こちらの記事も読まれています
【スペイン留学】幼児期から“国際力”を育むIPC校「The Lady Elizabeth School」
Profile
教育コンサルタント
教育コンサルタント
学校見学と図書館が好きなフリーランスの教育コンサルタント。元留学カウンセラー。東京大学教育学部卒。二児の母。インター歴7年、アメリカに4年単身留学していた帰国子女。子どもが自分より英語をできるようになった保護者から進路・教育相談をよく受けます。
フリーランス教育コンサルタントの萩原麻友さんが、短期・長期で小学生から入学できる世界各国の学校をセレクトする「世界の学校ガイド」。インターナショナルスクールやボーディングスクール、国際バカロレア認定校など、グローバルな環境に身を置いて子どもに学んでほしいと思う保護者に向け、特徴的なカリキュラムや費用などをご紹介します。第5回は、スペインのThe Lady Elizabeth School(ザ・レディ・エリザベス・スクール)です。
日本ではまだ珍しい「IPC」という小学生向けの国際カリキュラムを聞いたことはありますか?世界の特にインターナショナルスクールでの採用が増えている魅力的なカリキュラムです。
今回はスペインにあるインターナショナルスクールを例に、その特徴について説明します。
地中海に面したインターナショナルスクール
子どもの海外進学を考える保護者の方々の中には、日本でも人気が出ているインターナショナルスクールのカリキュラム「国際バカロレア(International Baccalaureate、以下IB)」をご存知の方も多いでしょう。
そのIBよりも後にできた新たな国際カリキュラムとして、IPC(International Primary Curriculum)を導入する学校が世界中に増えてきています。
今回は、スペインの南東部の地中海と山岳地帯に囲まれた自然が豊かな土地にある、The Lady Elizabeth School(ザ・レディ・エリザベス・スクール、以下LES)を紹介します。
LESに通うのは、生後15カ月から18歳までの1100名以上の生徒たち。そのうちの約3割はスペイン国籍、もう約3割はイギリス国籍ですが、残りの生徒の出身地はロシア、オランダ、中国を含む50カ国にも上ります。
先生の出身地はイギリスが多く、他にもスペイン、カナダ、ポルトガル、フランス、オランダ、オーストラリアなど多岐に渡ります。
LESは1987年に開校し、2018年に完成した新しい施設で全校生徒が学んでいます。中学3年生からは寮もあるので、親元を離れて通学することも可能です。
使う言語は主に英語ですが、スペイン語の授業や進路もあります。今回は、初等部課程に特化して紹介していきます。
21世紀に必要な国際マインドと資質を育む
LESの初等部は、日本では幼稚園の年長にあたるYear1からYear6(小5)までの6年間で構成されています。
国語(英語)と算数にイギリス式のカリキュラム(British National Curriculum)を採用していますが、2015年からはその他の教科に「IPC」と呼ばれる国際カリキュラムが導入されています。
世界で採用が増えているカリキュラム「IPC」
IPCはInternational Primary Curriculumの略で、直訳すると「国際的な初等教育課程」です。その名のとおり、どの国でも通用するように設計されたインターナショナルスクールの小学校向けのカリキュラムです。
近年、日本でも人気の「国際バカロレア(IB)」にも似ていますね。確かに、国際的なカリキュラムとして各国のインタナショナルスクールで採用されている点では、IBもIPCも共通しています。
IPCが公開されたのは2000年で、1960年代に生まれたIBよりも後発です。運営元のFieldwork Educationによると、2021年3月時点で世界90カ国以上の1000校以上で採用されています。日本ではまだ実績が少ないですが、10校のインターナショナルスクールで取り入れられています。
IPCの特徴は、教科横断型の単元で構成されたカリキュラムと具体的に明示された学習目標。単体で施行することも可能ですが、他のカリキュラム(たとえばイギリス式カリキュラムなど)と統合させることもできる柔軟性があります。
教科の枠にとらわれない授業内容
LESの初等部では、国語(英語)と算数以外の教科をIPCで指導しています。たとえば歴史、地理、科学、芸術、デザイン&テクノロジー、ICT、音楽、体育、社会などの教科です。
日本の一般的な学校では、毎学期同じ教科群を、教科ごとに時間を分けて指導されますが、IPCでは教科横断的な単元を軸に進みます。たとえば、小学校5年生が学ぶ”The Holiday Show”という単元。こちらは10週間かけて地理、社会とテクノロジーなどの教科にフォーカスします。
授業では、旅行代理店に勤務するエージェントになりきって観光計画を作って発表したり、各国の国旗や国歌を調べてまとめたり、歴史と名所のクイズをつくったりします。
こうした授業を通して、地理と社会の知識、そして調べたりまとめたり発表するためのテクノロジースキルが磨かれていくのです。
日本の「総合的な学習の時間」にも似ていますが、単元やねらいはIPCによってすでに定義されているので、学校や先生は準備と実践に専念できます。
IPCでは、5~7歳、7~9歳、9~11歳と生徒の年齢に応じて段階を分け、それぞれの段階に3つの目標(ねらい)を定義づけています。
3種類の目標
- 教科目標:教科に関連する知識、スキル、理解度など
- 個人学習目標:21世紀に必要とされる資質に関連する
- 国際学習目標:国内・国際・異文化などの「国際感覚」を身につけることに関連する
さらにこの中の個人学習目標では、以下のような資質を磨くことが挙げられています。
個人学習目標の8つの資質
- 探究心(enquiry)
- 回復力(resilience)
- 道徳心(morality)
- コミュニケーション(communication)
- 思慮深さ(thoughtfulness)
- 協調性(cooperation)
- 尊敬(respect)
- 適応力(adaptability)
これらの目標から、IPCが目指している21世紀に必要な国際的なマインドと資質を持った人物像が浮かび上がってきます。
さきほど例に挙げた”The Holiday Show”という単元では、地理、社会とテクノロジーに関する「教科目標」だけでなく、授業活動を通して「個人学習目標」や「国際学習目標」もそれぞれ達成できるように設計されています。
単元は他にもたくさん用意されていて、社会情勢や環境の変化によって毎年新しい単元が追加されています。LESでは、学校やその地域や時期に適した単元を選びます。
どの単元も子どもの自然な好奇心を引き出してくれそうです。
最新の学習環境
LESの特徴はカリキュラムだけではありません。地中海を一望できる敷地内には、学習に最適な最新設備が整っています。
本校舎には、エアコン完備の30の大きな教室があり、インタラクティブ・ホワイトボードが設置されているほか、音楽やICTのための特別教室や図書室もあります。
年齢ごとにゾーン分けされている屋外は、年齢ごとに適した遊具や日陰エリアがあり、生徒が好きなように遊ぶことができます。また野菜や花を育てたり、虫を探したりするガーデンエリアもあります。
運動施設としては室内温水プール、体育館、屋外コートなどがあり、毎日の体育の授業や放課後クラブで使用されています。すべての生徒は年間を通して毎週のように泳ぎ、幼い頃から水の安全、水球、シンクロナイズドスイミングなどの多彩な指導を受けています。
生徒は充実した施設で日々の授業や課外活動に励んでいます。放課後のクラブには料理、空手、科学クラブ、演劇、水耕栽培、コーディング、マインドフルネス、スペイン語など、50種類以上が豊富に用意されていることも魅力のひとつです。
生涯学び続けられる人を育てる
LESの教育の目的は、乳児から高3までの生徒を対象に、生涯学習者を育てること。
つまり、生徒がどんな進路を辿ろうとも、学ぶことに意欲的であり、学び続ける技術を身につけることです。
この記事では初等部の6年間だけに焦点をあててきましたが、幼少期が学習者の基礎をつくるのだとすれば、この時期の教育はLESにとって核となる大切なものだともいえます。
特に初等部では、中等教育の準備としてだけでなく、生徒が変化し続ける社会に対応できるようにバランスの取れた教育を目指しています。
生徒は国際感覚とともに、学習者として成長するためのグロース・マインドセットを身に着け、苦手なことにも粘り強く取り組むことが奨励されます。
また、内部進学だけでなく外部進学も想定した指導になっているところは、保護者の転勤などで生徒の出入りが多いインターナショナルスクールならではです。
LESはこんな親子におすすめ
どんな学校にも、子どもの向き不向きがあります。学校を選ぶときは、学校と家族と子どものことをそれぞれよく知る時間をたっぷり取ってベストフィットを見つけましょう。
もし私がLESをおすすめするとしたら、こんな親子です。(著者の主観です)
●スペインで生活する予定
●英語とスペイン語のバイリンガル教育に惹かれる
●いろんな国の生徒と学びたい
●IPCのカリキュラムに惹かれる
学校の詳細情報
※取材当時(2021年3月時点のものです)
名称
The Lady Elizabeth School (ザ・レディ・エリザベス・スクール、通称LES)
創立年
1987年
学年
Foundation:生後15カ月〜年中
Primary(Year1-6):年長〜小5
Secondary(Year7-11):小6〜高1
Sixth Form(Year12-13):高2〜高3
児童数
1100名
学費(年間)
[通学生(2021年度)]
Pre-Nursery (生後15カ月~3歳):€5,320
Foundation 1(年少):€7,000
Foundation 2(年中):€7,150
Year 1-2(年長〜小1):€7,700
Year 3-4(小2〜小3):€7,800
Year 5-6(小4〜小5):€7,870
Year 7(小6):€9,900
Year 8(中1):€11,130
Year 9(中2):€11,350
Year 10-11(中3〜高1):€11,740
Year 12-13(高1〜高3):€11,900
寮費(年間):€30,100
※入寮はYear 10(中3)から
所在地
スペインの南東部にある、地中海と山岳地帯に囲まれた自然が豊かなアリカンテ県の小さな街、ベニタチェルにあります。大都市のマドリッドやバルセロナからは、それぞれ460kmほど離れています。
Entrada Norte de la Cumbre del Sol, 03726, Benitachell (Alicante), Spain
https://g.page/laudeladyelizabeth?share
参考資料:
Profile
萩原麻友
学校見学と図書館が好きなフリーランスの教育コンサルタント。元留学カウンセラー。東京大学教育学部卒。二児の母。インター歴7年、アメリカに4年単身留学していた帰国子女。子どもが自分より英語をできるようになった保護者から進路・教育相談をよく受けます。