宇宙教育を通じて、子どもに学びの入り口を作る。家庭で行える宇宙教育の方法とは。

宇宙教育を通じて、子どもに学びの入り口を作る。家庭で行える宇宙教育の方法とは。

2024.05.21

Profile

平松 正顕

平松 正顕

自然科学研究機構国立天文台 天文情報センター講師/周波数資源保護 室長/産業連携室長総合研究大学院大学先端学術院講師

1980年、岡山県生まれ。博士(理学)。自然科学研究機構国立天文台 天文情報センター講師/周波数資源保護室長/産業連携室長。総合研究大学院大学先端学術院講師を併任。専門は電波天文学、科学コミュニケーション。 東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程を修了後、台湾中央研究院天文及天文物理研究所 博士研究員/ALMA地域センターアストロノマーを経て2011年3月より国立天文台に勤務し、東アジア・アルマ教育広報主任として、南米チリで運用中の国際天文台計画「アルマ望遠鏡」の広報活動を担う。2021年6月から国立天文台天文情報センター周波数資源保護室に異動し、可視光から電波の幅広い波長域にわたって良好な天文学観測環境を守るための業務を行っている。近著に『宇宙はどのような姿をしているのか』(ベレ出版)、『ウソみたいな宇宙の話を大学の先生に解説してもらいました。』(秀和システム)。

「宇宙教育」という言葉を聞いたことがありますか?宇宙教育は子どもが興味を持ちやすい宇宙を通すことで、子どもにさまざまな学問に興味を持ってもらう「学びの入り口」を作ることができます。本記事では、幼少期から行える宇宙教育について紹介します。

「宇宙教育」とは

「宇宙教育」と聞いて、どのようなことをイメージしますか? 実は、宇宙教育というのは、宇宙に関する専門教育だけではなく、世界に通用する高い能力を備えた人材を育成することでもあります。

未就学児や小学生にとっての宇宙教育は、「宇宙への興味・楽しさ」をきっかけに、宇宙を「学びの入り口」として、広く教育を行います。

たとえば、家庭科の授業で「衣服は身体を守る機能」があると教えても、子どもにとってその実感はなく、なかなか興味を示しません。しかし、「宇宙服は何のためにあるのか」を考えさせると、「身体を守るため」という衣服の必要性や効果を理解できます。

宇宙は子どもにとって興味を惹かれる存在なので、宇宙を入り口として、教育全体に対し興味を抱いてもらう。そして、宇宙以外にも興味を広げていく。それが未就学児~小学生にとっての宇宙教育の醍醐味であると言えるでしょう。


宇宙関連の仕事は小学生に人気?

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2023年の小学6年生男子を対象とした「将来就きたい職業ランキング」では、10位に「宇宙関連」がランクインしています。(株式会社クラレ調べ)

実際に小学6年生が宇宙関連の仕事をどこまで具体的に思い描いているかはわかりませんが、実は、宇宙関連の仕事と一言で言っても、その職種や仕事内容は幅広いものです。具体的には、

  • 宇宙飛行士
  • 天文学者・宇宙物理学者
  • 宇宙開発技術者(衛星や打上げロケットなどの開発、設計、製作などをする仕事)
  • 運用管制官(ロケットや宇宙ステーションでの活動を地上から補佐する仕事)
  • JAXA職員
  • 宇宙に関する法律の専門家
  • 宇宙関連企業の経営者
  • プラネタリウムや科学館の職員 など

このように、さまざまな関わり方があるのです。

保護者のなかでも、宇宙関連の仕事というと非常に狭き門である宇宙飛行士だけを想像して、子どもの夢を心から応援できない人もいるかもしれません。

しかし、最近では人工衛星やロケット、通信に関するベンチャー企業なども増えていることの影響もあり、実際には宇宙に関連する職業はさまざまあるので、「狭き門」などと思いこまずに、子どもの宇宙への興味を深めてあげましょう。

出典:2023年版 小学6年生の「将来就きたい職業」/株式会社クラレ

宇宙教育ができるお出かけスポット

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子どもが宇宙を学んだり、宇宙への興味を深められるようなお出かけスポットを紹介します。

茨城県つくば市「JAXA 筑波宇宙センター」

研究学園都市として知られるつくば市にある筑波宇宙センターは、人工衛星やロケットの開発、宇宙飛行士の養成などが行われているとても本格的な施設ですが、一部は無料で開放されています。館内には、宇宙ステーションや人工衛星の実物大模型や本物のロケットエンジン、人工衛星の試験モデルなどが並びます。

宇宙服のレプリカで、宇宙飛行士になりきれる撮影スポットも人気です。屋外にはロケットの実機もあり、子どもだけではなく、大人でも興奮してしまうかもしれません。

※多くの展示物がある「スペースドーム」は、建屋・設備の老朽化対策工事を実施するため、2024年6月5日~2025年春頃まで閉鎖予定

東京都三鷹市「国立天文台 三鷹キャンパス」

三鷹市にある国立天文台は、天文観測・研究のための施設ですが、一般公開もされています。1921年に作られた第一赤道儀室は、時期によっては太陽観測会を行い、晴れていれば太陽表面の黒点を観察することができます。

予約制の4D2Uドームシアターは天体や天体現象を4次元で味わえる施設です。天文学の最新の情報をわかりやすく、迫力満点な映像で楽しむことができます。

東京都江東区「日本科学未来館 」

お台場エリアにある日本科学未来館は、宇宙に特化した施設ではありませんが、地球や科学をテーマにした展示が盛りだくさんの施設です。直径6mの巨大な地球ディスプレイや、ドームシアターは迫力満点です。

未就学児には理解が難しい展示も多いですが、独特の雰囲気だけでも楽しめることでしょう。期間限定の展示やイベントも数多くあります。

自宅やキャンプで天体観測


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天体望遠鏡を購入し、自宅で天体観測をしてみるのもよいでしょう。初心者用の天体望遠鏡であれば、1万円前後で購入できるものもあるので、子どもの興味が続くのか心配な親は、まずは安価なものから試してみたらいいかもしれません。

また、キャンプ場などが主催している天体観測のイベントもあります。専門家の解説を聞きながら、じっくりと星空を観察することができるようです。


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絵本や図鑑も活用しよう

宇宙に関するスポットにお出かけをするのもよいですが、絵本や図鑑からも学べることもたくさんあります。宇宙に関するおすすめの絵本・図鑑を紹介します。

おばけのうちゅうりょこう/著:ジャック デュケノワ 訳:おおさわ あきら(ほるぷ出版)

かわいいおばけのパコームシリーズの作品です。ホログラムが施されたイラストが、子ども心をくすぐるはず。

本格的に宇宙を学ぶ本ではありませんが、楽しいストーリーをとおして宇宙を身近に感じることができそうです。



Hello, World! Solar System/著:Jill McDonald(Doubleday Books for Young Readers)

英語の本ですが、イラストがとてもカラフルで、小さい子が眺めているだけでも楽しい絵本です。子ども向けなので英語もシンプルでわかりやすく、惑星の名前もすぐに覚えてしまうかもしれません。

ぼくのいまいるところ/著:かこ さとし 絵:太田 大輔(童心社)

ぼくが今いるところは、うちの庭、ということから始まり、町内、日本、世界、太陽系…と視点がどんどん広がっていきます。

ぼくを起点として世界がどんどん広がっていく様子は、子どもにとってもワクワクするでしょう。

宇宙の不思議がまるごとよくわかる! 天文キャラクター図鑑/監修:渡部 潤一  イラスト:いとうみつる(日本図書センター)

とっても身近な太陽、地球、月から、いまだになぞの多いビッグバン、ダークマターまで、44の天文キャラクターが登場します。

ポップなイラストでキャラクター化した太陽や惑星は、子どもの記憶に刻まれることでしょう。


ママ・パパが宇宙教育に思うこと

宇宙教育について、先輩ママ・パパの意見を聞きました。


6歳児のママ
6歳児のママ

宇宙という壮大なテーマを学ぶことで、そこから他の分野への興味に広がることはありそうだなと感じました。

3歳児のパパ
3歳児のパパ

自分が子どもの頃のことを考えると、たしかに宇宙には興味があったなと思います。ただ大きくなるにつれて、宇宙がワクワクするイメージから「むずかしそう。一握りの人しか仕事としては関われない」というイメージに変わってしまったように思います。「楽しそう、知りたい」という気持ちが強いうちに、遊びながら学ぶことが大切なのかなと感じました

宇宙教育を通じて興味を広げよう

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子どものうちから宇宙教育を通じて、学んだ知識や体験は、探究心や想像力を育むことにもつながります。宇宙センターや科学館に行ってみたり、本や図鑑で学ぶことが、子どもにとって大きな財産となるでしょう。

「宇宙教育」をきっかけに、子どもの学びが広がっていくとよいですね。


監修:平松 正顕

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平松 正顕

平松 正顕

1980年、岡山県生まれ。博士(理学)。自然科学研究機構国立天文台 天文情報センター講師/周波数資源保護室長/産業連携室長。総合研究大学院大学先端学術院講師を併任。専門は電波天文学、科学コミュニケーション。 東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程を修了後、台湾中央研究院天文及天文物理研究所 博士研究員/ALMA地域センターアストロノマーを経て2011年3月より国立天文台に勤務し、東アジア・アルマ教育広報主任として、南米チリで運用中の国際天文台計画「アルマ望遠鏡」の広報活動を担う。2021年6月から国立天文台天文情報センター周波数資源保護室に異動し、可視光から電波の幅広い波長域にわたって良好な天文学観測環境を守るための業務を行っている。近著に『宇宙はどのような姿をしているのか』(ベレ出版)、『ウソみたいな宇宙の話を大学の先生に解説してもらいました。』(秀和システム)。

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