ボトルの色を青→白にしただけで赤字転落…ファンケルのクレンジングオイルのデザイン変更が大失敗したワケ
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多くのブランドのリブランディングが失敗してしまうのはなぜなのか。ブランドマネージャーの西口一希さんは「明確な顧客イメージや何を便益と独自性とするのかのイメージを持たず、闇雲にブランド名やロゴを変えたり、プロダクトの中身を変えたりすると既存顧客が対象のブランドを想起できなくなり、むしろ離反率の増加を招く恐れがある」という――。 ※本稿は、西口一希『ブランディングの誤解』(日経BP)の一部を再編集したものです。
リブランディングの多くは失敗する
ブランドは長く商品を展開する中で、徐々に業績が右肩下がりになる時期を迎えることがあります。そのてこ入れとして用いられる手段の一つに「リブランディング」があります。このリブランディングの失敗は、枚挙にいとまがありません。
リブランディングの目的が低調気味なブランドをてこ入れして、売り上げを上げることだとしても、明確な顧客イメージや何を便益と独自性とするのかのイメージを持たず、闇雲にブランド名やロゴを変えたり、プロダクトの中身を変えたりすることはむしろ悪手です。既存顧客が対象のブランドを想起できなくなり、むしろ離反率の増加を招く恐れがあります。
リブランディングの典型的な失敗例は、低迷する業績を「情緒的価値や心理的価値をブランディングでつくる」ことで、底上げしようとするケースです。著名なデザイナーを起用し、新たなロゴや統一感のあるデザインなどで、かっこよく見せようとして、結果的に顧客を失う事例は数多くあります。
批判が相次いだローソンのパッケージデザイン
ローソンのプライベートブランド(PB)の失敗はその典型例でしょう。
同社は20年春にPBのパッケージデザインをベージュを基調としたパッケージに油彩タッチの商品イラストを載せ、ローマ字で商品名を記載した、まるでシンプルな雑貨のようなデザインに全面刷新しました。
お気に入りの食器や雑貨とともに並んでいても違和感のないようなデザインを採用することで、価格だけで選ばれる従来のPBから、「ローソンのPBだから」を理由に選んでもらえるようなPBへと生まれ変わることを目指した刷新でした。
意欲的なデザイン刷新でしたが、ローソンの意図に反して、顧客からはネットを中心に「商品が分かりにくい」といった批判が相次ぎました。
例えば、納豆は「NATTO」、豆腐は「TOFU」といったローマ字の表記は顧客視点では見慣れないため、ぱっと見で何の商品か分かりにくい。さらに、商品カテゴリーを問わずに同一フォーマットを採用していたため、統一感はありましたが、かえって区別のしづらさに拍車をかけました。
ローソンは批判を受け、PBのリブランディングから2〜3カ月後に、約700品目の全パッケージの再改修を決断。PBのパッケージの再改修にさらなるコストをかけることになりました。
本来PBのパッケージで伝えるべきことはおいしさなどだったはず。ところが、商品のよさが伝わらない方向にリブランディングをしてしまった。これではうまくいきません。リブランディングは商品・サービスを買う理由、競合ブランドを選ばない理由が分かっていて、その強みを増幅させる、あるいは理解させるための目的でしか成立しません。
なお、2024年時点では、ローソンはこの問題を解決し、「おいしさ」や「中身の魅力」が伝わるパッケージへ変更し、業績も好調です。