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遊びを通した食育のすすめ方。具体的な遊びの例や、実践する際のポイント
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田園調布学園大学子ども未来学部准教授/保育士/公認心理師
田園調布学園大学子ども未来学部准教授/保育士/公認心理師
田園調布学園大学 子ども未来学部 子ども未来学科にて、発達心理学・子どもと家族に関する心理学・保育実践研究などを担当。保育士、公認心理師の資格を持つ。 「食」を研究テーマに「食」が栄養を摂取する以外に持つ意味、子どもが「食」の場面で何を経験し、その後の発達にどのように影響しているのかについて研究をしている。 著書・論文に、食べる・育てる心理学 (共著,川島書店,2010)、青年期女子のダイエット経験と食意識の関連.(共著,田園調布学園大学紀要,13,149-159.2019)、Differences between Japanese and Chinese university students in subjective well-being: Research on self-esteem and consciousness as to control over health.(共著, 田園調布学園大学紀要,12,81-96.2018)など他多数。
遊びを通して子どもに食育をすすめたいと考えているママやパパもいるのではないでしょうか。どんな遊びが食育になるのか迷うこともありますよね。今回は、遊びを通した食育について、遊びを活用するメリット、具体的な遊びの例、実践する際のポイント、ママたちの体験談をご紹介します。
食育とは?
「食育」とは、子どもや大人などあらゆる世代の方が食に興味を持って大切さを実感し、生涯にわたって健康的な食生活を送れるようにするための教育です。
2005年には政府によって食育基本法が制定されました。2006年に初めて食育推進基本計画が制定されて以降、食育を計画的に進めるために食育推進計画は何度も改訂を重ね、それに基づいて保育園や幼稚園、学校や自治体などでも食育が実施されています。
食育は、子どもの発達段階に合わせて行うことが大切であると考えられており、栄養価の高いものを食べるだけではなく、「美味しい」「楽しい」と思えるような体験をすることも重視されています。
例えば、七夕やクリスマス、ひな祭りなど行事で楽しめる料理を作ったり、学校や保育園、幼稚園で野菜の栽培や収穫をするといった食育活動も取り入れられています。
このような取り組みを通じて、家庭の食意識が向上したり、食について家族とのコミュニケーションが増えたりと、親子で食に興味を持ちやすくなるケースが多いようです。
食育で遊びを活用するメリット
子どもと食育に取り組む際は、無理やりやらせるのではなく楽しく「遊ぶ」要素を取り入れるとより効果的でしょう。
特に未就学児や低学年のうちは、視覚や聴覚を刺激したり、手足や全身の運動を使った遊びを取り入れてあげると、体験的に物事を学びやすいかもしれません。
楽しく食育をすすめる具体的な遊びの例
おもちゃやアプリなどを使って楽しく食育をすすめる具体的な遊びの例についてご紹介します。
食材や料理がモチーフの絵本や図鑑、カードゲーム
食材や料理がモチーフの絵本や紙芝居、図鑑、カードゲームなどは、子どもが遊びながら食について触れることができるため、保育園や幼稚園でもよく取り入れられています。
あたたかみのある絵柄が好き、リズム感のある面白い言葉が好きなど、子どもによって好みがあるのでその子にあったものを見つけられるとよいですね。
絵本や紙芝居、図鑑は生後6カ月未満からでも始められ、絵合わせカードゲームなどは1~2歳以上からがおすすめです。
食育すごろく
各自治体や農政局のホームページでは、遊びながら食を学べる教材として「食育すごろく」がデータとして提供されています。
食材の旬や地元の特産物を教えるもの、栄養素を学べるもの、規則正しい食生活を促すものなどさまざまな種類があり、プリントアウトして家族やお友達と一緒に遊ぶだけで食知識が自然と身につくでしょう。5~6歳頃から簡単にルールを理解しながら遊べるかもしれません。
お箸の練習遊び
お豆のキャラクターや小さい粘土をお箸で掴んで遊ぶ「お箸練習」おもちゃや、小皿から小皿へ小さいものをお箸で移す競争を親子でやってみるなど「お箸練習遊び」も楽しみながら箸使いを身につけることにつながります。
箸の練習は3歳~5歳頃に始めることが望ましいと言われています。スプーンやフォークを上手に使えて、お箸にも興味を持つようになったら始めてみましょう。子どもがお箸を自由に上手く使えるようになることと、食事の楽しさには関連があるようです。箸の練習をすることは、食事内容の改善、日本の文化の理解や、親子のコミュニケーションにもつながるなど、食育として幅広い意味を持つと言われています。
お箸には主に、木製とプラスチック製がありますが、木製の方が滑りにくく質量感があるので、最初は木製から使い始めて慣れてきたらプラスチック製にするとよいかもしれません。
また、お箸に慣れていないうちは指を入れるリング付きのトレーニング箸やトングを代わりに使うというママの声もありました。
おままごと
3歳頃になると、おままごとが好きで頻繁に遊ぶ子どもも多いかもしれません。
市販で売られている食材や調理道具、キッチンのおもちゃのほか、手作りで色水を作ってジュース屋さんごっこをしたり、雪を使ったアイス屋さんごっこも人気。
本物の食材や子ども用の包丁などを使って、子どもに簡単なお手伝いをしてもらうかたちで食育をしている家庭もあります。
また、野菜や果物がモチーフとなった木製の型はめパズルは、おままごととパズルを一緒に楽しむことができ長く遊べるというママの声もありました。
食育アプリ
料理の専門家が監修したものなど、無料版・有料版の食育アプリも複数あります。
材料をボウルに入れて混ぜたり、出来上がった料理にトッピングをしたり、さまざまなメニューの調理体験ができるものなど、食の魅力に触れられるさまざまな遊びが用意されています。
シャボン玉やラッパなど口を使った遊び
食べることの基盤となる唇や舌、くち全体をよく使って、唾液の分泌を促したり口周りの筋肉を鍛えることも食育につながるという説もあります。
シャボン玉やラッパ、巻き笛、風車といった昔ながらの定番の遊びは、口周りを鍛えるのにおすすめ。個人差はありますが、子どもの息が強くなってくる1〜2歳以降から楽しめるでしょう。
風車のそれぞれの羽根に番号やイラストを書き足してルーレット遊びをするなど、アレンジを加えるとより面白そうです。
また、口をすぼめると「グー」、舌を出すと「チョキ」、口を大きく開けると「パー」といった「顔じゃんけん」も、口の体操になり何も道具がなくても楽しめるでしょう。
食育を実践するときのポイント
楽しく食育を実践するためのポイントをご紹介します。
子どもの成長具合に合わせる
0〜1歳頃の時期の食育としては、まず食材に興味を持つことを目的とするとよいかもしれません。
2歳をすぎた頃には、実際に野菜を育ててみたり調理のお手伝いをして自分で作ったものを食べるなどできると良いでしょう。
食材が調理されて色々なメニューへと変化する工程は、見た目がまったく変わって小さい子には理解が難しいこともあるため、イメージしやすいようにわかりやすく説明してあげましょう。
アレルギーや衛生面への配慮
食育を行う際に、子どもが食べたことのない初めての食材は、アレルギー反応が出る場合もあるため注意します。
また、調理は衛生面に配慮して行うものという意識を子どもに理解してもらうためにも、調理前や調理中に手が汚れた場合は必ず手を洗い、机や調理道具をこまめに洗ったり消毒するなどしましょう。
時間に余裕がある時に行う
食育として、子どもに調理のお手伝いをしてもらう際は時間に余裕を持って行いましょう。
例えば、食事の時間に間に合わせるために子どもを急かしたりすると、せっかく楽しんでいたことが途中で中断されたり大人がイライラしてしまうことも。
子どもも大人も楽しんで調理できるように、平日は卵を混ぜるだけといった簡単なお手伝いを、土日の休みの日は色んな工程を手伝ってもらうというママの声もありました。
遊びを取り入れた食育の体験談
遊びを取り入れた食育の体験談についてママたちに聞いてみました。
特に食育を意識したわけではないですが、散歩の途中によく畑に寄って、野菜の成長をチェックしていました。
そのうち、農家のおじさんとも仲良くなり野菜収穫体験などを通して、野菜好きな子たちになりました。
元々好きだっただけかもしれませんが、子どもと一緒にパンやピザをこねる体験を通して、料理や食べることは基本的に好きになったような気がします。
うちの娘が通う保育園では食育活動が盛んで、あたたかい時期は保育園の畑でたくさんの野菜を育てており、子どもたちが自分で種を植えたり収穫したりしています。
おやつの時間にはその畑でとれた野菜を食べたり、面白い形の野菜を玄関先に飾ったり、
野菜の絵をコマにして種植えから収穫まで進めていくすごろくや、野菜のイラストをめくると答えが出てくる『旬は夏か冬かクイズ』もありました。
子どもに合った遊びで食育しよう
今回ご紹介したように、遊びを取り入れた食育の方法はたくさんあります。
アレルギーや衛生面を配慮する、時間に余裕がある時に行うなどの点に気をつけながら、さまざまな遊びを試してみて、その子の成長具合や性格にあった内容で食育をすすめてみましょう。
楽しく親子で遊びながら、子どもに食の大切さを知ってもらえるとよいですね。
Profile
横尾 暁子
田園調布学園大学 子ども未来学部 子ども未来学科にて、発達心理学・子どもと家族に関する心理学・保育実践研究などを担当。保育士、公認心理師の資格を持つ。
「食」を研究テーマに「食」が栄養を摂取する以外に持つ意味、子どもが「食」の場面で何を経験し、その後の発達にどのように影響しているのかについて研究をしている。
著書・論文に、食べる・育てる心理学 (共著,川島書店,2010)、青年期女子のダイエット経験と食意識の関連.(共著,田園調布学園大学紀要,13,149-159.2019)、Differences between Japanese and Chinese university students in subjective well-being: Research on self-esteem and consciousness as to control over health.(共著, 田園調布学園大学紀要,12,81-96.2018)など他多数。
我が家では、家にいるけれどお弁当を作って、ごっこ遊びをしながらレジャーシートを敷いてお弁当を食べる『遠足ごっこ』遊びや、お祭りにあるような焼きそば、枝豆、焼き鳥、わたあめ、などを持ち歩きやすいように紙コップなどに入れ、折り紙などでチケットをつくり、購入して食べるなどの『お祭りごっこ』をしたりします。