【産婦人科医監修】妊娠中の飲み物に「ジュース」はOK?目的別のジュースの選び方、飲む場合のコツ

【産婦人科医監修】妊娠中の飲み物に「ジュース」はOK?目的別のジュースの選び方、飲む場合のコツ

2023.05.18

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杉山太朗

杉山太朗

田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

妊娠中の飲み物として「ジュース」を飲んでもよいのか迷うママもいるのではないでしょうか。飲むとしたら何を選ぶのよいかなど、注意点も気になるもの。そこで今回は、妊娠中に「ジュース」を飲みたくなった時の対処法、妊娠中の水分補給が大事な理由、目的に応じたジュースの選び方、注意したいジュースの種類、飲む場合のコツ、ママたちの体験談をご紹介します。

妊娠中に「ジュース」を飲みたくなったら?

※写真はイメージ(iStock.com/Dejan_Dundjerski)
※写真はイメージ(iStock.com/Dejan_Dundjerski)

妊娠中は、ママの体の血液量が増えるなどさまざまな変化が生じるため、しっかりと水分を補給する必要があります。

水やノンカフェインのお茶、牛乳、炭酸水などは特に余分なものを含まないので、妊娠中でも安心して飲むことができますが、甘い「ジュース」は飲んでもいいのか心配になりますよね。

一般的に、アルコール以外の飲み物であれば、1日にジュースをコップ一杯程度飲むくらいであれば問題ないでしょう。ただしNGなのは、糖分など特定の成分を含む飲み物を過剰に摂取し続けることです。

100%果汁ジュースや野菜ジュースにはヘルシーなイメージがありますが、実は糖分を多く含む飲み物です。体への吸収も早いため血糖値が急上昇しやすく、摂りすぎて余った糖質は中性脂肪になりやすいため、たくさん飲むと体重増加につながるケースもあります。

また、妊娠中は血糖値が上がりやすく、甘いジュースを大量に飲むと妊娠糖尿病のリスクが高くなってしまいます。

妊娠中の水分補給が大事な理由

妊娠中に必要な1日の水分量の目安は、食事で得られる水分を除いて約2リットルです。

妊娠中は、お腹の赤ちゃんに酸素や栄養を送るため、ママの体の血液量は増えていき、その血液をサラサラに保つためにも十分な水分補給をすることが大切。

また、新陳代謝も活発になるため汗をかきやすく、のどが渇くことが多いでしょう。さらに、ホルモンの影響などで便秘になることもあるため、予防として意識的に多めの水分を補給する必要があります。

毎日、十分な水分を摂取することは大変かもしれません。つわりなどの影響で何も口にできないという時もあります。毎日の水分補給を辛く感じてしまわないよう、たまにはジュースを飲んで気分転換するなど、色々な飲み物を試しながら飽きずに進められるとよいでしょう。

妊娠中の飲み物はどうしている?おすすめのカフェインレスの飲み物など

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【目的別】妊娠中のジュースの選び方

妊娠中は体調の変化が多くあります。つわりの際におすすめなど目的別のジュースの選び方をご紹介します。


つわりや便秘の時

つわりが辛い場合におすすめなのが、後味がすっきりして口の中をさっぱりさせてくれるレモン味、グレープフルーツ味などの柑橘系ジュースや炭酸飲料です。

炭酸には、胃酸の分泌を促して消化を促進する作用があるため、つわり症状を緩和するほか、腸を刺激して便秘解消にも効く可能性があります。

ミネラルなどが含まれているスポーツドリンクも、つわりで脱水症状が不安な場合に飲みやすいでしょう。

また、カルシウムなどの栄養分が含まれている乳酸菌、ヨーグルト飲料も、つわりで思うように食事が摂れないママにおすすめです。妊娠中は便秘をしやすいので、乳酸菌が腸内環境を整えてくれることもポイントです。


むくみがひどい時

妊娠後期になると、お腹が大きくなって血液量が増えるので、むくみやすさを感じるママも多いかもしれません。

 

そのような場合は、トマトジュースやオレンジジュースなどカリウムの多い飲み物がおすすめです。カリウムを摂ることで余分なナトリウムが尿として排泄され、むくみ解消に有効でしょう。


貧血の時

妊娠中は、胎児の発育のために体内の鉄分をママと分けている状態のため、貧血になるなど鉄分が不足しやすい場合もあるでしょう。

その際にぴったりなのが、プルーンやほうれん草、小松菜などが入った鉄分を補えるジュースです。

このような商品の中には、鉄分以外にビタミンや葉酸が含まれているものも。野菜類に含まれている鉄は「非ヘム鉄」で吸収率がヘム鉄に比べて低いため、鉄分の吸収を助けてくれるビタミンCを含んでいるものがおすすめです。


リフレッシュやリラックスをしたい時

※写真はイメージ(iStock.com/bhofack2)
※写真はイメージ(iStock.com/bhofack2)

辛味が強めのジンジャーエールはスパイシーで、ジュースというよりもノンアルコールのカクテルテイスト清涼飲料に似ているというママの声もありました。

ジンジャーエールには基本的にアルコールやカフェインは含まれていませんが、お酒を飲んでいる時のような気分を味わいやすく、ライムやレモンを絞ってアレンジなどしてリフレッシュやリラックスをしたい時にぴったりかもしれません。


葉酸を摂りたい時

妊娠中、赤ちゃんの発育を考えて積極的に摂りたい栄養素といえば「葉酸」です。

厚生労働省でも、とくに妊娠初期は胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、通常の食品以外のものに含まれる葉酸を1日400μg摂取するよう推奨しています。

青汁など野菜や果物をふんだんに使ったジュースは、葉酸を多く含んでいるのでおすすめです。


出典:妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針/妊婦の食事摂取基準(日本人の食事摂取基準 2020 年版)/厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/000776926.pdf

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甘い炭酸飲料や濃縮還元など糖分の多いジュース

コーラやサイダーなどの甘い炭酸飲料や、濃縮還元など砂糖を加えた糖分の多いジュースは、飲みすぎると血糖値を上昇させ妊娠糖尿病や肥満などの原因になることがあります。

世界保健機関(WHO)でも、糖類は1日に摂取するカロリーの5%未満に抑えるべきと指針を発表しており、平均的な成人では25g(ティースプーン6杯分)程度です。

場合によっては、500mlのジュースや炭酸飲料を1本飲んだだけで、1日の必要摂取量を超えてしまう事もあるでしょう。

果物を含んでいない野菜ジュースや、お酢を使ったビネガー飲料など比較的糖分が少ない商品もあるので、購入する前は成分表示をよく確認しましょう。


出典:

WHO calls on countries to reduce sugars intake among adults and children(世界保健機関 2015年3月4日)

Sugars intake for adult and children(世界保健機関)


カフェインを含むものや栄養ドリンク

厚労省では、妊娠中1日当たりのカフェイン摂取量を200 mg(コーヒーをマグカップで2杯程度)に制限するよう求めています。

コーラやガラナ、チョコレート・ココア飲料といったジュース、栄養ドリンク、エナジードリンクにはカフェインが含まれているため、上記の量を目安に飲みすぎないよう注意しましょう。

過剰摂取するとめまいや心拍数の増加、興奮、不眠などを引き起こす場合があります。


出典:食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~/厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html#:~:text=%E5%A6%8A%E5%A9%A6%E3%81%8C%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%92%E6%91%82%E3%82%8A%E9%81%8E%E3%81%8E%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8A%E3%80%81%E5%87%BA%E7%94%9F,%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E6%B1%82%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82


酒粕で作られた甘酒

甘酒は、妊娠中に飲んで良いのか迷うママもいるかもしれませんが、種類によっては妊娠中でも飲むことができます。

米麹を使用したものと、酒粕を使用したもの、米麹と酒粕の両方を使用したものの3種類あり、米麹から作られた甘酒は、糖分が多いもののアルコールを含んでいないため妊娠中に飲んでも問題ないでしょう。

酒粕で作られた甘酒はアルコールを含みますので、飲むのは避けたほうがよいでしょう。

妊娠中にジュースを飲む場合のコツ

妊娠中にジュースを飲む場合のコツについてご紹介します。


果汁100%か手作りする

※写真はイメージ(iStock.com/nerudol)
※写真はイメージ(iStock.com/nerudol)

果実や野菜使用のジュースには、成分調整されているものや果汁100%のものがありますが、成分調整の方は足りない甘みを補うために、糖が過剰に添加されている場合があります。

妊娠中はできれば果汁100%のジュースを選ぶか、ミキサーやジューサーを使って自分で手作りしてみるのがよさそうです。

保存料、着色料、香料など添加物の心配がなく、食物繊維など市販のジュースでは摂りにくい栄養素も摂取しやすいでしょう。


水で薄めて味を調節する

ジュースの種類やママの体調によっては、味を濃く感じて飲みにくい場合もあるはず。そんな時は水を足して自分好みに味を薄めて飲むという人もいるようです。

薄めることによって一度に摂取する糖分が減るので、ダイエット中や糖質制限中の時にも丁度よいかもしれません。

しかしスポーツドリンクの場合は、薄めると水分の吸収を促進する糖分の働きが悪くなり、塩分も薄くなるため熱中症対策などの観点からは効果が弱まるでしょう。

また、自分好みに作れる希釈用のカルピス原液や、スポーツドリンクパウダーを使ったというママの声もありました。


栄養成分表示で炭水化物の量を確認する

日常的によく飲むジュースを買う前には、炭水化物などの栄養素がどれくらい含まれているか、容器の成分表示を確認しましょう。

例えば、100ml当たりの栄養成分が表示されているジュースで、炭水化物が10gと記載の場合、500ml中には50gの炭水化物が含まれています。

糖質量+食物繊維量=炭水化物となるため、食物繊維が含まれていない商品であれば、糖質 が50g含まれていると考えられます。


常温より冷たいものは避ける

妊娠中、冷たいジュースをゴクゴク飲みたくなることもあると思います。しかし冷たいものを飲むと、胃を温めようと血液が集中し、全身の血のめぐりが悪くなってだるさの原因になることもあります。

どうしても冷たいものを飲む際は一気に飲まず、できるだけ口の中で少し温めてから飲み込むようにしましょう。

また、ジュースの中には温めてもおいしく飲める種類があります。スポーツドリンクやカルピス、レモネードなど希釈用の原液やパウダーが売られているタイプのものは、お湯でわったり電子レンジで温めてホットドリンクとして味わえます。

コーラやジンジャーエールなどの炭酸飲料も、温めると炭酸が抜けてむしろおいしいというママの声もありました。


朝の寝起きにジュースを飲む

ジュースはエネルギーに変わりやすい糖分のため、朝の寝起きでぼんやりしている時に飲むと、脳や体へのエンジンがかかりやすくなりおすすめです。

朝から甘くておいしいものを口にすると、気分も上がりやすいでしょう。

妊娠中に飲む「ジュース」についてママたちの体験談

※写真はイメージ(iStock.com/Kosamtu)
※写真はイメージ(iStock.com/Kosamtu)

妊娠中に飲む「ジュース」についてママたちの体験談をご紹介します。

妊娠中は、よくスイカジュースやオレンジ、グレープフルーツジュースが飲みたくなりました。つわりの時期は特に、ジュースしか受け付けないこともありました。

元々甘いものがあまり好きではないので、ジュースはあまり飲んだ覚えはありませんが、つわり中はグレープフルーツジュースとサイダーを欲して飲んでいた時期もあったような気がします!

 
 

妊娠中、体重管理を気にしていたので、ジュースを飲んだとしてもコップ1杯とかそのくらいだと思います。

飲んだ後の効果は特にありませんが、酸味や炭酸を身体が欲している感じがしました。

妊娠中のジュースは飲みすぎに注意しよう

※写真はイメージ(iStock.com/AsiaVision)
※写真はイメージ(iStock.com/AsiaVision)

妊娠中は、こまめな水分補給が必要になりますが、ジュースを飲む場合は糖分の摂りすぎに注意しましょう。

飲み物に含まれる糖分は吸収が速く、飲む量によっては中性脂肪になりやすいほか、血糖値が急激に上昇して妊娠糖尿病のリスクが高くなってしまいます。

妊娠中、日常的によく飲むものとしてはジュースはできるだけ避け、つわりでそれしか受け付けない場合やリラックスしたい時だけなど、目的に合わせて少量飲むようにすると安心かもしれません。

無理なく水分補給しながら、快適なマタニティライフを過ごせるといいですね。


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杉山太朗

杉山太朗

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

2023.05.18

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