なぜグーグルは次々新サービスを出しては閉鎖していたのか…一見ムダな試行錯誤に隠された"驚きの戦略"
「Googleビデオ」に「iGoogle」、「GoogleBuzz」も…
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グーグルはなぜ検索サービスでトップを走り続けられるのか。KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院教授の三谷宏治さんは「グーグルは『本業』に集中せず、これまでさまざまなITサービスを開発・買収しては提供し、閉鎖してきた。それには理由がある」という――。 ※本稿は、三谷宏治『経営戦略全史〔完全版〕』(日経ビジネス人文庫)の一部を再編集したものです。
オバマ陣営を支えたグーグルの人物
2012年には、壮絶な誹謗中傷合戦に終始したアメリカ大統領選挙でしたが、その前のは少し違いました。
08年、グーグルでプロダクトマネジャーを務めていたダン・シロカー(Dan Siroker, 1983~)は、グーグルを休職してバラク・オバマ(第44代アメリカ合衆国大統領)の選挙キャンペーンに加わることになりました。その2週間前オバマがグーグル本社で講演したときの「私は、事実やデータに基づく選挙戦をやりたい。だから、エンジニアの皆さんの助けが必要だ」に惹かれたのです。
ネット広報を担当したシロカーはまず、目標となる指標を定め、施策の効果を数字で測定し、その改善を図り続けました。
結果として、シロカーは「ウェブサイトへの登録率40%増、メールアドレス300万件増、ボランティアの30万人増、寄付金6000万ドルアップ」に貢献したといわれています。それを支えたのが、彼がグーグルで実践していた「A/Bテスト」です。
「A/Bテスト」で改善を重ねる
A/Bテストとは、AとBのやり方を、両方試しにやってみて、よかった方を採用する、という方法です。もともとはダイレクトメールで用いられた手法で、「どっちのチラシの方が、レスポンス率が高いか」などを、これで測っていました。
インターネット上では、これをもっと低コストで手軽に素早く行えます。
たとえばウェブサイト上で使う画像や説明文などを、複数パターン(新しいものを1つでもいい)用意します。そして、それらを入れ替えたウェブサイトを、実際に並列で公開してしまうのです。サイトを訪れる人のうち、数%だけを(本人に知られぬよう)新しいパターンに誘導して、実際のクリック数やコンバージョン率などを基に、どのパターンが優れているかを見極めます。
2011年、グーグルはこういったA/Bテストを約7000回、検索サービスで行ったといいます。