わずか半年で70城を制圧…抜群のスピード感で軍を進めた武将が用いた圧倒的ポジティブな「噂」の流し方

わずか半年で70城を制圧…抜群のスピード感で軍を進めた武将が用いた圧倒的ポジティブな「噂」の流し方

「一緒にボコしちゃいましょうよ!」で最強チーム結成

不利な状況下、たった一人の武将が5カ国を動かした。その名は楽毅。敵対する斉に対して、燕・趙・魏・韓・楚の連合軍を組織し、わずか半年で70城を制圧。大人がハマる歴史系YouTuberセピアさんが、ビジネスにも通じる交渉術の本質を解説する――。 ※本稿は、セピア『ゾクゾクするほど面白い 始皇帝と春秋戦国時代』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

先ず隗(かい)より始めよ

中国・戦国時代(前403年~前221年)のこと。東北に位置する国、燕えんの国王・昭王は途方に暮れていました。隣国斉せいの属国状態であり、しかも国土は斉の侵攻と内乱で荒れ果てているとあって、何とか復興の手掛かりを掴みたいと人材発掘に勤しむ昭王ですが、そんなに都合良く有能な人材が集まるわけもなく。とある日に、かねてから師と仰いでいた郭隗かくかいという賢者に尋ねます。

「先生、どうすれば燕に有能な人材が集まるでしょうか?」

すると郭隗は自信満々に答えます。

「昔あるところに良い馬を求める人がおりまして、使者に大金を持たせて買いに行かせました。使者が行ってみるとその良い馬は死んでいたので、使者はその馬の骨を500金で買ってきました。骨を買ってくるとは何事かと怒る主人に、使者は『骨でさえ大金で買ってくれるという噂が広まれば、生きた良馬ならもっと大金で買ってくれると評判が立つでしょう』と言って説得しました。この使者の言う通り、主人のもとにはまもなく良馬が3頭もやって来たといいます。」

「なるほど……」

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燕昭王像(写真=DIGITALE SAMMLUNGEN OSTASIEN/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons)

真に有用な人材を集めるある秘策

鋭い昭王は郭隗の言わんとすることを察します。

「人間とて同じことです。殿下が有能な人材をお求めであるならば、まずこの郭隗を重用してみてはいかがですかな。私自身はたいした能力もない平凡な人間です。しかしながら燕はこんな郭隗でも重用される国なのだという評判が中原に轟けば、まもなく真に有能な人材が続々と集まってくることでしょう。」

何とも都合の良い言い分です。郭隗はきっと腹の内で、

(これで自分は何もせずとも得をして、殿下としても人材が集まってくれば文句はあるまい、我ながら上手いこと言ったな、はっはっはっ!)

と思っていたことでしょう。

この郭隗の発言が由来となって【先まず隗より始めよ】という故事成語が生まれました。「大きな事を成し遂げるにはまず身近なことから始めなさい」という意味の言葉です。近年では言葉の響きのイメージからか、「言い出しっぺが最初に実行しなさい」という意味で使われてしまうことも多いようですが、本来は明らかな誤用です。

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2025.09.18

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