オートロックでも、防犯カメラでも、警備会社でもない…犯罪者が最も嫌がる「マンションの入り口」の共通点
「見慣れない顔」に反応するから"防犯"になる
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オートロックや防犯カメラのあるマンションは、本当に安心なのか。犯罪学が専門の立正大学の小宮信夫教授は「侵入しようとすれば簡単に突破されてしまうので、過信は禁物だ。これらの防犯設備よりも効果的なものがある」という――。 ※本稿は、小宮信夫『犯罪者が目をつける「家」』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
オートロックは突破されやすい
マンションのオートロックを過信してはいけない。業者を騙られると、住民自らが建物内に招き入れてしまうことがあるからだ。
エントランスでインターホンが鳴らされると、住民は部屋のカメラで訪問者の姿を見ることができる。そのとき映っているのが作業着を着た人物だったら? さらに、「ガスメーターの点検で来ました」など、それらしい訪問理由を口にしたら?
マンション設備に関する点検・修理は、必ず事前に管理会社から連絡があるはずだから、「事前に知らせがない=怪しい」とチラリと感じても、「業者コスプレ」の相手をシャットアウトするのは心理的に難しい。
警戒してオートロックを解除しない賢明な住民もいるだろう。しかし、誰かが解除するまで、犯罪者側はインターホンを鳴らし続ければいいだけだ。わざわざ住民にオートロックを解除させなくても、住民の出入りに合わせてマンション内に侵入する「共連れ」という方法もある。住民だけでなく宅配便や工事会社のスタッフについてオートロックを突破するケースも多い。
「大規模修繕の期間」が危ない
もし、あなたが外出先から戻ったときに、スマホをいじってエントランスで留まっている人物がいたら要注意だ。あなたが自動ドアのオートロックを解除したら、さりげなくついてきて建物内に入るつもりかもしれない。
エントランス付近で怪しい人物と遭遇したら、いったん、駐車場や駐輪場に戻ってタイミングをずらすか、あえて挨拶をしてみる。「どなたにご用ですか?」と声をかけるのもよいだろう。よからぬ企みをしている人物なら顔を見られるのを嫌って、そそくさとその場から立ち去るものだ。
マンションではオートロックがある安心感から、玄関の鍵をかけない住民もいるが油断は禁物だ。オートロックの突破はさほど難しいことではないのだ。業者のふりをして、住民の出入りに乗じて、マンション内に潜り込む方法はいくらでもある。侵入に成功した犯罪者は、あとは無施錠の部屋を1戸1戸探して目的を果たせばいい。
マンションの防犯面で、気を引き締めなければならないのが大規模修繕の期間だ。プロの空き巣は軽業師のような驚くべきテクニックを持っており、雨どいやわずかな凹凸を利用して9階や10階の部屋にも侵入する。私が見た現場では、隣接したマンションへ飛び移って犯行に及んでいた。