「私にはまだ右目がある」44歳で手に入れた字幕翻訳の仕事を最期までやりきる…89歳・戸田奈津子さんの矜持

「私にはまだ右目がある」44歳で手に入れた字幕翻訳の仕事を最期までやりきる…89歳・戸田奈津子さんの矜持

「今、死んで絶筆しても、何も後悔はない」

日本で公開される洋画に必ずと言っていいほど見かける名前がある、“字幕 戸田奈津子”。映画字幕翻訳の第一人者として、実に2000本近くの映画字幕を制作してきた。連載「Over80『50年働いてきました』」。22人めは、約半世紀もの間、ひたすらに映画字幕に携わってきた1936年生まれ89歳——。

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撮影=田子芙蓉 戸田奈津子さん

この女性はまさに変態だ

映画字幕翻訳家のレジェンド・戸田奈津子氏(89)を取材したその日、筆者は電車に乗って取材場所に向かったのだが、“変態”についてのある中学の入試問題を社内広告で目にした。そこには、建築家の小堀哲夫著の『建築家のアタマのなか』から抜粋されたセンテンスの中に、氏が考える変態とは何かが記されていた。

(以下抜粋 出典=日能研2025年額面広告より)

なぜ建築家には空想力が必要なのか(中略)。人を感動させられる“場所”をつくるのには空想力が必要だと思っている。空想と想像にはちがいがある、空想には変態さがある。この言葉を誤解しないでほしい。辞書を引いてみると、変態の言葉の意味の一つに――ふつうとちがう状態。一ぱん的な感覚からかけはなれた趣向・方向性という意味でこう定的に用いられる場合もある(中略)。僕が言いたいのは、この辞書にあるように、自分の感覚や欲求、しょう動を純すいに、どん欲に追い求めていくことだ(後略)。

建築家と字幕翻訳家の差はあれど、戸田さんの仕事人生を伺った時、この広告を思い出した。自分の感覚や欲求、衝動を純粋に、貪欲に追い求めてきた、いい意味での“変態”そのもの。だからこそ人を感動させられる作品を生むことができた。

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2025.09.14

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