設定だと、子どもが幼い間は思うように進まず大変ではないですか?
「私の場合、演奏会の予定はあらかじめわかっているので、先々の予定を確認し『この1週間はこういう予定で進めたい』とあらかじめ時間管理計画の目星を立てるようにしています。
ただ、演奏会の前日など自分が練習できる時間をたくさん取ろうと予定を組んだ日に限って、熱を出したりするんですよね(笑)。なので常日頃から、時間をうまくつくれるようにやりくりするよう心がけています。
おかげで『短時間にどれだけのタスクをこなせるか』という生活になりました(笑)」
ーーそれでもやはり、子どもと一緒に過ごす時間は育児タスクが優先となりますよね。
「そうですね。基本的に自分のことはすべて後回し。
練習をしなきゃいけないのに時間をつくれないことは、どうしても出てきます。そんな状況をストレスと感じないように、『子どもを授かったら自分の時間はなくて当たり前』という気持ちを常に持っています」
ママ不在時はパパがフル稼働
――ご主人とは家事の分担などされていますか?
「基本的には、私ができることは自分でやります。ただ私が不在の時は、普段すべて主人にやってもらいます(笑)。
主人は家事ができる人なので普段からお願いすればやってくれるとは思いますが、私は自分のやり方で、自分のペースで進めたい。それを主人はよくわかってくれています」
――ご主人も働きながらタスクをこなすのは大変ではないですか?
「帰宅後に料理を作るのは難しいと思うので、例えば2日間留守にする時は夕飯と、次の日の朝食は私が用意しておきます。食事の準備以外の子どもの送迎や宿題を見る、お風呂に入れる、洗濯を2回する、などのタスクは、すべてやってもらっています」
普段から時間管理の意識を高く持ち、その時々によってあらかじめ計画を立てる。自分のための調整が子どもたちの日常に影響を与えないこと、家族に負担を感じさせないことも、スケジュール調整をするときの大切な要素として考えているようだ。
育児と仕事と家事、両立のためのマイルール
休日の仕事が入りやすい環境では、気力体力ともに必要となるだろう。子どもと一緒の時間が減ってしまうことも気がかりだ。家族で過ごす時間の確保や疲れに対する対処法など、高木綾子氏のマイルールについて聞いた。
家族時間も計画性で確保する
――仕事と家族との時間、どのようにバランスをとっていますか?
「演奏会のない休日は子どもたちと過ごしますし、できれば土日のどちらかは家族のために予定を空けたいと考えています。
でも、演奏会以外でも試験前などは講師の仕事が入ってしまうこともあります。夏休みや冬休みも、子どもたちの休みと合う期間は数日間だけ。なので我が家では、時期をずらして家族旅行などの時間を取るようにしています」
ーー日頃から子どもとのコミュニケーションで意識していることはありますか?
「私の仕事が早く終わって、夕飯も早く済ませることができたら、一緒にカードゲームをしたり、本を読んだり、映画を観たりしています。
うちでは子どもたちは自分のベッドで一人で寝ていますが、夫婦のベッドに毎日一人だけ来てもいい、というルールを設けていて、毎日入れ替わりで子どもと一緒に寝ています。忙しい毎日の中で唯一、子どもたちとべったり過ごせているこの時間は、欠かすことができないですね」
料理作りは時に、ストレス発散
――ツイッターを拝見していると手の込んだお料理を作られている印象ですが、お料理は得意ですか?
「得意というよりも、料理づくりは時に、ストレス発散です(笑)。一晩中手間をかけて作ることもありますし、休日16時くらいからずっと料理を作っていることもあります。でも普段は時間がないので、パッと作れるものに限っています。
ただひとつ、私のこだわりで家庭の食事は家庭で作ったもの、外で作られたものは外食に限る、というルールを設けています。例えおかずを準備できなかったとしても、白米と具沢山みそ汁と納豆さえあればいい、と考えています」
気分転換で疲れを飛ばす
ーーお子さんから見た高木さんの印象に「元気」とありますが、休日も仕事が入ったりと疲れてしまうこともあるのでは?
「体力的な疲れは多いですが、寝れば何とかなる。それ以外にも、走ったりストレッチをしたり、テレビをぼーっと観たりしながら、気分転換をしています。それだけで、ほとんどのストレスは解消されます。
子どもたちに『ママいつも元気』と言われるのは、『ママ疲れたよ』と言いながらもバタバタと動き回っているので、疲れているように見えないのだと思います(笑)」
ーー「夜中に断捨離を始める」というのも、気分転換の一環ですか?
「そうですね。夜中に不要なものをそこら中から出してきて処分したり、日中子どもと一緒の時に思い立った時は、子どもたちに自分でいるもの、いらないものを判断させて親子で断捨離をしています」
不得手な分野は人に甘える
ーー「私の持論」には「人に甘えられる部分は甘える」とありますね。どういった部分を甘えていますか?
「私は片づけと掃除が苦手なので、週に一度、お掃除だけ外部の方にお願いしています。そのおかげで、軽く掃除機をかけるだけで家のキレイが保たれるんです。
生活をするうえで自分が不得意とする部分は無理してやならくてもいいと思っています。人にお願いできるところは人にお願いする。それでいい」
ーー片づけが苦手だと、小学校の連絡プリントの整理なども大変ではないですか?(笑)
「プリントには本当に、頭を悩ませています(笑)。
この分野に関してはママ友との協力体制が整っていて、遠足の持ち物や今日の宿題の範囲などもメッセージアプリで確認させてもらう時もあります。保育園からずっと同じ方々が多いので、お互い助け合えて本当に感謝しています」
凛とした印象の高木綾子氏だが、苦手なことを隠すことなく、人に甘えること、そんな自分を許すことをオープンに話してくれた。その素直な無邪気さが、周囲の人々の理解を得ているのだろう。
子育てのターニングポイント
仕事と子育ての両立をあらかじめ計画しブレることなく続けてきた中で、子育てに対する考えに変化はあったのだろうか。子どもたちが見せる成長に対する想いについて聞いた。
ーー子育てと仕事を両立を続けているなかで、子育てに対する考え方や価値観に変化はありましたか?
「幼いころから演奏会に連れて行ったり、妹やシッターさんに預けてきたことで、子どもたちは人見知りせず与えられた環境を楽しむように育ってくれました。
その様子を見て、『子育て=家庭』だけではない、と感じています。子どもたちは親以外の人とも関わりながら自分の身の置き方を学んだり、ママが留守の時に家族で協力する大切さを自分たちで見つけていく。こうした気づきは、とても大事なことだと思っています。
幼いころは演奏会に連れて行っても寝てばかりだった子どもたちが、最近では興味のある楽曲になると身を乗り出して聞き入るようになってきました。私が練習している曲を覚えていたり。自然とクラシック音楽が身につきつつあるように感じています。
これからも時々演奏会に連れて行き、ママの仕事を見たり演奏会の仲間の中に入ることで、音楽や楽器、演奏に興味を持ってくれたらいいなと思っています」
産後も妥協することなく持ち続けた仕事に対する熱意により、意図せずとも子どもたちは「生きていくための知識」を自然と身に着けてきたようだ。親のまっすぐな生き方は子どもたちに大きな学びを与えてきたのだろう。
子育て経験が演奏に活きる
最後に、子どもたちとの生活でもたらされた高木さんの変化について聞いた。
「フルートを演奏をするとき、楽譜に書かれている音一つひとつを表現するために感情づくりが必要になるのですが、子育てを始めてから、感情の作り方が変わってきたと感じています。表現できる感情の幅が広がった、という感じですね。
ただ、演奏の時に表現する愛情と、子どもたちを想う愛情は、少し違う。そこには、家族だからこそ持てる無条件な想いがあるのだと思います。子どもも主人も自分も、何があろうと許される、という安心感というか」
ーー子育て経験がそのまま奏者として生かされるのは、家族にとって誇りに感じられますね。お子様にもやはり、クラシック音楽の道に進んでほしい、などの想いはありますか?
「必ずそうあってほしい、とは思っていません。ただ、夫婦そろって一番得意なことが音楽なので、クラシック音楽の道に進んでくれたらずっと関わり続けることができる、とは思っています。
もしやりたいのなら自分で努力をしなければいけないことも、よく言い聞かせています。どのように努力をすればよいのかも、私はよくわかっているし、教えることができる。
今までもこれからも、家族は私を一番応援してくれる人たちであり、一番の理解者です。私も、子どもたちが成長したとき『家族が一番の理解者』と言ってもらえるように日々過ごしていきたいですね」
編集後記
フルート奏者、大学講師という仕事から「しっかり者」という印象を持ちがちだが、実際にお会いした高木綾子氏は小柄で無邪気に話す、愛らしい女性だった。一方で、圧倒されるほどのプロ意識と子どもを持ち育てることへの決意からは、いかなる時もすべてを守るという「母の強さ」を感じた。
後悔を受け止め、妥協すべきところは妥協し無理をしない。できないことを認め、人に甘えられる素直な人柄は、等身大で生きる一人の女性として魅力的に映った。
KIDSNA編集部