だから日本人の「コメ離れ」が進んでいった…アメリカの"安い小麦"を全国各地の食卓に広めた黒幕の正体
「アメリカが戦後日本に小麦食を広めた」説は大ウソ
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日本人のコメ離れが進んでいる。その原因は何か。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「小麦輸出を進めたいアメリカの戦略という意見があるが、それは誤りだ。戦後、小麦の輸入を望んだのは日本側だった」という――。
アメリカによって小麦消費は拡大したのか
「小麦の消費が増えて、コメの消費が減り、コメの減反を余儀なくされているのはアメリカのせいだ」という主張がある。
アメリカの小麦業界は1950年代後半から日清製粉をはじめとする日本の製粉業界と二人三脚で日本の小麦市場を開拓しようとした。本来畜産物の消費が増加すれば、穀物消費は減少するはずなのに、パンやスパゲティだけではなく、うどんやラーメンなどの小麦製品の消費も拡大した。半面コメの消費は減少した。
NHKの記者だった高嶋光雪氏は主としてアメリカの小麦業界に取材しNHK特集「食卓のかげの星条旗」を製作し、これをもとに『米と小麦の戦後史』を出版している。これを、コメ価格高騰の責任を回避するとともに国内農業の保護を高めたいJA農協系の新聞や学者が高く評価している。
しかし、米麦について起きたことはアメリカのせいなのだろうか? 確かに我が国はアメリカとの間にさまざまな問題を抱えているが、アメリカとの同盟関係は日本の政治・経済・外交・安全保障の基軸である。この主張は国民が抱えているある種の反米感情に付け込み、日米の同盟関係にクサビを入れようとしているに過ぎない。
結局のところ、日本人のコメ消費が減少し、値段が高騰したのは、アメリカのせいでもましてや製粉会社のせいでもない。本稿で、その事情と背景を述べたい。