肌がデリケートな赤ちゃんや子どもは、乾燥する季節に乾燥性湿疹という肌トラブルになりがちです。そもそも乾燥性湿疹は病気なのか、市販薬でも治療することはできるのか、など、赤ちゃん、子どもの乾燥性湿疹のホームケアと治療薬について恵比寿mamaクリニック院長の加藤円香先生監修のもと解説します。
赤ちゃんや子どもの肌は、スベスベして潤っている印象がありますが、大人の肌に比べて厚みがなく、水分や皮脂の量も少ない状態なのでとてもデリケートでもあります。乾燥や湿疹などの肌トラブルにもなりやすく、治るまでに時間がかかることもあります。赤ちゃんや子どもの肌にはどのようなスキンケアが必要なのか説明していきます。
赤ちゃんや子どもの肌トラブルのなかでも特に多いのが乾燥性湿疹です。乾燥性湿疹は空気が乾燥する季節の秋から冬シーズンに多く発症する病気です。「皮脂欠乏性湿疹」や「乾皮症」ともよばれます。どのような原因や症状があるのかママやパパは知っておきましょう。
乾燥性湿疹は皮膚の脂や水分が減少することで乾燥し、さまざまな症状を起こしてしまう病気です。乾燥した肌が敏感になり肌表面が、ひび割れや白い粉を吹いたような状態になったら、乾燥性湿疹の一歩手前かもしれません。
症状が進むと炎症を起こして赤くなったり、かゆみが強くなったりします。こうした肌あれや水ぶくれなどの湿疹といった症状が出ると乾燥性湿疹と診断されます。
乾燥性湿疹は手足や腰回りなどに症状が出やすいようです。衣服がすれやすい部位は、特にかゆみをともないやすく、赤ちゃんや子どもが無意識にかきむしってしまうと炎症に繋がることがあります。
赤ちゃんや子どもは、かゆみをうまく口で伝えられないときや寝ているときに身体をかきむしったりすることがあります。子どもがかきむしるのを止められないとき、ママやパパはどのようなケアをするとよいのでしょうか。
赤ちゃんや子どもは小さな体に対して、汗をたくさんかくため肌を清潔に保つことが大切です。ただし、洗浄力の強い石鹸などは肌を傷つけたり、皮脂を落としすぎてしまうこともあります。肌に優しいベビー用の石鹸や洗浄料をしっかり泡立てて、肌をこすらないように優しく洗い流しましょう。
肌を清潔にしたら、必ず保湿をすることも大切です。特にお風呂のあとは肌の角層細胞の間隔が広がっているので肌の水分がなくなりやすい、といわれています。またお風呂のあとに保湿剤を塗るのは高い効果が期待できるため、入浴直後の保湿を心がけましょう。
さらに最も注意が必要な秋や冬シーズンで乾燥しやすい時期は、日常的に保湿クリームなどで赤ちゃんや子どもの肌をケアすることが大事です。最低でも1日2回保湿剤を塗ることで高い確率で肌の乾燥を防ぐことができるといわれています。
赤ちゃんや子どものスキンケアについて、詳しく説明されている以下の記事も参考にしてみるとよいでしょう。
赤ちゃんや子どもの肌はデリケートなので、ママやパパは肌着の素材も肌触りが優しいものを選びましょう。一般的に化学繊維や起毛素材のものは刺激になりやすいため、肌着は綿100%などの低刺激で柔らかい素材を選ぶとよいでしょう。
赤ちゃんや子どもが皮膚をかきむしらないように、爪は短く切っておくとよいでしょう。爪で肌を傷つけてしまうと症状が悪化してしまうおそれもあります。
日頃からママやパパが意識して、赤ちゃんや子どものスキンケアをするのも大事ですが、根本的な治療にはなりません。乾燥性湿疹はアトピー性皮膚炎などの深刻な皮膚の病気になることもあるので、症状があらわれたら迷わずに病院で診察を受けることも大事です。
保湿剤や外用薬などを医師から処方してもらい、早めに治療することが症状の悪化を防ぐことにつながります。
病院によっては子どもや赤ちゃんの乾燥性湿疹にも保湿剤が充分な量が処方されないこともあったようです。
理由のひとつとして、治療ではなく美容目的で処方薬を求める患者がいるという問題が表面化しためです。その問題について国や医療機関が議論し、ヘパリン類似物質を含む、特定の保湿剤の適正使用を徹底するという方針になりました。必要な患者さんには処方するということは変わりありませんので、医療機関で相談してみましょう。
子どもが乾燥性湿疹なのに保湿剤の処方が足りず悩んでいるママやパパは、市販薬のヘパリン類似物質を含む保湿剤がドラッグストアや通販などで販売されているので、選択肢のひとつにいれてもよいかもしれません。
ただし、市販薬のヘパリン類似物質を含む保湿剤は、赤ちゃんや子どもの肌に合わない場合もあるので、医師や薬剤師に相談したうえで使用すると安心でしょう。
赤ちゃんや子どもが乾燥性湿疹になったときにすぐに病院に行けない場合など、市販の保湿剤で対処することも考えてよいでしょう。ただし、市販の保湿剤といっても、赤ちゃんや子どもの肌のためにはどのような保湿剤を選べばよいのでしょう。
肌の細胞に必要なのは水分ですが、水分は油分で蓋をしないとすぐに蒸発してしまいます。また油分だけでも保湿にはなりません。そのため水分と油分のバランスの良い乳液(乳状ローション)やクリームタイプがおすすめです。市販の保湿剤にはさまざまな種類があります。まずは、医薬部外品と明記されているものから選ぶのがよいでしょう。医師や薬剤師などに相談するのもひとつの手です。
ワセリンは刺激性がほとんどない皮膚の保護剤です。光や湿気などによって酸化することが少ないので保存も難しくなく、ワセリンは肌の表面にとどまる保護剤なので使用感はちょっとベタつきがあります。
赤ちゃんや子どもによってはベタつきが気になり、使いにくいと感じることもあるかもしれませんが、肌の保湿、保護効果は期待してもよいでしょう。
市販で売られている保湿剤やローションなどをいくつか紹介しました。デリケートな肌の赤ちゃんや子どもに市販のものを使用するときは、必ず医師や薬剤師に相談してから使用しましょう。
乾燥性湿疹は、大人だけでなく、赤ちゃんや子どもの肌の病気のひとつです。乾燥性湿疹の改善には日常的な肌のケアも深く関わってきます。特に赤ちゃんや子どもの肌はとてもデリケートなので、ママやパパが意識してケアすることで健康な肌を保つことができるのではないでしょうか。
空気の乾燥の厳しい季節は、日常的に保湿を心がけ、子どもがかゆそうに肌をかいている様子や炎症など、乾燥性湿疹と思われる症状が確認できた場合は、病院で診察を受けることも大事です。
市販で購入したものや処方された外用薬や保湿剤は医師や薬剤師に相談の上、用法用量を守って正しく使用しましょう。
加藤円香(mamaCLINIC 恵比寿mama)
医療法人社団mamaCLINIC 恵比寿mamaクリニック院長。
4児の子育てをしながら、恵比寿にお母さんと家族のための皮膚科、漢方内科を開院。こどものスキンケアから美容など、小さなことでも相談できる『家族みんなのかかりつけ医』として診察を行なっている。
2018年09月26日
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