【#私の子育て】藤村さおり 〜2児の子育てと過密タスクをこなす現役アナウンサー

【#私の子育て】藤村さおり 〜2児の子育てと過密タスクをこなす現役アナウンサー

KIDSNA編集部の連載企画『私の子育て』。#02はフジテレビアナウンサー・藤村さおり氏にインタビュー。アナウンサーとして活躍をされながら二人の子どもを育てる彼女は、育児と仕事をどのように両立しているのだろうか。

「復帰後の仕事は、アナウンサー以外現実的ではない」

「仕事は続けたい。でも子どもを想うと葛藤も」

「朝3時起床でも、母親業は夜子どもたちが眠るまで」

こう語るのは、2児の母であり、フジテレビアナウンサーの藤村さおり氏。

1996年にフジテレビに入社以降、「めざましテレビ」「とくダネ!」「笑っていいとも!」「なまあらあし」など情報・バラエティー番組を担当し、その後「FNNスピーク」「産経テレニュース」など、報道番組に携わってきた。

2度の産休・育休を経て、現在は「報道プライムサンデー」「坂上どうぶつ王国」などでナレーションを務め、「BSフジニュース」では出産前と変わらぬ聡明さでキャスターを続けている。同時に、アナウンス室では、デスクとして室員のスケジュール管理や新人アナウンサー育成にも力を注いでいる。

プライベートでは小3の長女と年長の長男を育てる2児の母。

番組によって勤務時間が変動する仕事を続けながらも「母親は家族のすべてを引率する人」と語る藤村さおり氏は、どのように育児、仕事、家事を回しているのだろうか。彼女の持つスタンスと取り巻く環境も踏まえ、その方法を紐解いていく。

子育てとアナウンサー業、両立のための苦悩

華やかで競争率の高い印象のあるアナウンサー業をこなしながら、子育てと両立している藤村さおり氏。事前に応えていただいた質問シートからは、職業など関係なく奮闘する母親の姿が見えた。

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藤村さおり氏が考える、子育てと仕事、家事を両立するためのポイント。

アナウンサーは花形ともいえる職業である分、芸能人と同じ印象を受けがちだ。しかし実際には一会社員で、周囲の協力と自身の割り切りを上手に活用しながら、育児と仕事、家事の両立に奮闘している。

妊娠中の体調不良や産休・育休を取ることに不安を覚えたり、子どもと充分な時間を取れないことに後ろめたさを感じることもある。時短制度を活用しながらも時間が不規則になりがちなアナウンサーという仕事をこなす彼女の、仕事、育児に対する考えを聞いた。

割り切りとポジティブさが両立のコツ

アナウンサーは担当番組によって稼働時間が変わり、日々異なるスケジュールをこなしている。そんな日常の中、どのようにキャリアと子育てを両立しているのだろうか。


14年間努めたアナウンサーへの自信

ーー産後に仕事を続けるか悩んだこともあるそうですが、アナウンサー以外の選択肢は考えましたか?

#私の子育て_藤村さおり01

アナウンサー以外は現実的ではない、と感じていました。経験のない職種に復帰する自信はありませんでした。

1人目出産後の職場復帰は、3月末にニュース番組でということが決まっていました。復帰直前に3.11東日本大震災があり、この現実を伝えなければならないと、とても責任感を感じていました。ある種の重圧です。

同時に、母になって初めて働く経験のない弐足の草鞋を履くことへの不安もありました。でもそこは、出産まで14年間続けてきた、アナウンサー業への自信が支えてくれたと思います」

ーー産休や育休で長期間休むと復帰後のポジションに不安を感じそうですが、そのような想いはありましたか?

「2人目のときは特にありました。子どもが2人いると登園の準備も2人分、迎えに行く場所も2か所、体力も2倍消費します。高齢出産だったこともあり、最初の頃は続けていけるか体力的にかなり不安でした。

それに、アナウンサーという仕事は誰かに依頼されて初めて成り立つ仕事です。

2人目の育休中は、次に戻る場所があるのか、戻っても仕事を依頼してもらえるのか不安でした。

でも、一方で『心配しても仕方がないと』割り切っていた部分もあります」


産休育休は充電期間

ーー復帰後への不安があると、復帰時期を早めたり、焦る気持ちもあったと思いますが、いかがでしたか?

「私にとって産休・育休は、14年間走り続けてきて初めての長期休暇となりました。とても充電されたと同時に、自分自身に摩耗していた部分があったことにも気がつきました。

期間としては1年3カ月休みましたが、とてもリフレッシュできて、具体的なビジョンができ意欲的にもなりました

ーーテレビを観て、客観的にアナウンサーという仕事を視聴者と同じ目線で見ることによって感じたことはありますか?

「カメラの前に立つことが怖くなったり、異様に華やかに感じることがありましたね。自分とは異質の世界だと感じては、同僚や先輩の活躍を目にして“遠い世界ではない”と引き戻されていました。

育休中はフルに心を休め、仕事復帰が近づいてきてからは正確な数字や情報を伝えられるように、情報収集や勉強にいそしみました。子どもとの生活にちょっとした充実もプラスしたくて、ベビーマッサージ講師の資格も取得しました。

不安というよりも、さまざまなことに前向きで、体力的にも万全な時期でしたね」


自分の代わりがいる心強さ

ーー番組を担当していると休み難い印象がありますが、妊娠中や子どもの体調不良はどのように対処しているのでしょうか?

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「ワークシェアで助け合う考え方がここ数年、フジテレビアナウンス室には定着してきているので、乗り切れたのだと思います。

1人目も2人目も妊娠8カ月頃までつわりがひどく、また切迫流産の恐れがあり会社に行けない時期もありました。その間、自分の担当番組は他のアナウンサーが代行してくれていました。

最初は『自分はいなくても大丈夫な存在!?』と戸惑ったこともありましたが、自分の開けた穴を誰かがすぐに埋めてくれることをプラスに考えたら、とてもありがたかったですし、気が楽になりました。

それからは、助けてもらえる時は甘えて助けていただこう。逆に誰かが開けてしまった穴は、自分も埋める一員になる、と考えています。それが働くママが難を乗り切る秘訣ですね。

現在フジテレビアナウンス室には、女性アナウンサー35人が在籍、そのうち12人がママアナウンサーです。

私が入社した頃、結婚されている女性アナウンサーは片手で収まるくらいで、ママアナウンサーはたった1人だったので、状況は大きく変わりました。

人の痛みを理解し助け合う精神が共有されていることに、感謝しています」


預け先は子どもの様子を見て決める

ーー日によっては子どもを預けなければいけない事もあると思います。預け先はどのように確保していますか?

「毎日スケジュールが違うので、預け先の確保は必須ですね。

預け先の候補は、まずは主人。次に実家。学童と幼稚園の預かり保育、それでも調整がつかない時はシッターさんをお願いすることもあります。

学童を選ぶ時は1度お試しで通い、子どもが楽しそうに過ごしているか、学校の宿題を優先して進めてくれるかで判断しています。


子育てにより、やりたいことが明確に

ーー子育てと仕事の両立は忙しく大変なことも多いと思いますが、一方で仕事に対する価値観や熱量が変わったことは?

子どもを持ったことで、やりたいことが明確になりました。

2人目出産後、新人アナウンサーの研修を担当するようになり、これは子どもに何かを教えることと重なる部分があり、人を待つことやティーチング、コーチングの力は少なからず身につけられたと思っています。

心理学や教える技術を突き詰めていけば、私生活と仕事でバラけている点と点が線になると思うので、もっと勉強していきたいですね。以前から関心のあった環境問題・CSR・コーチングも、今後時間のある限り更に掘り下げていきたいと考えています」

産休や育休に入る時、少なからず、復帰後の自分のポジションについて不安を抱える女性は多いだろう。ただ彼女の場合、何事もポジティブに捉え、前に進むことを止めなかった。14年間のスキルと前向きな姿勢が、現在の立ち位置へと繋がっているのだろう。

朝3時起きの藤村さおりの一日

毎週日曜朝7時30分から放送の「報道プライムサンデー」ナレーションのため、藤村さおり氏の日曜日は朝3時起きと決まっている。その他の日も、朝起きてから夜子どもが寝付くまで時間に追われ続けることは、他の働くママと変わらない。

彼女が実践している時間管理術を聞いた。

藤村さおりの1日のスケジュール
藤村さおり氏の平日のタイムスケジュール。毎日異なる勤務時間でありながらも、朝と夕方以降の子どもに関わるタスクは日々の必須ルーティーンとしてこなしている。

自分の体力キープも大事

ーースケジュール表を見ると、朝からさまざまなタスクをこなされていますね。

「朝は1分、1秒が大切です。仕事から帰ってからの時間も過密ですが、朝が一番ヘビーですね。朝もっと早く起きられたらもう少しゆっくり準備ができると思いますが、自分の睡眠も体力キープのために欠かせません。

母親は、家族のムードメーカーであり、すべてを引率している人だと思っているので、自分が倒れると破綻してしまう感覚があるのです。

ですから、子どもの体調管理と同じくらいに、自分の体調管理も大切です」


優先順位づけが最大の肝

ーー朝の過密タスクをこなすために、工夫していることはありますか?

#私の子育て_藤村さおり03

「優先順位をつけることです。順位は日によって変わりますが、『今はこれが一番大事』『次に大切なのはこれ』というふうに一つひとつコマとして考え順位をつけていくと、迷うこともなく時間通りに収まることが多いです。

朝出かけるまでの優先順位付けは、頭の中で天秤にかけて考えるくらいのレベル。例えば、子どもの持ち物を揃えることと、お弁当作り、などですね。

逆に仕事のTODOに関しては、スマホのメモ欄に入力したり、手帳に明記して常に確認しています」


インプットの時間を朝の通勤に集約

ーー最新ニュースの情報収集など仕事上必要とされるタスクは、どのタイミングでこなしていますか?

「朝の通勤の電車内で、新聞や本を読んでいます。1時間程度ですが、その時自分に必要な情報がどれかを考えて、読む時も優先順位をつけています。これは独身時代から続いているスタイルですね。

この準備は、カメラの前に立ち正しく情報を伝えるためには必ず必要になります。情報収集やトレーニングの積み重ねが、本番へと繋がる。いつでもカメラの前に立てる、マイクと向き合える、大丈夫と思える状態の自分を保つための努力は欠かせません。

最近ではテレビ画面から離れた仕事も多く、それが続くとカメラの前に立つことが非日常になってきます。それでも突然、出演を依頼されることもある。その時のプレッシャーに打ち勝つためにも、日々努力を続けています」

朝の通勤中は仕事に関するタスクをこなし、帰りの電車内では子どものお迎えから夕飯の献立など、帰宅してからのスケジュールとタスクを確認する。少しの時間も無駄にしない習慣により、仕事モードとママモードの切り替えが自然と身についているという。

育児と仕事と家事、両立のためのマイルール

藤村さおり氏は担当番組収録のため、毎週日曜日は電車が動き出す前に出社する。ハードな日常をどのように乗り越えているのだろうか。


睡眠時間を確保して疲れを解消

ーー疲れやストレスの解消法として、一番に「寝る」とありますね。

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「通常は、約8時間の睡眠時間を確保しています。これは美容面にもマイナスではないですよね(笑)。

よっぽど疲れてしまったときは、主人のいる休日に『ママ、無理~!』の白旗を大きく振って、20分だけ寝る時間をもらうこともあります。

実家などに子どもを預けて美容院へ行くのも、ストレス解消になります。どちらにせよ、母親業は体力勝負。気配りや目配りも大事。子どものために自分の時間を削るのは覚悟の上です」


両立の鍵は体調管理と整理整頓

ーー子育てと仕事、家事を両立するために特に気にかけていることは?

「子どもの体調管理の徹底は第一で考えています。

子どもが体調を崩すと、延いては自分の仕事にも影響してしまいます。でもこれをしっかり管理できると、スケジュール通りに動ける。お互いのためにも、これからも守っていきたいと思っています。

それ以外にも、私はおっちょこちょいなので、自分のミスによって子どもが不憫な想いをしないよう特に注意を払っています」

ーー「私の持論」にも書かれていますね。具体的にいうと?

「一度、不定期のお弁当持参日に、お弁当を持たせるのを忘れてしまったことがありました。お友達からカンパしてもらって「いつもより豪華弁当だったよ!」と娘がにこやかに笑っていたのが救いでした。

それ以来、園や学校からの連絡プリントは平置きにせずいつでも目に付くように、スケルトンの状差しに縦に入れてダイニングに置き、往来する度に確認するようにしています」


自らのフル稼働で家事を効率化

ーー「私の持論」に書かれている「主人はポイントで上手く頼る」についても、具体的に教えてください。

「主人は家にいると頼りたくなるし、お願いすれば応えてくれますが多忙で、自分が考えたタスクは、自分でこなしたほうが進みが早いのは事実。なので基本的に主人には、ワイシャツのクリーニングは自分で出してピックアップもお願いするなど“自分のことを自分でやってもらう”だけでも助かっています。ですので子育てに関する日常的なタスクはあまりお願いしていません。もっとお願いした方が子育てをしている実感がシェアできて良いのかもしれませんが…。

ここぞ!という時に快く動いてもらうためには、普段からお願いしすぎないことと、お願いする時の自分の言い方に気を付けています。

『洗濯物、お願い!』と言うよりも『ごめん!洗濯物干すの、お願いできる?』というふうに言葉尻が違うだけで心象は異なるので、相手に気持ちよく動いてもらえるように言葉を選んでいます」

ーーとはいえ、帰宅後もタスクは多いですよね。帰宅後の家事で工夫していることはありますか?

「夕飯準備には、そんなに時間をかけていませんね。料理は手早く、レシピに縛られない。名前のないオリジナル料理も多いですよ(笑)。あと、夕飯を食べている最中にお風呂を沸かす、夕飯の片づけをしながら娘の音読を聞くなど、2つの事柄が同時進行していることが多いです。それもこれも子どもたちを早く寝かせるため、ですね」


不完全主義でよい

ーー「頼れる人は頼る!」というスタンスも、働くママには大切ですよね。

「どうしても頑張れない時は、頑張ることを諦める潔さも大切だと思っています。仕事が長引いて帰宅後の時間がない時などは、お総菜を買ってくることもあります。

すべてを自分でこなそうとすると、子どもの寝る時間が遅くなってしまう。だからピンポイントで頼れる人・物には頼ってもいい、無理はしない、と割り切って考えています。

学校のママ友・幼稚園のママ友も貴重な頼れる存在です。

体力と健康をキープするために、食事と睡眠をしっかり取れる状況を作ることが、まずは最優先ですね」

ーー頑張れないことに後ろめたさを感じることは?

「もともと私の性格が完璧主義ではないので、さほど後ろめたさは感じません。アレもコレも子どもにやってあげたい、という欲と良い加減を共存するためには、そのくらい割り切らないと自分が倒れてしまいます(笑)。

下の子の宿題をじっくり見ていたら上の子を見てあげる時間がなくなってしまったり、またその逆もしかり。上手に時間のやりくりができず非常にもどかしく感じることもありますが、できないことは、できない。でも明日ならできる。

そうやって、今、という時間を区切りながら、“今の優先順位”を常に大切に考えています」

適当ではなく「適度」に、いい加減ではなく「良い加減」に育児と家事をこなす。ニュースを的確に伝えてきたしっかり者の印象とは対照的な素顔もまた、親近感を感じられる魅力的な一面だ。

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子育てのターニングポイント

子育てをしていると、どこかのタイミングで、それまで培ってきた子どもに対する考え方が一変するママもいるだろう。藤村さおり氏もそのうちの一人のようだ。それはどのようなタイミングで、どのような気づきだったのだろうか。

ーー子育てのターニングポイントを感じたことはありますか?

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「上の子が小学3年生なのですが、まさに今がそのタイミングだと感じています。担任の先生に言われた『手を放して、目を離さない』の言葉通り、自分で気づき・考え・行動できるよう促す投げかけをすることが、今の私の役割だと感じています」

ーー具体的には、どのようにその役割を果たされていますか?

気づきになるような声かけをするようにして心がけています。

例えば、『○○のノートは入れた?』などわざと具体的には聞かず、『明日の準備は済んでいるの?』というように、ざっくりとした投げかけをすることで、子どもは自分で『明日は書道がある、道具の手入れはしたか、筆を入れ忘れていた!』と徐々に気付くようになりました。

とても心配ではありますが、もし忘れ物をしてしまったら、それを自分の反省材料にして次に活かしてほしいと考えています。

今は下の子にどうしても時間を割いてしまいがちですが、上の子はもう、自分で考え行動できる年齢に近づいてきたのだな、足し算の声がけだけでなく引き算も大切だなと感じます。

時には声を掛ける前にじっと我慢して様子を見ていると、その30秒後くらいにアクションを起こす事もあり『黙って待っていて良かった』という場面も増え、成長を感じることも。親にとっては30秒も3分に感じられ、親の忍耐力も鍛えられますね」

子どもはいつか、親の手を離れる。手取り足取りの教えから卒業し、自分の考えのもと自分の足で立ち進んでいく。それは親として寂しさを感じつつも、成長に感動しサポートに徹しようと心に決める瞬間でもあるのだろう。

子どもの前で見せる、アナウンサーの素顔

私たちから見た藤村さおり氏は、凛としたしっかり者の印象だが、子どもたちからはどのように映っているのだろうか。子どもたちへの願いについても聞いた。


子どもから見たママの印象

ーーお子さんから見た藤村さんの印象は、「おふざけママ」なのですね(笑)。

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「うちでは父親不在の時間も多く、私はムードメーカーです。家の中を照らす太陽の様な存在でいたいと考えています。ですから勉強を促す時以外は、おちゃらけていた方が子どもも楽しいと思って、とことんボケまくっています。子どもたちはお腹を抱えて笑い転げていますね。

それに忘れっぽさも手伝って、子どもからは『ママはサザエさんみたい』と言われています(笑)」

ーーママがアナウンサーだと、ニュースに興味を持つようになるのでは?

「長女は興味を持ち始めています。朝、ニュースや情報番組を一緒に見ていると、「ママ、〇〇って何?」など、難しい世界情勢についても質問されます。

私がナレーションを担当している番組が流れると声だけで反応してくれます。仕事が形に見えてわかりやすいので、子どもたちは“今日はこのためにママは仕事に行ったのだ”と理解しやすく、我慢しなければいけないことに対しても納得感を得やすいようです」


子どもに夢を持たせたい

「私は小中高校生の頃、将来の夢を特に持っていませんでした。ですので、子どもたちには夢を持ってもらいたいと思っています。

世の中にはさまざまな仕事があり、今存在していない仕事も新たに生まれてくるでしょう。選択肢は無限にある。だからこそ、希望する職業に就くために、今何をすべきなのか、逆算して一緒に考えていきたいですね。

そのためにもまず、いろいろな形で夢になり得そうな物事に触れさせていきたいと思っています。例えば観劇に行ったり美術館・博物館に連れて行ったり。先日は学校主催で落語を聞かせてくれました。帰りに落語に関する本を買いたがり夢中で読みふけり、家路につく電車の中で完読していました。『言葉と身振り手振りだけであんなに楽しめるとは思わなかった』と娘は語っていて、日本の伝統芸能・話芸の楽しさや凄さを小学生のうちに体感できたことは大変価値ある経験だったと感じています。

親だけでなく、学校や先生、友だちの勧めなどを通じてさまざまな物ごとに触れることで刺激を受け、自分がやりたいこと・興味が持てることを見つけるチャンスになってくれればと思っています」

幼い頃は親が選び取った世界に留まるが、成長とともに、子どもの世界はみるみる広がっていくことだろう。そこで知ること、出会う人、やってみたい物事を親として受け入れ、子どもの挑戦を常に見守ることができれば、子どもの可能性はどこまでも広がっていくのかもしれない。

世界が広がる子どもとの生活

最後に、子どもとの生活が始まってから変わった藤村さおり氏の生活について聞いた。

ーー子育て生活の中で、出産前と変わったことはありますか?

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「子どものことが100%最優先になったことは、子どもあってこそ、ですよね。当たり前のことですが、最優先事項が変わることは圧倒的な違いです。

それに、子どもから派生する世界に触れることで、興味の幅が自然と広がり続けています。

例えば新幹線。移動手段の一つとしか認識していませんでしたが、今では“はやぶさ”を見ると心ときめく自分がいます。東京駅に行くといろいろな新幹線が見放題で、楽しくて仕方がありません。先日も出張の時、“はやぶさ”“こまち”“かがやき”と私の4ショット写真を思わず自撮りしてしまいました。心高ぶります(笑)

昆虫の類いは正直苦手でしたが、先日も子どもがトノサマバッタを持って帰ってきて。餌になる稲系植物の葉っぱを子どもと一緒に近所の空き地からいただいてきて食べる様子を見て驚いたり、娘が学校から取って帰ってきたヤゴをトンボに返して、いかに淘汰された命が多く、トンボになれたものが尊いかを知ったり。昆虫の生態を知り、目の当たりにする機会を与えてもらい、もはやいとおしく感じ始めています。

上のお姉ちゃんとはバレエを見に行くなど、子どもによって行動範囲も随分変わったと思いますし、新しい気づきをたくさんもらっています。

子どもがいろいろなものを与えてくれたおかげで、生活が豊かになりましたね

編集後記

取材時、広報担当が働くママだったこともあり、テンポ良いやり取りに社内での情報共有力の強さを感じた。筆者たち働くママに育児や家事の工夫、主人とのコミュニケーションについて「どうしている?」と質問を投げかけるなど、いちママとして他ママの意見を求め「そうだよね」と語り合う様子には、私たちと何ら変わることのない姿があった。


KIDSNA編集部

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