【澤口俊之】「遺伝」を超える知能UPの教育 AI時代を生き抜く子どもを育てる!脳教育メソッド
Profile
神経科学者/人間性脳科学研究所所長
神経科学者/人間性脳科学研究所所長
人間性脳科学研究所所長 武蔵野学院大学&大学院教授 1959年、東京生まれ。 京都大学理学研究科博士課程修了(理学博士;Ph.D)、日本学術振興会特別研究員、米国エール(Yale)大学医学部研究員、京都大学霊長類研究所助手などを経て、1999年に北海道大学医学研究科教授に就任。2006年人間性脳科学研究所(Humanity Neuroscience Institute, HNI)所長。2011年9月武蔵野学院大学教授、2012年4月から同大大学院教授も兼任。専門は神経科学、認知神経脳科学、社会心理学、進化生態学で前頭前野(前頭葉の最前部)の機能ならびに構造を中心に研究。
「学力の遺伝率は60%、知能の遺伝率は80%。遺伝子レベルで学力格差が広がっていく」と語るのは、脳科学者の澤口俊之さん。脳科学の先駆者であり、現在も幅広い年齢層で脳の育成を目指す研究「脳育成学(Brain Nurturology)」を実施しています。第2回目となる今回のテーマは、「遺伝子を超える知能教育」です。
「知能」は知的能力。
論理的に考える、計画を立てる、問題解決する、抽象的に考える、考えを把握する、言語機能、学習機能などさまざまな知的活動を含む総合的な能力のことです。
簡単に言うと「自分で考え、推理し、課題を解決する能力」のことなので伸ばすことができます。
知能=遺伝60%+環境40%
澤口さんが導きだした研究では、「知能の発達は遺伝的要因が60%、環境要因が40%寄与する」といいます。
つまり、後天的要因が知能の向上に相当に関与するということです。
「知能」を育むことで、自身の能力を理解し、どのようにすればいいのかの判断もできます。そのため、幼少期から文字を教えるなどの英才教育は必要ではありません。
何より、子どもが興味を持たないことをやらせてもまったく意味がありません。
では、何をすれば良いのでしょうか。
どうすればいいかというと、子どもの頃から「好奇心」を育てることです。
「好奇心」が高ければ学力が高くなることが脳科学の観点からもわかっています。
脳科学では、「心」の定量化が可能であり「好奇心」も定量化ができます。
その結果、幼少期の知能発達に寄与するのは「有酸素運動」「ピアノ」「読み聞かせ」です。
有酸素運動は走ることです。
1日15分間多く体育運動をしたグループとそうじゃないグループを分けて1年後に学力を見た場合、15分多く運動をしたグループは算数の成績が良いなどの研究結果が発表されています。
有酸素運動をすれば脳が発達し、脳が発達すると有酸素運動の能力も発達する相関関係にあります。
そして、できればぜひピアノを3歳くらいから週に一度でいいのでさせてあげてください。
有名大学に合格した生徒の43%がピアノを習っていたとする統計もあり、その年齢も3歳が最も多いことがわかっています。
また幼少期にピアノをやっていた人は高齢者になっても脳の改善に役立つことがわかっていますので、一生役立つ習い事です。
さらに、子どもは言語能力が低いと知能が伸びません。ですので、小さな頃から語りかけることが大事であり、ぜひ「読み聞かせ」をやってください。
但し、絵を見せると絵を見ているだけになってしまい、言葉に注意が向かないので注意が必要です。
「ピアノと読み聞かせ」、それだけやっておけば十分です。あとは保育園や幼稚園で、同年代のお子さんと共に社会性を学んでいきます。
これまでの「褒めて育てる」子育てが変わってきています。
褒めることよりもいいのが「好奇心を育てる」こと。だから自由に探索させる遊び。これが幼児教育の基本です。
※注 遺伝率には個人差があります。また遺伝率が高くても、親の染色体のうちどちらか一方のみがランダムで子に伝わるので、その値にはばらつきが生まれます。
社会的な成功者は「知能」が高い傾向があります。
知能が高ければ、収入、財産だけでなく結婚の成功率なども上がることがわかっています。
学力の遺伝率は60%、知能の遺伝率は80%
遺伝子レベルだけ見れば、学力・知能の格差は広がっていくことになってしまいます。
この結果を見て、「いくら子どものために豊かな環境を与えてもあまり効果がないだろう」と考えるのは間違いです。
「遺伝子が環境を切り取る」とも言われており、つまり良質な環境が遺伝子レベルの率を減らし、環境のパーセンテージを増やしていくと考えられています。