あなたの歩き方は大丈夫? 「認知症になりやすい人」と「いつまでも脳が若い人」を分ける決定的違い

あなたの歩き方は大丈夫? 「認知症になりやすい人」と「いつまでも脳が若い人」を分ける決定的違い

横断歩道の白線をまたげるか

かつて運動機能の低下は、筋肉量減少などが原因で認知機能とは無関係だと思われてきた。だが近年の研究で「歩行と認知機能」には深いつながりがあることが明らかになっている。“脳に異変”が現れると、どのような「歩き方」になるのか――。

約3倍も認知機能が低下しやすい歩き方

脳の高度な機能というと、思考力や記憶力、計算力などを思い浮かべる。しかし意外にも、体を動かすことも、脳内のさまざまな場所を使う知的な活動という。特に歩く行為は、脳内で高度な情報処理が行われている。そのため脳内の異変は「歩き方に出やすい」というのだ。

私は9月半ば、認知症予防に関する研究を進めている谷口優主任研究員(国立環境研究所環境リスク・健康領域)のもとを訪ねた。谷口研究員は2012年、「歩幅の狭い人は広い人に比べて、約3倍も認知機能が低下しやすい」という驚くべき論文を発表したほか、数多くの歩行関連の研究を行っている。

「体の機能には“その人の今後”を暗示するいろいろなメッセージがあることがわかっています」と谷口研究員が説明する。

「例えば『握力が弱い人ほど死亡リスクが高い』『歩くスピードが遅い人は転倒するリスクが高い』ことがすでに研究で示されていました。そして近年、『歩く機能』が『脳の健康状態』を示し、認知症の発症と深い関係があることがわかってきました。たとえば笹井さんが今日ここに来るときにも、いろいろな認知機能を使っています。自分がどの方向に進んでいるかを把握する『視空間認知』、歩いてきた道や交差点の名前を覚えておくための『記憶力』、信号が点滅していないか、自動車が近づいてきていないかなど周辺に気を配る『注意力』、また受付では入館手続きのために行き先を伝える『言語』の機能も必要だったはずです。これらはすべて認知機能。歩くことで、さまざまな脳の機能が絶え間なく使われているのです」

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本人提供 谷口優研究員

小刻み歩行の人は、脳梗塞が複数存在する恐れあり

歩く機能の中でも、スピードやリズム、体の姿勢、足の運び方など、いくつかの指標がある中で、谷口研究員は「歩幅が狭いことで認知症の発症リスクが高くなる」ことを突き止めたのだ。「歩くスピードは、歩幅と歩調(テンポ)の掛け算で決まります。2つの要素を分けて調査を行ったところ、脳の働きと深く関係するのは歩幅ということがわかったのです」と振り返る。

その後の研究から歩行スピードの遅さ(歩幅が狭い)が認知症発症につながる要因は、大きく4つあると考えられている。

「歩幅は脳の多岐にわたる部分が関係していますが、主におでこの内側にある前頭葉から、大脳の頭頂部分、『頭頂葉』と呼ばれる部分が萎縮してきたときに、歩幅が狭くなり歩行スピードが遅くなることがわかりました。つまりひとつには脳の大きさと、歩行スピードが関係するのです」

次に血流の低下。心臓から送られる血液は、全身に酸素や栄養素を供給しているが、脳には重量に対して非常に大きな割合で血液が送られている。脳の前頭葉や後頭葉、さらに「後帯状皮質」と呼ばれる中心部分の血流量が低下したときにも、歩幅が狭くなり歩行スピードが遅くなることがわかったという。

「そして3つめの要因として、アルツハイマー型認知症の原因物質と考えられるアミロイドβなどの老廃物が脳の中心部に蓄積することでも、歩行速度が遅くなることがわかっています。そして4つめは、『脳梗塞』との関係です。脳には太い血管から細い血管までさまざまありますが、太い血管に血栓が詰まれば脳梗塞となり、発見や処置が遅れると深刻な事態につながります。ところが細い血管に脳梗塞があった場合、症状が出ても非常に軽微だったり、時には出ないこともあります。歩幅が狭い人、小刻み歩行の人は、小さな脳梗塞が複数存在する可能性が高いことが報告されています」

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2025.10.05

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