「三角形の内角の和は180°」とは限らない…「絶対に覆らない真理」を覆した数学者らの「2000年越しの大逆転」
直感に反する「非ユークリッド幾何学」の世界
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算数で習った「三角形の内角の和は180°」はどんな時でも正しいと言えるのか。NHKの知的エンターテインメント番組「笑わない数学」の放送内容を再構成した書籍より、「非ユークリッド幾何学」についての箇所を紹介する――。 ※本稿は、NHK「笑わない数学」制作班編『笑わない数学3』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
「当たり前」を示したユークリッド幾何学
今回取り上げるテーマは「非ユークリッド幾何学」。なんだか難しそうな言葉ですね。
非ユークリッド幾何学というからには、「ユークリッド幾何学」があります。非ユークリッド幾何学と違って、こちらは多くの人に馴染みのあるものです。現代の私たちが中学校で習う「図形の性質」こそが、ユークリッド幾何学だからです。
その単元で私たちは、「二等辺三角形の2つの底角は等しい」とか、「平行な2直線の錯角は等しい」とかを習いますが、これらはいずれも、ユークリッド幾何学の性質です。
中学校で習う図形の性質は、およそ50個。高等学校ではもっとたくさん登場します。しかも、これらはただ暗記すればいいものではなく、本当に正しいことをきちんと証明できる必要があります。
なんだか大変そうですね。しかし実は、すべての図形の性質は、「公理」と呼ばれる当たり前にしか思えない簡単な事柄から証明できるのです。しかも、公理はたったの5つしかありません!
その公理とは、ずばり、次の5つです。
公理1「2つの点を通る直線は、1本だけ引ける」 |
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公理2「直線は、いくらでも延ばすことができる」 |
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公理3「ある点を中心にして、好きな(任意の)大きさの円を描くことができる」 |
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公理4「直角はすべて等しい」 |
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公理5「直線と(その直線上にない)点があるとき、点を通って、直線に平行な直線は1本しか引けない」 |
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いかがですか? どれもこれも「当たり前」だと感じられるのでは?
そして驚くべきことに、皆さんが習ったような図形の性質はどれも、このたった5つの公理から証明できてしまうのです。