「頑張ったわね」と褒めるのはNG…半年待ちが当たり前なほど精神科が必要な子供が増えている理由
無条件の愛は人を育てるが条件付きの愛は人の心をむしばむ
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精神科を必要とする子どもが増えている。なぜなのか。精神科医の村上伸治さんは「子どもは親に愛される条件を満たそうとして、頑張り続ける。精神的にボロボロになりながらも、親の愛を失うまいとして、必死で頑張り続ける子どもたちを見ると、胸が痛む」という――。 ※本稿は、村上伸治『発達障害も愛着障害もこじらせない もつれをほどくアプローチ』(日本評論社)の一部を再編集したものです。
子どもの精神科は半年待ち
今、子どもを精神科で診てもらおうとすると、半年以上も待たないと診てもらえないことが多いです。これは都市も地方も関係なく、全国的な傾向です。診てもらうのに半年も待つなんて、信じられないと思うのが当たり前だと思います。困ったことですが、これが子どもの精神科の現状です。新しい患者さんの受け入れを止めているクリニックもしばしばあります。その理由は、精神科で診てもらった方が良い子どもがどんどん増えている一方、対応する児童精神科医はわずかずつしか増えていないからです。
精神科外来で子どもを診ていると、子ども自身の苦しさがわかる一方、親御さんの必死な思いも伝わってきます。みんな子どものために必死です。「不登校を治してほしい」「手首を切るのをやめさせたい」「勉強を頑張ってほしい」「ストレスに負けない強い子になってほしい」など、親は誰でも子どもの幸せを強く願っています。そして親が考える「幸せ」に向かって、子どもを進ませようとします。
親は我が子を心配して必死だが…
ただ、子どもには子ども側の事情といきさつがあります。たとえば、親の期待に応えようとして頑張りすぎ、その結果の疲労として不登校になっている子どもは少なくありません。そういう子は、失ったエネルギーが充電されるまで休むだけでなく、親の期待に添うのを拒否したり、大人たちが敷いた高速道路から降りて裏路地で休む必要があるでしょう。そのような事情には親は気づかないですし、子ども自身も気づいていなかったりします。不登校の状態は、その子が親など周囲が望むような道ではなく、その子らしさを取り戻しながら元気になる過程として、必要なまわり道である可能性があります。だがそれにも、親も本人も気づいていないことが多いのです。