KIDSNA STYLE連載中の人気漫画家たちが選ぶ「子育ての悩みや不安を和らげた一冊」は?【わたしの子育て、この一冊】
KIDSNA STYLE年末特別企画! 人気漫画家・コミックエッセイストのみなさんに「子育ての悩みや不安を和らげた一冊」を教えていただきました。いったいどんな本が、普段育児にまつわる漫画を描く方々を支えてきたのでしょうか?(五十音順でのご紹介です)
最近日本でも注目されている「語りかけ育児」の原点となる著書です。
赤ちゃんへの話し方や遊び方が年齢別に載っていてわかりやすく、またその効果が研究データに基づいて立証されています。
初めて赤ちゃんと話すとき、何も話さない相手に何を話して良いかわからず戸惑ってしまうこともありましたが、この本を読んだことで「こうやって話しかけてみよう、こうやって遊んでみよう」とコミュニケーションのヒントをもらい、話しかけることが楽しくなりました。
今でもお絵描きや工作などの制作中に語りかける言葉のヒントとして参考にしております。
漫画家。1982年、長野県生まれ。多摩美術大学卒業。
同じく漫画家の夫と娘の3人暮らし。
コミック版 『「語りかけ」育児:0~4歳 わが子の発達に合わせた 1日30分間 』(小学館)漫画担当。
他代表作品に『猫はまたたび』(GANMA!/KADOKAWA エンターブレイン)『さえずり高校OK部!』(小学館)『ギャルが落語家に恋したら』(芳文社)など。
10代で知っておきたい「同意」の話 : YES、NOを自分で決める12のヒント
小学生4年、2年、年中の3人の子どもがいて、育児エッセイまで描いていますが、自分の子育てをちゃんと考えてみようと思ったのは、実は今年に入ってから。
それまでは「育児」を生活の中で特別なもののように感じていましたが、性教育の専門の方々とお話しするうちに、「生活そのものが人権教育なのかも、じゃあどうしていこう?」と、まず手に取ったのがこの本です。
「あなたはこの本を読んでみたい? この先を読みたいって思う?」
「まずはピザの話から始めよう、それがいいなって思ったんだ」(作者はピザがとても好きです)
タイトル通り「同意」をめぐるいろんな考え方を、ピザや映画、ときに「次のページには、気が滅入るようなことが書いてあります (>_< )」という前置き付きでちゃんと伝えてくれます。
子育てや性教育の本はたくさん出ていますが(私が読んでいるのはアクロストンさん、
きしもとたかひろさん、
シオリーヌさん、
にじいろさんなどなど…)、この「10代で知っておきたい同意の話」を読んだ後だと理解度が変わってくるなあと実感しています。
人権教育や性教育にちょっと興味あるなーという親御さんにかなりおすすめの一冊です。
マンガ・イラストレーター。長男出産後、SNSで何気ない日常のふとした出来事や気持ちを漫画やイラストで綴る。著書に『いってらっしゃいのその後で』『君の心に火がついて』(KADOKAWA)がある。挿絵やイラスト・マンガを執筆。関西在住。3人の子どもと夫、猫1匹、とかげ1匹と暮らす。
育児について描くことが多いこともあり、子育ての本はかなりたくさん読んできました。
でも「子育ての悩みや不安を和らげてくれた一冊」というテーマには、ちょっと悩んでし
まったのです。だって、育児ノウハウが書かれた実用書は「勉強になりました」みたいな
かんじで、「和らげる」とはなんか違う。とはいえ、笑いながら読める育児マンガは「気
分転換ができた」ってかんじで、これまたなんか違う。
そこでふっと浮かんだのは、タレントで料理愛好家の平野レミさんの「ド・レミの子守
唄」。息子であるTRICERATOPSのボーカル・和田唱さんの子育てを綴ったエッセイで
す。私は、レミさんの夫である故・和田誠さんが一番尊敬するイラストレーターなので、
まだうちの息子が小さかったときに読んだのです。
このエッセイ、70年代の話だから、実用的な意味で今の子育ての参考になるところなん
て全然ありません。でも、その天真爛漫な語りに、読むと心がふわっとほぐれるのです。
たとえば、「ミルクしか飲んでないのに、それが肉になったり、まつげになったり、つめ
になったり、うんちになったり、鼻くそになったりするのが不思議でおもしろい」「人間
はお金を一銭もかけないで人間を作れちゃうのだ。ひょっとすると天才まで作れちゃう。
女というのはすばらしい構造を持っていて、自慢をいっぱいしてもいいものだ」、なんて
具合。
そして、あの向かうところ敵なしなイメージのレミさんが、育児初期は、普通のママみた
いに、オムツがまだとれないとあせったり、幼稚園登園拒否に悩んだり、子どもの病気の
看病にくたくたになったりしていて、あのレミさんでもそうなら、子育ては誰だって大変
なんだよな、とも思えたのです。さらに、そうやって育てた和田唱さんがあとがきを書い
ていて、母への感謝を語っているのもまたいいのです。
ところで、本題とはずれるけど、この本の中で私がいちばん印象深いのは、夫婦関係につ
いてのこの部分。
「結婚というのは、つくづく不思議なもので、それまで他人だった二人が急に一つの家に
住んで、平気で一緒に寝てしまう。もしかしたら夜中に殺されちゃうかもしれないのに、
今まで殺されないで、目を覚ますと、ちゃんと私は生きている。結婚というのは信頼のか
たまりだと、ひしひし思う」
うーん、なんだかじわじわ沁みる一文だよ。
コミックエッセイスト&イラストレーター。
おいしいごはんとお風呂屋さんと祭りが好き。近著に、国内外の多様な家族を取材し、その家事育児分担とコミュニケーションをまとめた『ほしいのはつかれない家族』(講談社)。
高校生で進路を決める際、なんとなくOLになるのが嫌だった。子どものお世話が好きだし、授業も楽しそうだから…と幼児教育学科へ入ることにした。
そこで学んだことは何物にも代えがたい経験だった。幼児教育の歴史、ピアノのレッスン、絵本の授業、リトミックや製作の授業。そして保育施設での実習。
保育とは何か? 子どもへの援助とはどんな言動が望ましいか?
遊ぶ隙も休む隙もないぐらいにギチギチに授業がつまった毎日だったけど、保育について学ぶことは私にとって物凄く楽しかったし、学生ながらも親向けに出された育児書を読み漁るほど熱中していった。
保育者としての子どもとしての関わり合い方。親としての子どもとしての関わり合い方。色んな本を読んで「自分はこうありたい」という理想が固まっていった。
小学、中学、高校の教科書は全て捨ててしまった。しかし幼児教育学科で貰った教科書の中で唯一残してある本が一冊ある。これは捨てられなかった。結婚して実家の持ち物を大量に整理した時も、この本は持っていこう……と決めてダンボールに詰めた。
『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン
50ページほどの薄い本だった。既に癌で死期を悟っている著者が最後に書いたものだという。
授業でこの本が配られたときに、先生はここにアンダーラインをひいて下さいと言った。
---------------------------------------
「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない
「もしこれが、いままでに一度も見たことがなかったものだとしたら? もし、これを二度とふたたび見ることができないとしたら?」
実際には、同じような光景は毎年何十回も見ることができます。そして、そこに住む人々は頭上の美しさを気にもとめません。見ようと思えばほとんど毎晩見ることができるために、おそらくは一度も見ることがないのです。
---------------------------------------
今でもこのアンダーラインは残っていて、私の心を揺さぶる。先生がこれから保育者になる生徒たちに何を伝えたかったのか。何を残したかったのか。今ならわかる気がする。
この本を読むことで、生涯、見える景色や感じる心が育まれるのだ。何でも吸収出来る素直な心を持った学生時代にこの本を読んでおいて本当に良かったと思う。しかし大人になってから、親になってから読んでもまた新たな気付きがある「感性を研ぎ澄ます」本なのだ。
作中で「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」だと解説されている。子どもと散歩して見上げる空の色や、雨の日に子どもと共に嗅ぐ匂いや音に気付けるようになるこの本を「わたしの一冊」としておすすめします。
漫画家&イラストレーター。元保育士の2児の母。育児漫画、産後クライシス、ワンオペ育児、幼児期からの性教育などの漫画をブログにてまとめている。