現代人の5人に1人が「半うつ」状態…20万人の患者を診てきた精神科医が「努力家ほど危ない」という理由
ずっとギリギリなのに、心の病を否定してしまうワケ
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季節の変わり目は心も体も調子を崩しやすい。25年間、精神科医として働く平光源氏は「長引く不調を抱える人に知ってほしいのが、「半うつ」という概念だ。不調を抱えたままギリギリの生活を続けてしまう背景には、日本に深く根付いた独特の感覚がある」という――。 ※本稿は、平光源『半うつ 憂鬱以上、うつ未満』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
現代人の5人に1人を襲う「半うつ」
「半うつ」とは一体どのような状態なのでしょうか?
実は、心の状態を理解するのに、とてもわかりやすい方法があります。
それは「脳の中で何が起きているか」を見ることです。
私たち人間の脳の中では、神経細胞同士が「神経伝達物質」という物質を使ってやり取りをしています。これが減ってしまうと、脳のネットワークがうまく働かなくなり、心にも影響が出てきます。
数人で会話のやり取りをしようにも、誰かが無視したり、あやふやなことを伝えたりすればコミュニケーションは破綻します。
脳内でもまさに同じようなことが起こってしまうのです。
特に重要な役割を持つ各神経伝達物質が以下の3つです。
①セロトニン(心のブレーキ): |
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極端に言ってしまえば、うつ病とは、この3つの神経伝達物質全てが大幅に減ってしまった状態と言えます。
「半うつ」もれっきとした生理的変化
では、「半うつ」は?
3つの神経伝達物質全てが不足しているわけではないけれど、どれか1つ、あるいは2つが不足している状態。
これが「半うつ」です。
ここでとても大切なことをお伝えします。
うつ病にしても半うつにしても、あなたの「気合」や「怠け」が原因ではありません。
「神経伝達物質の減少」という、れっきとした生理的な変化によって起こっているのです。
ですから、くれぐれも自分を責めないでください。
これらの神経伝達物質は、ストレス、睡眠不足、栄養の偏り、運動不足などによって過度に消費され、必要以上に減少していきます。
現代社会で生きている以上、誰にでも起こりうることなのです。
では実際、どれくらいの人が「半うつ」状態にあるのでしょうか?
厚生労働省の調査では、うつ病の有病率は5.7%。
さらに、2018年のチューリッヒ大学の研究によると、うつ病の一歩手前の「適応障害」の有病率は15.7%とされています。
「適応障害」とは、今いる環境にいることが辛く感じられる状態です。
しかし、環境は変わっていないのに憂鬱以上の気分を感じている方もたくさんいるはずです。
そういったことから鑑みると、控えめに見積もっても、現代人の5人に1人は「半うつ」の状態にあると言えるでしょう。