「まもなく世界は"偽物の人間"であふれ返る」歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリが語るAIで民主社会が崩壊する日

「まもなく世界は"偽物の人間"であふれ返る」歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリが語るAIで民主社会が崩壊する日

人工知能の進化は人類にどんな影響を及ぼすのか。歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による話題の新著『NEXUS 情報の人類史』より、人間と対話できる生成AIについての箇所を特別公開する――。(第3回) ※本稿は、ユヴァル・ノア・ハラリ『NEXUS 情報の人類史 下 AI革命』(柴田裕之訳)の第6章から一部抜粋、再構成したものです。

テクノロジーの進化が民主主義の危機になったワケ

民主主義は話し合いだ。その機能と存続は、どのような情報テクノロジーが使えるかにかかっている。何百万もの人の間で大規模な話し合いを行うためのテクノロジーは、歴史の大半を通して存在しなかった。

前近代の世界では、民主制は古代ローマやアテナイのような小さな都市国家か、さらに小さな部族の中でしか存在しなかった。やがて政治組織が拡大すると、民主的な話し合いは成り立たなくなり、権威主義体制がそれに代わる唯一の選択肢として残された。

大規模な民主制がようやく実現可能になったのは、新聞や電信やラジオのような近代的な情報テクノロジーが台頭してからだ。近代的な民主制は近代的な情報テクノロジーの上に築かれてきたことを踏まえると、根底にあるテクノロジーに大きな変化があれば必ず、政治的変動につながる可能性が高いと言える。

昨今の民主主義の世界的危機も、これで部分的に説明がつく。アメリカでは民主党支持者と共和党支持者は、誰が2020年の大統領選挙に勝ったのかといった基本的な事実についてさえ合意することができない。同じような破綻は、ブラジルやイスラエルからフランスやフィリピンまで、世界中の他の多数の民主主義国でも起こっている。

インターネットとソーシャルメディアが普及し始めた頃、テクノロジーの熱烈な擁護者たちは、インターネットとソーシャルメディアは真実を広め、独裁者を倒し、自由の普遍的勝利を確実にすると約束した。

だがこれまでのところ、両者はそれとは正反対の影響をもたらしてきたように見える。今や私たちは史上最も高度な情報テクノロジーを手にしているが、話し合う能力を、そして耳を傾ける能力はなおさら、失いつつある。

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2025.05.10

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