なぜ中国はパンダを日本に送らなくなったのか…「1年後はパンダゼロに」悲しみの声を無視する習近平主席の思惑

なぜ中国はパンダを日本に送らなくなったのか…「1年後はパンダゼロに」悲しみの声を無視する習近平主席の思惑

アドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)にいるパンダ4頭が6月末で中国に返還されることが決まった。パンダが送られることはもうないのか。中国の事情に詳しいジャーナリストの中島恵さんは「中国は米中対立に揺れる日本の対応をうかがっているようだ」という――。

突然の知らせに悲しみの声が…

4月24日、和歌山県白浜町のレジャー施設、アドベンチャーワールドにいる4頭のジャイアントパンダ(以下、パンダ)が中国に返還されることが決まった。ちょうどGWの連休に入るタイミングだったこともあり、同施設には大勢の観光客が押し寄せ、突然のパンダの返還決定を残念がった。

今津孝二園長は報道陣の取材に対して「契約満了なので、致し方ない。中国に戻っても元気で、と伝えたい」と語ったが、人口2万人弱の白浜町の観光産業にとっては大きな痛手であり、日本中のパンダファンにとってもショッキングな出来事だ。

帰国が発表されたのは、良浜(24歳)、結浜(8歳)、彩浜(6歳)、楓浜(4歳)で、いずれもメス。帰国の理由は、日中双方による「ジャイアントパンダ保護共同プロジェクト」の契約期間が今年8月で満了になるためだ。暑さに弱いパンダの体調に配慮して、前倒しして6月末にも返還される見通しだという。展示は帰国ぎりぎりまで行われる予定で、見送りイベントの実施も予想される。

良浜は高齢に差しかかっているので、パンダの医療体制が整っている四川省の環境で静かに過ごし、結浜など3頭は、将来の繁殖を目指し、パートナーを探すことになるという。

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和歌山のパンダ返還は中国でも報じられた(中国の看看新聞のSNSより)

「パンダの贈呈」が始まったのは80年以上前

これにより、現在、日本にいるパンダは上野動物園にいるシャオシャオ(暁暁=3歳)とレイレイ(蕾蕾=3歳)の2頭のみとなるが、この2頭も契約により来年2月の返還が決まっており、その後、もし中国から次のパンダが来なければ、日本にいるパンダはゼロになってしまう。日本側はオスの貸与を熱望していたとの報道もあるが、それは叶わなかった。

今回の動きについて、中国側に何らかの思惑があるのだろうか。返還が発表された当日、中国メディアを見てみたが、大きな扱いではなかった。中国にとっては国外に数多くいるパンダのうちの4頭なのかもしれない。筆者はパンダ専門家ではないが、日中関係の歴史や、米中関係などを見ながら、考えてみたい。

かなり古い話になるが、四川省の山中(現在の雅安市)でパンダが「発見」されたのは1869年、布教活動をしていたフランス人宣教師による。以後、各国の探検家から注目を集め、パンダの希少価値や人気に目をつけた中華民国(当時)政府が、1941年、日中戦争の際、欧米の協力をとりつけるという政治的な意図をもって米国に贈呈したのが「パンダ外交」の始まりだといわれる。以後、中国は世界各国に中国固有の動物、パンダを送ってきたという歴史がある。

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2025.05.05

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