だから二宮和也主演「8番出口」は「国宝」超えに…「映画館離れ」の若者が"ループするオジサン"に熱中するワケ
劇場公開3日間で9.5億円、実写映画年間1位のロケットスタート
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邦画業界が何度目かのホラーブームに沸いている。エンタメに詳しいライターの武井保之さんは「インディーズゲーム発の『8番出口』も今年最高のスタート成績になった。コスパにこだわるZ世代がホラーを見るため映画館に足を運んでいる」という――。
『ドールハウス』『近畿地方』に続きヒット
8月29日に公開された二宮和也主演の映画『8番出口』が、2025年の実写映画No.1の公開3日間興収(9.5億円)となる大ヒットスタートを切った。本作は、脱出ホラー系の同名インディゲームを原作にする、サイコスリラー的な要素が強いホラー作品だ。観客を選びそうなタイトルであるにもかかわらず、若い世代を中心に幅広い層が映画館に足を運んでいる。
振り返ると、ここ最近では6月公開のミステリーホラー『ドールハウス』が20億円に迫るヒットになっており、8月公開のオカルトホラー『近畿地方のある場所について』も15億円が目前。また、2024年のサスペンスホラー『変な家』が50億円超えの大ヒット(年間8位)を記録したのも記憶に新しい。
さかのぼれば、ホラーはコアファンのいる鉄板人気ジャンルであり、かつてのJホラーの先駆けとなる『リング』『呪怨』から近年の『事故物件 恐い間取り』『ぼぎわんが、来る』、洋画でも定番の『エクソシスト』や『死霊館』のほか、直近でも『ゲット・アウト』や『ミッドサマー』、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』など、多彩なストーリー性の幅広いホラーテイストの話題作が生まれている。
そうしたなか、ここ最近のトレンドになっているのが、『8番出口』や『ドールハウス』『近畿地方のある場所について』『変な家』といったホラーアトラクション系映画だ。従来のホラー映画とは異なり、観客がコア層だけでなく、若い世代の一般層に広がっていることで、ヒット規模が大きくなっている。
ひたすら出口を目指すシンプルなゲームが原作
『8番出口』は、インディゲームクリエイターのKOTAKE CREATE氏が2023年に制作し、全世界累計170万ダウンロードを突破した同名ヒットゲームが原作。ゲームファンから圧倒的に知名度の高いタイトルを、映画プロデューサーであり、小説家、映画監督としても活動する川村元気氏が監督と脚本を手がけて実写映画化した。
本作は、地下鉄駅の無機質な地下通路の無限ループに閉じ込められたプレイヤーが、さまざまな“異変”を正確に察知することで、そこから脱出できる唯一の出口となる「8番出口」に向かってさまよう姿を描く。
もともとは、物語のないゲームだ。プレイヤーは地下通路の異変を探して、その有無によって進む道を選択する。それがあっていれば次に進み、間違えていれば振り出しに戻る。その繰り返しで8番出口を目指す。そんなただひたすら出口に向かうゲームの映画化においては、その空間に宿るプレイヤーにとっての恐怖がストーリー化されていった。