庶民は690円カットに歓喜の中…「10万円出しても予約が取れない」ヘアサロンの"1回行くと後戻りできない秘密"
ヘアサロン業界「倒産過去最多」時代に起きている二極化の実態
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平日限定の690円カットが話題だ。富裕層マーケティングを手掛ける西田理一郎さんは「ヘアサロン業界はオーバーストアで淘汰の時代を迎える中、低価格路線と高級路線の二極化が進んでいる。中にはリピーターが押し寄せるため予約が困難な店舗もある」という――。
平日カット690円が登場
全国に約27万軒。これが、今日本に存在する美容室の数である。床屋と呼ばれる理容室を含めれば、その数は更に膨れ上がる。都心部と地方では価格差があるとはいえ、業界全体を覆う影は濃い。倒産件数は過去最高を更新し続け、オーバーサロン状態の中、淘汰の嵐が吹き荒れている。

そんな中、加速の一途を辿るのが「二極化」だ。富裕層向けの高級サロンと、激安カットの店――その両極端が、今、この業界の未来を象徴している。
1996年に一号店をオープンし、29年目に突入した「QBハウス」が激安カット業態を確立して以降、その波は止まらない。最近では、株式会社ハクブンが運営する「ヘアーサロンIWASAKI」が、一部店舗で平日タイムサービス690円という、QBハウスの半額近い超低価格を打ち出した。理美容室のカット料金の全国平均が約3600円(出所=総務省統計局「小売物価統計調査結果 2023」)であることを考えれば、これは価格破壊に、さらに拍車をかける衝撃的な数字だ。
10万円でも予約が取れないサロン
その世界とは対極をなすサロンがある。東京・銀座にある高級会員制サロン「Aio-N GINZA」だ。
「5年以上前から、新規のお客様は一切受け付けていません」
そう語るのは、美容家の土屋雅之氏。顧客リストには、誰もが知る日本を代表する経営者、トップアスリート、そして名だたる芸能人ばかりが名を連ねる。「名古屋巻き」の産みの親としても知られる彼は、一応カット料金を3万円〜と設定しているが、それはあくまで「一応」の話だ。
「10万円お支払いしますから、何とかカットしていただけませんか?」
そんな懇願の声が、しばしば届くという。だが、土屋氏の答えは変わらない。これは金額の問題ではない。一度来店した人はほぼ確実にリピートするため、現実的に、もう新規はとれないのだ。

























