プーチンですら想定外…ロシアが「2年連続の大増税」、戦費が足りないのに戦争をやめられない政権の末期症状
ついに戦時財政が回らなくなってきた
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2026年から付加価値税を引き上げる方向
ロシアで2026年1月より、日本の消費税に相当する付加価値税(VAT)の税率が引き上げられる公算が大きくなっている。VAT率は2019年に18%から20%へと引き上げられたのち、現在まで据え置かれている。しかし財務省は、9月24日に2026年の予算案を政府に提出した際、財源の不足を理由に22%へと引き上げることを提案した(図表1)。
財源が不足している最大の理由は軍事費の膨張にあると財務省は説明している。新たな財源を確保しなければ、ロシアは今後もウクライナとの戦争を今までのように継続することは不可能だというわけだ。VATはロシア連邦の歳入の40%弱程度を占める重要な財源だ。国民から広く薄く税金を徴収でき、負担の公平性という意味でも優れている。
他方で、VAT率を引き上げれば、国民の生活は苦しくなる。増税のために所得は目減りするし、また物価が上昇することにもつながる。したがって、その引き上げは国民による反発を受けがちであるため、慎重を期して行われる。ウラジーミル・プーチン大統領ら政権の幹部らにとっては、これは可能な限り排除したい選択肢だっただろう。
2年連続の増税に…
それに、ロシアは既に2025年にも増税に踏み切っている。具体的には、年収240万ルーブル(約430万円)以上の高所得者層に限定した累進課税の強化が図られた。これも膨張する軍事費を手当てするために行われた増税である。2年連続で増税を実施するという事実は、ロシアの戦時財政が着実に回らなくなっていることの証左と言える。
国債の増発という手段もあるが、貯蓄率が低いロシアの場合、中銀ないしは政府系の商銀による消化しか見込めない。これは強烈な通貨安ならびに物価高圧力となるため、簡単には取り得ない手段だ。それに、ロシアはまだそこまで追い込まれてはいない。とはいえ、それと相反するわけだが、戦時財政の維持は着実に難しくなっているのである。