不確実性時代の子育ては親の知識のアップデートが不可欠【高濱正伸】

不確実性時代の子育ては親の知識のアップデートが不可欠【高濱正伸】

2022.03.17

Profile

高濱正伸

高濱正伸

花まる学習会代表

1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数

これまで以上に不確実な時代を生きる子どもたち。長年教育現場に携わり、多くの親子を見続けてきた花まる学習会代表・高濱正伸先生に、親子が直面するさまざまな課題に対し、親としてどう考え、どのように子どもと関わっていくべきか語っていただきます!今回のテーマは「知識のアップデート」についてです。

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高濱先生:まず、行き詰まったり、壁にぶち当たったりしている人の特徴は「枠組みに流されている」ということです。

人は、幼い頃は「中間テストや期末テストがあるから勉強しなければいけない」という理屈で納得しますが、高校生くらいになると「そのテストは本当に意味のあるものなのか?」という哲学的な疑問が生じるようになります。

このような問いを自分なりにたて、しっかり考える時間があれば、仕事を選ぶ際も「そもそもなんのために働くのか?」を考えることができるでしょう。

「人生を豊かで楽しいものにしたいから働こう」とか、「好きなことを軸に働いたほうが楽しそう」など、自分なりの答えを深堀りしてみてください。

一方、いつも偏差値、点数、合格といった枠組みだけに流されている人は、受験も就職も、ランキングの上位だけを見て、一部上場企業や大手企業の中から選択し、心を置き去りにしています。

人のうらやむ大学、就職という枠を信じて、自分はワクワクしていない。

枠組みのことばかり考えている流され人生だと、自分が本当に何をやりたいかが分からなくなってしまうんですよね。

だからこそ、私の考える知識のアップデートの基本は「自分の心に聞く」こと。つまり自分なりの哲学をスタートするということです。

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哲学といっても、何も難しいことはありません。

他人の決めた指標ではなく、「自分にとってこれが大事」という気持ちにしたがって、いろいろな事柄を判断します。

たとえば、20代の私は、映画、芝居、落語、女、競馬……と、とにかくいつもなにかに熱中し、迷走しながらフリーの塾講師をして生きていました。

当時の日記を見ると、5つ星をつけているのは子どもがメインの映画で、海外旅行をしても、有名な観光地の感想より、現地の子どもとのふれあいについて何ページにも渡って書かれていました。

そこで「自分はこんなに子どもが好きだったのか!」と気が付いたんです。

私の心をいちばん揺さぶり続けてくれたのは、間違いなく「音楽」と「子ども」だという結論が出て、最終的に「教育なら自分の一生をかけられる!」と思いました。

だから、自分なりに問題意識を溜めて、「幼少期に、家庭まるごと野外体験ができるような塾を作ろう」と心に決めたのです。

ところが周囲からは「塾は儲からないからやめておけ」とさんざん言われました。

私は自分の社会課題に対する意識から塾を始めようとしていましたが、金銭的な価値があるかどうかが選択基準になっている人にはそれが分からない。

自分の心に素直に向き合った結果、62才の今でも授業が最高の時間で、子どもたちがかわいくてかわいくて仕方がありません。

結局、何を大事に生きていくかということは、自分の心に聞くしかないのです。

知識のアップデートは外側に取りにいくばかりではなく、自分の内側に問いかけるということをしなければいけません。

母親の場合とくに、子育て中はどうしても子どもに意識がいくと思います。だけど子離れする時期はいつか必ずくる。

そのときに、自分の人生は「これを大事にして生きていこう」というものがなければ、ぽっかりと穴が空いてしまうし、子どもだけを見てあれこれと口出しをしてくる母親よりも、なにかに集中している母のほうが、子どもも応援したい気持ちになるものです。

これからの世の中は、つねに変化をしていかなければならず、何を選ぶか、絶えず判断が付きまといます。その際に自分の中に哲学があれば「やる」「やらない」とはっきりと決めることができます。

それが本当に自分のしたいことなのか、世の中の仕組みだからそうしたほうがいいと思っているだけなのかは、問い直したほうがいいですね。

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