かえって睡眠の質を下げる…専門家が「アスリート愛用マットレスは一般人向けではない」と断言するワケ
固いマットレスにやわらかいシートをかける茶番行為
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【第4回】8時間睡眠は不健康の元凶…100万人最新調査で判明「死亡率、糖尿病・心血管疾患リスクが最も低い」睡眠時間 CMやテレビ通販でおなじみのアスリート愛用のマットレスやリカバリーウェアは本当に効果があるのか。睡眠コーチの角谷リョウさんは「アスリート仕様の商品は運動をハードにした人向けで、ビジネスパーソンや一般人には不要どころか、かえって睡眠の質を下げてしまう可能性もある」という――。 ※本稿は、角谷リョウ『仕事の質を高める休養力』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
なぜ、アスリート愛用のマットレスは一般人に合わないのか?
寝具メーカーさんたちのマーケティングの努力により、以前は一部の人しか縁がなかった高級マットレスが、今や一般的な人でも普通に購入できる時代になりました。
マットレスといえば、フィギュアスケートの浅田真央さん、テニスの錦織圭さん、サッカーの三浦知良さん、そして極め付けはメジャーリーグの大谷翔平さんといった知らない人はいないレベルのアスリートが広告塔になっています。
その理由としては、そもそも今の高級マットレスがアスリートの疲労回復に効果があることから始まったからです。実際にアスリートにとって疲労回復はとても重要であり、寝具には非常にこだわっているので説得力があります。
さらに、さまざまな研究や実験を通して、各メーカーはどのような反発力や体圧分散が疲労回復に効果的かを日々研究し、改善を続けています。
しかし……ここで重要なことなのですが、アスリートたちと普通のビジネスパーソンの疲労はかなり種類が違います。というか、真逆くらい違います。アスリートは体を酷使した疲労ですが、ビジネスパーソンは脳と神経のみの疲労が多く、肉体はむしろ使わなさすぎるための疲労なのです。
もちろん仕事も運動もバリバリこなす方はアスリート仕様で良いと思います。
もう1つ考えていただきたいのは、体格が違うことです。アスリートと私たちでは筋肉量が全然違うのです。
アスリート仕様のマットレスで寝ると「かなり固いな」と思われる方が多いと思います。実際にかなり高反発で当たりも固いタイプが多いので、マットレスの上にトッパーと言われるクッションシートを購入されて固さを軽減させることが多いです(販売員に購入をすすめられます)。
今までの話を総合すると、運動をそこまでしていないほとんどの人にとって、アスリート仕様のマットレスは不要どころか、かえって睡眠の質を下げてしまう可能性すらあるのです。
高級なアスリート仕様のマットレスにクッションシートを重ねるのは、お金をかけてノーマルマットレスに戻しているような茶番行為なのです。
この原稿を執筆時点でチャットGPTに「あなたは寝具の専門家でオタクです」という設定にして、「一般的な成人が最も睡眠が良くなるマットレスを正直に忖度そんたくなく教えてください」と質問したところ、「コアラマットレス」という回答が返ってきました。
私も個人的には適度な高反発で寝返りしやすく、体に触れる部分は低反発でリラックスできる二重構造は現時点で一番おすすめです。現時点でも5万円以上クラスだと、この二重構造がスタンダードになってきています。5万円以下のリーズナブルな価格帯のマットレスでも、できるだけ「高反発」かつ「表層は柔らかく」する工夫をさまざまなメーカーが始めてきています。

























