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【産婦人科医監修】妊娠中の豆乳は摂取して大丈夫?特長や目安量
妊娠中は栄養バランスを考え飲みすぎに注意しよう!
妊娠中に健康のことを考え、豆乳を取り入れている妊婦さんもいるのではないでしょうか。妊娠中は豆乳を飲んでもよいのか、豆乳の効果や妊娠中に豆乳を取り入れる際の注意点、選び方や摂取量の目安について詳しく解説します。
妊娠中に豆乳を飲んでも大丈夫?
妊娠中は赤ちゃんのために体によいものをたくさん摂りたいと思う方も多いでしょう。豆乳を栄養価が高くヘルシーな飲み物と考え、毎日飲んでいる妊婦さんもいるかもしれません。
豆乳は妊娠中に飲んでもよい飲み物です。医師から指示されていなければ、妊娠初期から末期まで飲むことができます。
豆乳はどんな飲み物?
豆乳は大豆をすりつぶし、水を加えて煮詰め、繊維を取り除いた液状の飲み物です。
豆乳の原料となる大豆は、植物性たんぱく質や鉄分、カルシウムが多く含まれているので、妊娠中の食事にバランスよく取り入れたい食材のひとつです。
豆乳に含まれる栄養素
豆乳にはさまざまな栄養素が含まれています。
- 大豆たんぱく質
- ビタミンB群
- レシチン
- 大豆イソフラボン
- 脂質(不飽和脂肪酸)
- カリウム
- マグネシウム
- 鉄
- 亜鉛
- 葉酸など
葉酸をはじめ、赤ちゃんの発育に必要なカルシウムや貧血を防ぐための鉄分、むくみ予防に効果的なカリウムも含まれています。
栄養バランスがよく、満腹感を得やすいと感じる妊婦さんもいるかもしれません。つわりの症状がつらく、食べ物がのどを通らないときには水分と栄養補給を兼ねて、豆乳を飲むのもよいでしょう。
大豆イソフラボンの効果
豆乳には、大豆イソフラボンが豊富に含まれています。大豆イソフラボンは、植物エストロゲンとも呼ばれています。女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)に似た働きをします。
一部では、大豆イソフラボンがエストロゲンに似た働きをすることから、高温期に飲むと支障があると言われ妊娠中は豆乳を控えた方がよいと言われていますが、妊娠中や授乳中の豆乳摂取による健康被害は報告されていません。
過剰に摂取しなければ豆腐や豆乳など大豆イソフラボンを含む食品が赤ちゃんやママの体に影響を与えることはありません。
豆乳の種類
豆乳には、無調整豆乳、調整豆乳、豆乳飲料の3つの種類があります。それぞれの特長と妊娠中はどの豆乳を選んだらよいのかを詳しく見ていきましょう。
無調整豆乳
大豆と水だけでできている豆乳です。大豆固形分が8%以上(大豆タンパク質換算3.8%以上)あるものを無調整豆乳と呼びます。
調製豆乳
豆乳に砂糖、塩、香料などを加え飲みやすくしたものです。大豆固形分が6%以上(大豆タンパク質換算3.0%以上)のものを調整豆乳と呼びます。
豆乳飲料
調整豆乳に果物や野菜の果汁、コーヒー、ココアなどを加えた飲料です。果汁入りは大豆固形分2%以上(大豆タンパク質換算0.9%以上)、その他は大豆固形分4%以上(大豆タンパク質換算1.8%以上)のものを豆乳飲料と呼びます。
豆乳飲料は、無調整豆乳や調整豆乳に比べ、大豆固形分が少なく、豆乳バナナや豆乳コーヒー、グレープフルーツやヨーグルト風味といったバラエティ豊かな味が楽しめるのが特長です。
妊娠中は無調整豆乳、調整豆乳、豆乳飲料、好みに応じて飲みやすいものを選ぶのがよいでしょう。
調整豆乳や豆乳飲料は、甘味料や保存料などの添加物が含まれている場合があり、無調整豆乳と比べるとカロリーが高めです。
適度な量であれば問題はありませんが、妊娠中は体重が増えやすく、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群など病気のリスクも高くなります。体重管理や栄養バランスを考え、豆乳を選ぶようにしてください。
妊娠中は豆乳と牛乳どちらを選んだらよい?
妊娠中、豆乳と牛乳どちらを選んだらよいのか迷う妊婦さんもいるかもしれません。
豆乳と牛乳の100gあたりの主な成分は、以下のとおりです。
・無調整豆乳
エネルギー 46kcal
タンパク質 3.6g
脂質 2.0g
カルシウム 15mg
鉄 1.2mg
食物繊維総量 0.2g
ビタミンA 0μg
葉酸 28μg
・牛乳
エネルギー 67kcal
タンパク質 3.3g
脂質 3.8g
カルシウム 110mg
鉄 0mg
食物繊維総量 0g
ビタミンA 38μg
葉酸 5μg
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)/文部科学省
豆乳は、牛乳よりもタンパク質や鉄分、葉酸や食物繊維を多く含んでいます。一方で、牛乳は豆乳よりもカルシウムが多いです。無調整豆乳は牛乳よりもカロリーが低いので、医師から体重増加の注意を受けているときは、牛乳を豆乳に代用してもよいでしょう。豆乳ヨーグルトもおすすめです。
ただし、妊娠中はひとつの食品ばかりを摂取せず、バランスのよい食生活を心掛けることが大切です。豆乳と牛乳は、それぞれ必要な栄養素を含んでいるため、妊婦さんの好みで選ぶとよいでしょう。
妊娠中は豆乳をどれくらい飲んだらよい?
妊娠中、1日に必要なカロリーの目安は、以下のとおりです。
・妊娠初期(16週未満)
18~29歳2000(kcal/日)30~49歳2050(kcal/日)
・妊娠中期(16~28週未満)
18~29歳2200(kcal/日)30~49歳2250(kcal/日)
・妊娠後期(28週以降)
18~29歳2400(kcal/日)30~49歳2450(kcal/日)
目安の摂取量
食事に豆乳を取り入れるときは、100gあたりのエネルギー量を意識して献立を考えるのがよいでしょう。そのまま飲むときは1日200ml程度コップ1杯分を目安としましょう。
また、豆乳飲料を飲むときは、他のおやつと合わせて1日200kcal以内を目安にしてください。
小腹が空いたときや食事を摂る時間がないとき、タンパク質を補給したいときに豆乳は手軽に栄養補給ができて便利です。つわりで食欲がないときは、つわりの軽減作用があるビタミンB6を含む豆乳バナナもおすすめです。
妊娠中はママの健康や赤ちゃんのためにも1日に必要なエネルギー量を目安にバランスよく栄養を摂ることが基本です。
出典:食事のバランスガイド/厚生労働省
出典:日本人の食事摂取基準(2015年版)妊娠・授乳期の食事摂取基準/厚生労働省
妊娠中に豆乳を飲むときの注意点
妊娠中に豆乳を飲むときの注意点を解説します。
飲みすぎない
妊娠中に豆乳を飲むときは、飲みすぎないようにしましょう。毎日豆乳を飲むことに問題はありませんが、妊娠中に特定の食べ物ばかり摂ると栄養バランスが偏るためよくないです。
栄養バランスを補うため、小腹がすいたときのおやつとして適度に豆乳を飲みましょう。
大豆イソフラボンの摂取量に注意する
内閣府食品安全委員会が発表しているデータでは、大豆イソフラボンに含まれる「大豆イソフラボンアグリコン」の1日の摂取量の上限を70~75mgとしています。
豆乳100mgあたりに含まれる大豆イソフラボンの平均含有量は24.8mg、豆腐は約20mgです。豆乳を飲むときは、他の大豆製品と組み合わせて大豆イソフラボンの量が上限を超えないように取り入れましょう。
市販の豆乳や豆乳飲料には成分を濃縮した商品もあります。購入する際は、大豆イソフラボンの含有量をチェックしましょう。
妊娠中は適度に豆乳を飲もう
豆乳は栄養価が高い飲み物です。牛乳よりも低カロリーで植物性のタンパク質が豊富に含まれています。
つわりの症状がつらいときは、バナナやココア、ノンカフェインコーヒーなどの好きな食材と組み合わせてアレンジドリンクを楽しんだり、豆乳鍋や豆乳スープなど、妊娠中の体重管理のために料理に活用するのもよいでしょう。
妊娠中に豆乳とりいれるときは、適度に飲むように心掛けましょう。栄養バランスを考えて、上手に豆乳を取り入れましょう。
監修:杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
Profile
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。
患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。