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【産婦人科医監修】妊婦さんは生魚を食べてもよい?注意点や体験談
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田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。
妊娠中に生魚を食べても問題ないのか、心配になる妊婦さんもいるのではないでしょうか。妊娠期間は食べものに気を遣いますが、できれば好きなものを食べてストレス解消などできたらよいですよね。今回は、妊婦さんが生魚を食べてよいかについて、食べる際の注意点、生魚の代わりになる簡単レシピ、体調不良時の対処法、ママたちの体験談をご紹介します。
妊婦さんが生魚を食べてよいか
栄養豊富で体に良いとされている魚介類。特に、お刺身やお寿司が好きな方は、妊娠中でも食べたいと思うことがあるのではないでしょうか。
厚生労働省の資料によると、妊娠中に生魚を食べることについて特に否定はしていないようです。しかし、全般的な食中毒については注意喚起をしており、生魚を含めた生ものはできれば食べずに加熱した方が安全対策になるでしょう。
もし万が一、妊婦さんが食中毒などの体調不良を起こしてしまうと、お腹の赤ちゃんに影響が及ぶこともあります。
妊婦さんが生魚を食べない方が安全な理由
妊婦さんが生魚を食べない方が安全な理由について詳しくご紹介します。
妊娠中は消化機能が低下する
妊娠中はホルモンの影響で、消化機能が落ちることがあります。
胃腸の動きがわるくなる、胃酸が逆流しやすくなる、便秘や下痢を起こしやすくなるといった症状が出る妊婦さんもいます。
今までは普通に生魚を食べていたとしても、妊娠後から急に食べられなくなったり、食べたことで胃腸の調子がわるくなる場合もあるため注意が必要でしょう。
生魚には細菌が潜んでいることがある
生魚には、体内に入ると食中毒を引き起こす細菌が潜んでいることがあります。
中でもリステリアは、動物の腸管内など広く分布する細菌で、4℃以下の低温でも死滅せずに増殖します。そのため、冷蔵庫にしばらくおいていた食べ物を加熱せずに口にすると、感染することが多いといわれています。
症状は、発熱や筋肉痛、吐き気、下痢など風邪に似ており、妊婦さんが感染すると胎盤を通じて赤ちゃんへも感染し、流産の原因となる場合もあります。
そのほかの細菌としては、腸炎ビブリオやサルモネラ菌があります。
腸炎ビブリオは、凍結しても短期間では死滅せず、冷蔵庫にあった食べ物を加熱しないでそのまま食べると食中毒を起こす可能性もあるでしょう。
生魚にはウイルスが潜んでいることがある
生魚には、食中毒を引き起こすウイルスが潜んでいることもあります。
主なウイルスとしては、カキなどの二枚貝に潜むノロウイルスや、魚介類に潜むA型肝炎ウイルスなどがあげられ、十分火を通して食べることで予防できます。
生魚には寄生虫が潜んでいることがある
また生魚には、アニサキスと呼ばれる寄生虫の一種が潜んでいることも。
アジやサバ、サケ、サンマ、カツオ、イワシなどに寄生することが多く、幼虫は白色の少し太い糸のような形をしています。
体内に入ると胃壁や腸壁に入り込んでアニサキス症という食中毒を引き起こし、みぞおちに激しい痛みや嘔吐といった症状が出ることがあります。
妊娠中食べる際に注意が必要な生魚の種類
妊婦さんが食べる際に注意が必要な生魚の種類についてご紹介します。
水銀量が多い魚
食べる生魚の種類や量によっては、水銀を摂取してしまう可能性があります。
自然界にはある一定の量の水銀が存在し、メカジキ、ミナミマグロ、金目鯛、クジラといった、食物連鎖によって小さな魚を捕食する大きな魚ほど水銀含有量が多くなります。
もし、このような魚を食べて水銀を摂取した場合でも、通常は徐々に体外へ出ていくため平均的な食生活をしていれば問題はありません。
しかし、妊婦さんが水銀を含む魚を大量に食べ続けた場合、お腹の赤ちゃんへ影響が出ることがあります。
動物性ビタミンAが多いうなぎ
動物性ビタミンAは、目や皮膚、粘膜の働きを助けたり、抵抗力を高めたり、暗い所でも視力を保つ働きをもつビタミンです。
ただし、水には溶けない性質をもつ脂溶性ビタミンのため体内に蓄積されやすく、過剰摂取してしまうとビタミンA過剰症となり、お腹の赤ちゃんに先天異常が起こる可能性もあります。
特に、動物性のビタミンAが多いうなぎは食べ過ぎると、お腹の赤ちゃんに奇形や先天性異常のリスクが高まります。しかし、水銀を含む魚と同じで食べ過ぎないようにすれば、問題はありません。
妊娠中の魚介類の食べ方
妊娠中の魚介類の食べ方として、食中毒の一番の予防法はやはり、食べる際に魚の中心までしっかりと火を通すことです。中心まで加熱されない炙りの状態では不十分でしょう。
魚介類の調理前に、水でよく洗って菌を洗い流すことや、使った調理器具類をよく洗浄すること、魚を-20℃以下で24時間以上冷凍することも予防策として有効とされています。
また、食酢での処理や塩漬け、しょう油やわさびをつけると食中毒予防になるといわれることもありますが、寄生虫は死滅しません。スモークサーモンや魚のパテといったものも控えた方が安心でしょう。
また、下記のようなリストに注意すると、食中毒予防としてより良いかもしれません。
<食中毒予防リスト>
- 食材は、買ってきたらすぐ冷蔵庫や冷凍庫に入れる
- すぐに食べない際は、早めに冷凍保存する
- 調理中はこまめに手を洗い、タオルや布巾は清潔なものを使う
- 使い終わった調理器具は洗剤でよく洗い、できれば熱湯消毒する
- 食材を開封したら早めに食べきる
- 残ったものは放置せずに冷蔵庫で保存し、温めなおすときは十分に加熱をする
出典:これからママになるあなたへ 食べ物について知っておいてほしいこと/厚生労働省
生魚の代わりになる簡単レシピ
生魚の代わりに味わえる簡単レシピをご紹介します。
カニかまとツナの手巻き寿司
●材料(2人分)
カニかま4~5本、卵焼き適量、ツナ大さじ2、青じそ適量、のり適量、ご飯、マヨネーズ・しょう油少々
●作り方
1. カニかまを食べやすい大きさに割き、卵焼きを棒状に切る
2. ツナの油を切って、マヨネーズ・しょう油と合わせる
3. のりにご飯や具材を盛りつけて巻き完成
カニのような見た目をしているカニかま。原材料には主にスケトウダラなどの魚肉が使われ、調理済みのためそのまま食べることができます。
カニかまには、刻みタイプやスティックタイプなどがあり、カニの身をほぐしたような繊維状の見た目の刻みタイプだとより、カニに近い味わいを楽しめそうですね。
アボカドのカルパッチョ
●材料(2人分)
アボカド1個、レモン汁小さじ1、オリーブオイル・マヨネーズ・しょう油・わさび適量、刻みのり少々
●作り方
1. アボカドを薄切りにして、レモン汁をかけて器に盛る
2. オリーブオイル・マヨネーズ・しょう油・わさびを混ぜたものを1にかけ、刻みのりをふって完成
脂肪分や栄養素がたっぷりの森のバターとも言われるアボカド。熟したアボカドにわさびしょう油をかけることで、中トロのような味わいを楽しめます。
また、薄切りにしたアボカドは変色しやすいですが、レモン汁やオリーブオイルをかけることで変色を防ぐことができるようです。
お刺身こんにゃくの中華風サラダ
●材料(2人分)
お刺身こんにゃく100g、きゅうり1本、塩少々、しょう油・酢・砂糖・ごま油・白ごま適量
●作り方
1. お刺身こんにゃくを水洗いして細切りにする
2. きゅうりを千切りにして塩を振り5分程おく
3. ボウルにしょう油・酢・砂糖・ごま油を入れて混ぜ合わせる
4. 全ての材料を入れ混ぜ合わせたら器に盛り付け、白ごまをふって完成
お刺身こんにゃくは、通常のこんにゃくよりも水分量が多く、イカのようにさっぱりとした食感を味わえます。
ほとんど味のないものから、ゆずやあおさなどを練り込んでいるものもあるそうです。
妊娠中生魚を食べて体調が悪い際の対処法
生魚の食べ過ぎなどで腹痛がある場合は、適度な水分をとり1~2日安静にすると、回復しやすいかもしれません。水分をとる際は常温か温かめのお湯にして、寝るときは吐いたものが喉に詰まらないよう横向きに寝るようにするとよいでしょう。症状が落ち着いてきたら、胃腸も弱っているため、おかゆやうどん、野菜スープなどできるだけ消化のよい食事を少しずつとります。また、下痢のほか激しい腹痛や嘔吐、発熱を伴う場合は、腸炎ビブリオやサルモネラなどの食中毒も考えられます。その際は早めに、産院に連絡するようにしましょう。産科だけで対処できない場合、内科などを紹介してもらうこともあります。
薬については妊娠中飲んではいけないものもあるため、自己判断で服用するのは避けましょう。
妊娠中に生魚を食べたママたちのエピソード
妊娠中に生魚を食べたことがあるママから、話を聞きました。
妊娠中は、安定期以降にお刺身を食べていました。夫の実家に行くことがあって、料亭に卸す魚屋さんだったのですごくいい魚を食べさせてもらい、マグロやその他いろいろと喜んで食べてました。食べた後も特に異変はなかったですが、あくまでも自己判断だと思います
生魚を食べる場合は注意点を守ろう
妊娠中、生魚を食べることはできますが、消化機能が低下し食中毒のリスクもあるため、できれば控えた方が安全かもしれません。
しかし、もともと大好物でどうしても食べたい時もあると思います。その際は、衛生面に配慮しながら少量をたまに食べるようにしましょう。体調がすぐれないなどの懸念がある場合は、控えるかしっかり加熱したものを食べた方がよいかもしれません。
生魚に限らず、どんな食材でも妊娠中は食中毒対策を徹底し、おいしく食事を味わいながらお腹の赤ちゃんと一緒に楽しい妊娠期間を過ごせるとよいですね。
監修:
Profile
杉山太朗
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。
妊娠初期はつわりがひどくて生魚の匂いがNGになり、それがきっかけで基本的にあまり食べなかったです。
その後、匂いの問題がクリアになって食べられるようになっても、やはり寄生虫問題が不安だったので、妊娠中は煮魚など火を通したものを食べました