抗菌薬って聞いたことある?今知るべき「正しい」使い方
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子どもが病気になったとき、適切な対応ができていますか? この記事では、「ウイルス」と「細菌」のちがい、そして「風邪薬」と「抗菌薬」のちがいを明確にするとともに、子どもの未来のためにも今知るべき「正しい」抗菌薬の使い方について紹介します。感染症が流行する季節にぴったりの、お子さまの健やかな成長を守るための情報です。
子育て中のママが知っておくべき「子どもが病気になったときの正しい抗菌薬の使い方」を、専門家の先生にわかりやすく解説していただきました。
抗菌薬の使い方しだいでは、子どもの未来はもちろん、社会全体に影響が出てくる可能性があります。
薬剤師ぴよ先生
だんだん寒くなってきて、風邪やインフルエンザが気になる季節になりました。病院や薬局で感染症のお薬をもらったことのある方がほとんどだと思います。
私も2歳と3歳の男の子のママで、感染症にかかるたびに病院にお世話になっています。
そんな時にもらうお薬ですが、お医者さんや薬剤師さんから「指示された服用方法で必ず飲んでくださいね」と指導を受けると思います。なぜちゃんとお薬を飲まないといけないのか、そもそもどんな風に体に作用しているか、気になりませんか?
実は、お薬のまちがった使い方をしている方が多くいます。これは子どもの健康だけでなく、子どもの未来や社会全体にも悪い影響をもたらします。
そこで今回は、お薬の中でも子どもに処方される機会の多い「抗菌薬」にフォーカスし、子どもや社会のためにもなる「抗菌薬の正しい使い方」について皆さんにお伝えします。
知ってる?ウイルスと細菌のちがい
薬剤師ぴよ先生
ママたちへの事前アンケートで「ウイルスと細菌のちがい」について答えていただきましたが、「わからない」という方がほとんどでした。
感染症の原因となる「病原体」。私たちの身近には数多くの病原体が潜んでいますが、ウイルスや細菌は代表的な病原体の一種です。
ただ同じ病原体でも、ウイルスと細菌では以下のようなちがいがあります。
ウイルスと細菌を同じものと思われている方もいますが、このように全然ちがうもので、効果のある薬もちがうのです。ちなみに風邪はウイルスが原因です。
薬剤師ぴよ先生
まずは手洗い・うがい、マスクの着用など基本的な感染対策が重要で、ワクチンの接種も有効です。感染してしまったら、睡眠時間や、食事の栄養バランスにも気を配り、病原体をやっつけるための免疫力を向上させましょう。
保護者が知っておきたい風邪薬と抗菌薬のちがい
薬剤師ぴよ先生
感染症にかかった時、取りあえず何でもいいから薬を飲んでおいた方がよいと思っている人もいますが、実はまちがいです。
中でも風邪薬と抗菌薬を比べてみると、役割が全くちがうため、目的に応じて使い分けなければいけません。
薬剤師ぴよ先生
風邪はウイルスが原因なので、細菌に効果のある抗菌薬を飲むのはまちがいです。
また細菌が原因の感染症にかかったとしても、抗菌薬は熱や鼻水などの症状を和らげるものではないので、症状を和らげようとして抗菌薬を飲むのもまちがっています。
一方風邪薬は、風邪による症状を和らげるのが目的なので、細菌やウイルスなどの病原体をやっつける目的で飲むのはまちがいなのです。
そもそも「抗菌薬」ってなに?
薬剤師ぴよ先生
皆さん、抗菌薬と聞くとどのようなイメージがありますか?
ウイルスをやっつける、というイメージがあったので、細菌にしか効かないと聞いて驚きました。
飲むとお腹を壊すイメージがありますし、咳が出ているときは子どもが薬を吐くこともあります。
薬剤師ぴよ先生
抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことを指します。
そのため、そもそも細菌とは構造や仕組みのちがうウイルスには効果がありませんし、そのウイルスが原因の「風邪」にも効果がありません。
どんなお薬にも副作用がありますが、抗菌薬は飲むと下痢になるお子さんもいますので、一緒に整腸剤を処方されることもあります。また抗菌薬を飲んですぐ吐いてしまった場合、まだ薬が体に吸収されていないことがあるので、新しい抗菌薬を飲んだ方がよいです。あまりにも激しい下痢や吐き戻しが起こるようなら、お医者さんや薬剤師さんに相談してください。
「正しい」抗菌薬の使い方
薬剤師ぴよ先生
皆さん、抗菌薬の使い方についてどのようなイメージがありますか?
理由はわかりませんが、「飲み切らないといけない」とお医者さんに言われます
処方された抗菌薬を途中でやめてしまったことがあります。子どもが元気になっても飲み切った方が良いのですか?
薬剤師ぴよ先生
必ず、抗菌薬を飲む量・回数・期間はお医者さんの指示を守ってください。そうしないと、抗菌薬本来の力が発揮できないほか、症状が悪化する恐れがあります。
そして、抗菌薬が家にあるからといって、兄弟(姉妹)など他の人が使うことも必ず避けてください。種類や量が異なるので、処方された人以外に飲ませてはいけません。
また、お子さんが元気になっても、抗菌薬は必ず飲み切ってください。途中で飲むのをやめてしまうと、細菌がやっつけきれずにまた症状が出てきたり、生き残った細菌が薬の効かない/効きにくい細菌(薬剤耐性菌)になったりして、身体の中で増えてしまうリスクがあります。
ポイント
必ず飲みきる
医師が指示した量・回数・期間を守る
兄弟など他の人にあげない
今知るべき「薬剤耐性(AMR)」
薬剤師ぴよ先生
薬剤耐性(AMR)とは「病原体に薬が効きにくく/効かなくなる」ことで、抗菌薬が効きにくい/効かない細菌を「薬剤耐性菌」といいます。
薬剤耐性菌は元々存在していますが、抗菌薬が効く細菌より数が多いわけではありません。
しかし、薬剤耐性菌増加にはさまざまな要因があり、その代表的な要因が「抗菌薬のまちがった使用」です。
たとえば、5日間飲むべき抗菌薬を体調がよくなったから1日でやめてしまったなど、自分の判断で処方された服用方法を変更してしまうと、抗菌薬が中途半端に効いた状態になり、しっかり使っていればやっつけられていたはずの細菌が生き残って、残った細菌から薬剤耐性菌が出現する可能性が高くなってしまいます。
こうして薬剤耐性菌がどんどん増えていけば、今効いている抗菌薬が効かなくなってしまい、将来、細菌による感染症を治療できなくなってしまう危険性があります。
正しく抗菌薬を使用することが、薬剤耐性菌を増やさないようにする第一歩なのです。
また、抗菌薬が効かなくなるだけではありません。
抗がん剤治療や手術の時には細菌に感染するリスクが高いため、薬剤耐性菌が増えてしまって抗菌薬が効かなくなると、本来行えていた手術をあきらめなければならないことも起こり得るかもしれません。
このように薬剤耐性(AMR)の問題は、単純に感染症が治りにくくなることだけでなく、その他の医療にも大きな影響を及ぼすのです。
さらに2014年の発表では、「今後、薬剤耐性に有効な対策をうたなければ2050年には薬剤耐性による世界の年間死亡者は1,000万人に達する」との予想も出ています。1,000万人というのは現在のがんの死亡者数よりも多い数です。
ですので、抗菌薬は風邪などのウイルスに対しては効果がないことを理解し、もし細菌による感染症になった場合、抗菌薬が処方されたら必ずお医者さんや薬剤師さんの指示通りに飲みましょう。特に、量と回数を守って飲む、最後まで飲み切る、他の人にあげない、ことを意識してください。
子どもの未来に使える抗菌薬を残すためにも、皆さんが抗菌薬を正しく使うことが必要不可欠です。
そしてこれは誰か1人ではなく、私たち全員で守っていくことが大切なのです。
子どもと社会の未来のために抗菌薬を正しく使おう
薬剤師ぴよ先生
今後の皆さんの健康のため、そして子どもや社会の未来のために今回のような機会を持つことができてよかったです。
子どもが元気になるとつい飲ませるのを忘れがちですが、今後気をつけようと思いました。
目先の病気だけに目が行きがちですが、子どもの未来のためにも正しい抗菌薬の使い方が大事だと感じました。
「薬剤耐性」について知らなかったので、自分ができることがわかってよかったです。家族にも共有したいと思います!
「薬剤耐性」について、ファイザー株式会社のコンテンツでも正しい情報を得ることができます。子ども向けの動画もあるのでぜひチェックしてみてください。
ウイルスや細菌が原因の病気はどう防いだら良いのでしょうか。