習近平主席はトランプ大統領の"弱点"を見抜いている…テスラやウォルマートを自滅させる「関税合戦」の大誤算
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トランプの対中強硬姿勢に早くも綻び
4月後半になって、トランプ大統領の強気一辺倒だった政策姿勢に少しずつ変化が表れている。特に、中国に対して、関税率を145%まで引き上げ、徹底して圧力をかけるスタンスは後退している。同氏は、毎日、中国と連絡を取り合っていると述べているが、中国サイドは貿易交渉を行っていないとすげない態度をとっている。
政権発足当初、トランプ氏は自信満々の様子だったが、政権発足から100日を経過し、金融市場の反応などで政策運営の馬脚を現しつつある。一方、最大の標的である中国は、徐々に対トランプ氏の政策に自信を持ち始めているようだ。
その背景には、対中関税をはじめトランプ氏の政策が、米国経済に深刻な打撃を与えるとする企業経営者や消費者の心理がある。中国はその展開を想定し、時間軸を広げて対米の貿易戦争に臨む方針なのだろう。
ただ、トランプ氏の行動は読みづらく、今後も世界の経済に不確実性を与える政策を続ける可能性は残るだろう。4月17日、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の解任論が再度浮上し、米金利は上昇した。金利上昇は、投資家だけでなく、米国の消費者や企業経営者の懸念を追加的に煽った。そうした事態は、これからも発生する可能性は払拭できない。そのリスクだけは覚悟しておいたほうがよい。
中国に弱点を見透かされるトランプ氏
トランプ大統領は、おそらく自身の思いつきで中国に対する追加関税率を145%に引き上げた。それに対して中国は、即座に徹底抗戦の構えを示し125%に関税率を引き上げた。
4月下旬、ベッセント財務長官は、中国との緊張感の緩和が重要として関税引き下げに含みを持たせた。その発言は、米中貿易戦争が米国の国債経済に与える影響の大きさを物語っているともいえるだろう。これ以上貿易戦争を拡大させてしまうと、米国にも重大なマイナスの影響が出るためだ。
政治・経済・安全保障などあらゆる面で、米国と中国は競合している。米国にとって、中国は最大の脅威であることは間違いない。その一方、米中は経済面で相互依存度を深めている。米国のナイキやギャップなどは、中国の安価な労働力を活かして製品を製造し、価格競争力を高めた。
その上でブランド価値を磨き、国際的な企業として成長した。また、2000年代以降、米アップルは国内では高付加価値型のソフトウェア開発に集中した。製品の生産は、主に中国の企業に委託した(水平分業体制)。