中国発「LABUBU」だけではない…「ブサカワ」「コワカワ」ぬいぐるみが世界の若者を引き付ける複雑な事情
思春期特有の心理が反映されている
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全世界で人気を博している中国発のキャラクター「ラブブ」。2025年上半期の売上高はすでに138億8000万元で、前年比204.4%増だ。ニューヨーク在住のライター・堂本かおるさんは「ラブブが人気なのはプロモーションが上手なだけではなく、コロナ禍以降の若者のメンタリティを反映しているからではないか」という――。
30カ国以上に実店舗を構える「ラブブ」
中国発の“ブサかわいい”ぬいぐるみ「LABUBU(ラブブ)」が世界中を席巻している。最も人気があるのは17cmのキーホルダー型のぬいぐるみで、若者がバッグやジーンズのベルト通しに着けて街を歩く。今、SNSはそんな若者のラブブ投稿であふれている。他に40cm、60cmの置き型のぬいぐるみもあり、色も衣装もバラエティに富み、限定版の発売日には長蛇の列が出来てあっという間にソールドアウトとなる。
ラブブの販売元の「POP MART(ポップマート)」は、北京に本社を置く中国の企業。ラブブの人気は中国から、まずアジア各国に広がり、今やアメリカ、ヨーロッパ、ロシア、オーストラリア、中東にも及び、30カ国以上の実店舗やオンラインストアで購入できる。
今年8月に公表されたポップマート社の財務報告によると、同社は今年上半期の売上高が138億8000万元で、前年比204.4%増となっており、年内に10億ドル達成を目指している。
多数のセレブがプロモーションに参加
ラブブの爆発的な人気には、いくつもの理由が重なっている。キーホルダー型ですら28~80ドル程度(米国)と高額で、主なターゲットは10~20代。玩具というよりアクセサリー、さらにいえばファッション・ステイトメントだ。ゆえにK-POPグループの「ブラックピンク」のリサから始まり、リアーナ、デュア・リパ、キム・カーダシアン、パリス・ヒルトン、デヴィッド・ベッカム、ブラッド・ピットといった多数のセレブがプロモーションに起用されている。
今夏のU.S.オープンでは、プロモーションに起用された大坂なおみ選手が試合を勝ち上がるごとに異なる往年の名選手、ビリー・ジーン・キング、アンドレ・アガシなどを模したラブブを携えてコートに登場。さらに大坂なおみ選手とお揃いの服を着た、全身がスワロフスキー社クリスタルで覆われたキラキラ光る特別なラブブは、ひときわ目を引き、有名ファッション誌のサイトでも紹介されるほど話題になった。
なお、ラブブは購入して箱を開けるまで色が分からない。この「ブラインド・ボックス」方式も買い手の射幸心を見事に煽り、売り上げに貢献している。現在、販売中の「Labubu-Big into Energy」シリーズにはタイダイ・パステルカラーのピンクやブルーなど6色があり、全色を揃えたければ次から次へと買い続けるか、6箱セットを“大人買い”しなければならない。ただしリミテッド・カラーのグレーは72箱に1箱の割合でしか混入されておらず、6箱セットを買ってもなお、手に入る保証はない。