父親を介護した47歳末っ子は「実家に住めてオトク」なのか…遺言があるのに3兄妹で相続争いが勃発したワケ
「3分の1ずつ分けて」という父の願いに全員反発
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相続トラブルを回避するにはどうすればいいか。金融教育家の上原千華子さんは「親が生前に遺言を残したとしても、相続人たちが合意しなければ争いは避けられない。とくに数字の話から入ると、こじれる可能性が高くなる」という――。
「争族」はイヤなのに裁判所のお世話に
「相続を“争族”にしたくない」。そう願う人は多いでしょう。それでも価値観の違いや感情のしこりが原因で、相続で揉めてしまうケースが後を絶ちません。
最高裁判所発表の「令和6年 司法統計年報(3家事編)」によると、毎年1万5000件以上の遺産分割事件が家庭裁判所で扱われ、件数は増え続けています。
なぜ相続でトラブルが起きてしまうのでしょうか。今回は、「資金管理」と「介護」を発端とする2つの事例を取り上げ、どう防げたのかを考えていきたいと思います。
※本記事で紹介するケースは、プライバシーを考慮して実話の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。
弟「こちらが多めにもらって当然だ」
ケース1:母の死後にこじれた姉と弟
相続の場に立ったのは、米国に住む姉(56歳)と、首都圏で暮らす弟(52歳)の山田さん一家。10年前に父を見送り、昨年母(83歳)を亡くしました。残された財産は東京郊外の分譲マンションと預貯金約1200万円。一見シンプルな相続に見えましたが、予想外のトラブルが起こります。
生前から両親は、「たった2人のきょうだいなんだから、仲良くするんだよ」と2人の子供を育てました。しかし姉と弟は、幼い頃から性格が正反対。仲違いはしていないものの、反りが合いません。
母は認知症を発症し、施設で暮らすようになりました。財産管理は弟夫婦が担いましたが、預金残高に不安を抱いた弟は、姉に資金援助を依頼します。これがトラブルの始まりでした。
姉は「私たちの生活も楽ではないのよ。本当に足りないのなら、母の財産を公開して収支報告をしてほしい。成年後見制度も検討してみたら?」と主張しました。一方、弟たちは「姉は何もしないくせに、いつも自分の意見ばかり主張する。もう日本に住むこともないのだから、母の財産は私たちが多めにもらって当然だ」と不満を募らせていきました。