半年間、食パンを1万枚以上焼き続けた…累計400万台を突破した大ヒット「アラジン」高級トースターの開発秘話
0.2秒で発熱するグラファイトヒータの制御に一苦労
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パンを美味しく焼ける高級トースターが注目を集めている。普通のトースターと何が違うのか。トースター市場で約20%のシェアを持つ株式会社千石の大ヒット商品「アラジン グラファイトトースター」の製造現場を取材した――。(第1回/全2回)
「1万円超の高級トースター」先駆けた2社
もともと、オーブントースターは1万円以下の低価格な製品が中心だった。しかし、2015年に、BALMUDAの「BALMUDA The Toaster」と、千石の「アラジン グラファイトトースター」が、約2万円という価格設定で登場。新たに高級トースター市場を生み出した。
発売直後は、「トースターに2万円?」という声もあったが、先行した2台で焼いたトーストの美味しさの認知が広がっていった。
その後、パナソニックやシャープ、ツインバードなども続々と高級トースター市場に参入、1万円を切る従来型のオーブントースターと比較して、より美味しくトーストが焼ける、お惣菜パンを焼きたてのようにリベイクできるといった点が支持を集め、市場を拡大している。
暖房機器で成長した老舗メーカー
今回、トースター市場で約20%のシェアを持ち(千石調べ)、高級市場をけん引する千石の高橋弘真さんに、「アラジン グラファイトトースター」シリーズがヒットした理由を聞いた。
千石は、1953年に創業した老舗メーカーだ。70年代より家電やストーブなど暖房機器のOEM製造によって成長した。そして、2005年には、英アラジン社のブランド使用権を獲得し、レトロデザインが特徴の石油ストーブ「ブルーフレーム」の製造と販売を行っている。
自社ブランドのトースターの開発が始まったのは2012年だ。前年に発生した東日本大震災と、それに伴う省エネ需要の高まりによって、同社のビジネスに変化をもたらした。