小中一貫校と義務教育学校の違いとは?義務教育学校ならではの特徴やメリット・デメリットを見てみよう

小中一貫校と義務教育学校の違いとは?義務教育学校ならではの特徴やメリット・デメリットを見てみよう

2024.04.27

これから小学校に入学するお子さんや、現役小中学生のお子さんを持つパパ・ママにとって、小中学校の教育制度は非常に気になるものですよね。小中一貫教育に興味を持つ方もいるでしょう。この記事では「小中一貫校」と「義務教育学校」の違いについて解説します。義務教育学校ならではのメリットや課題にも触れるので、ぜひ参考にしてください。

小中一貫校と義務教育学校とは

小学校・中学校が義務教育であることはみなさんご存じでしょう。一般的に小学校が6年間・中学校が3年間とされていますが、学習や生活を一貫して指導するために、小学校・中学校を統合し、修業期間を9年間としている学校もあります。


そのような学校は「小中一貫校」「義務教育学校」などと呼ばれていますが、「呼び方が違うだけで制度としては同じものなのでは?」と思うかもしれません。


義務教育学校は小中一貫校の1つですが、ほかの形態の小中一貫校とは区別して扱われる場合があります。次の項目で、どのような違いがあるのか詳しく見ていきましょう。

小中一貫校・義務教育学校の特徴

中学生
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一般的に「小中一貫校」と呼ばれる学校と、義務教育学校はどのように違うのでしょうか。それぞれの特徴を見ていきましょう。


小中一貫校


「小中一貫校」は、小学校・中学校の教育を一貫して行う学校のことです。「義務教育学校」も「小中一貫校」に含まれますが、区別する場合は「学校の中に2つの教員組織があり、2人の校長先生がいる学校」を「小中一貫校」とします。


また、小中一貫校は小学校の「設置者」が、同一か異なるかによってさらに区別され、同一の設置者の場合は「併設型」、異なる場合は「連携型」と呼ばれることも覚えておきましょう。


いずれも「小学校6年間」「中学校3年間」という枠組みで運用され、教員は所属する学校の免許状を保有しています。


義務教育学校


義務教育学校は、小中一貫校の中でも、1つの教員組織・1人の校長先生で成り立っている学校のことを指します。教員組織が1つのため、教員は原則として小学校と中学校両方の免許状を持っていなければなりません。


併設型・連携型の小中一貫校と大きく異なるのは、学年の枠組み。義務教育学校では小学生・中学生という呼び方を用いずに「1年生から9年生」としています。1年生から9年生までの児童・生徒が同じ学校に通うため、9年間の教育課程で学年段階の区切りを柔軟に設定しやすくなることが特徴です。


ただし、転出入する児童・生徒に配慮し、小学校の6年間に相当する期間を「前期6年」、中学校の3年間に相当する期間を「後期3年」としています。基本的には一般的な小学校・中学校と同じ学習指導要領で学びます。


出典:小中一貫した教育課程の編成・実施に関する手引/文部科学省資料

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義務教育学校ならではのメリットと課題とは?

お子さんが義務教育学校に通うことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。義務教育学校が抱える課題と併せて見ていきましょう。


メリット


【学習・生活において一貫したフォローが期待できる】


前述の通り、義務教育学校における教員組織は1つです。9年間の義務教育の間、学習面においても生活面においても一貫したフォローが期待できるはずです。


また、教員が原則として小学校・中学校の両方の免許状を持っていることもメリットです。小学校・中学校の垣根を超えて苦手な科目をおさらいしたり、興味のある分野についての理解を深めたりしやすいのではないでしょうか。


【カリキュラムが柔軟】


義務教育中のカリキュラムを柔軟に組みやすいことも、義務教育学校ならではのメリットです。一般的な小中一貫校では「小学校6年間」と「中学校3年間」を区別する「6‐3制度」ですが、義務教育学校には小学校・中学校の枠組みはありません。


前述の通り「前期6年」「後期3年」という区切りはありますが、カリキュラムを「4年・3年・2年」や「5年・4年」で分けることも可能なのです。児童・生徒の成長や学びの速度に合わせた教育ができるのではないでしょうか。


【後期3年への移行がスムーズ】


一般的な小学校から中学校へ進学する場合、生活環境や人間関係が大きく変化します。子どもにとって大きなストレスになる場合もあるのではないでしょうか。また、小学生時代の苦手科目を引きずって中学校の勉強につまずくことも。


その点、義務教育学校であれば中学1年生に該当する「7年生」になっても、環境が大きく変わることはないはずです。


課題


【児童・生徒同士の年齢差による影響が大きい】


義務教育学校では、6歳と15歳が同じ学び舎で勉強します。


低学年は高学年の行動を見て、さまざまな影響を受けるでしょう。お手本となる高学年の児童・生徒から良い影響を受けることが多い反面、悪い影響を受ける懸念もないとは言えません。


また、総合学習などの時間では低学年に合わせた授業が行われ、高学年の学習意欲が刺激されにくいといったこともあるのではないでしょうか。


【環境の変化に乏しい】


「小学校から中学校に上がるタイミングで大きな変化がない」ということは「環境が大きく変わる体験を逃す」ともいえるのではないでしょうか。


新たな人間関係を構築したり新しい環境に飛び込んだりすることは、社会人になれば誰もが経験しなければならないことです。いざ社会に出てから「環境の変化に順応できなかった……」となれば、その後の人生に大きな影響を及ぼすかもしれません。


なるべくなら子どものうちに「新しい環境に飛び込む」という経験を積むことが望ましいのではないでしょうか。習い事やサマーキャンプなど、経験を補う方法を検討してみるとよいでしょう。


【細部に目が届きにくい場合もある】


さまざまな年代の子どもたちがいる義務教育学校では、学級数・学年数・生徒数が独立した小学校・中学校に比べて多くなる場合があります。そのため、教職員の目が細部まで届きにくいことも義務教育学校が抱える課題のひとつといわれています。


9年間の一貫した教育が受けられることは大きなメリットですが、学校だけではフォローしきれない部分があるかもしれません。

小中一貫校・義務教育学校の特徴を理解して学校を選ぼう

小学校
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小中一貫校や義務教育学校には、生徒・児童のひとりひとりを一貫してフォローしてもらえたり、慣れ親しんだ環境で学習や部活動に集中しやすかったりといったメリットがあると言えそうです。


その一方で、子ども同士で与え合う影響の大きさなどの課題については、よく考えることが望ましいでしょう。


義務教育の現場が多様化している現代において、それぞれの学校が持つ特徴を理解することは、パパ・ママにとって非常に重要なことではないでしょうか。今回の記事を参考に、お子さんの進学について考えてみてくださいね。

2024.04.27

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