「SHOGUN 将軍」以上の大ヒット要素を秘めている…1話1億円をかける"ガチ感"が海外で注目を浴びる「NHKドラマ」
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ドラマ「SHOGUN 将軍」の世界ヒットが追い風
今、日本の歴史ドラマに追い風が吹いている。その理由の1つにドラマ「SHOGUN 将軍」の世界ヒットがある。TVドラマ界で最高峰の栄誉とされる米エミー賞で歴代最多の18冠を獲得し、これまでの受賞実績数は90に上る。主演・プロデュースを務める真田広之をはじめ、アンナ・サワイ、浅野忠信など日本人俳優が世界の晴れ舞台でこれほどまでに受賞ラッシュを受けたのは過去にない。世間でも話題になり、開催中の大阪・関西万博では撮影時に実際に使われた甲冑と衣装が期間限定で特別展示されると、初日だけで9181人が来場したという。
しかも、一時のブームで終わってしまう話でもなさそうだ。製作元のウォルト・ディズニー・カンパニーはシーズン2どころか、シーズン3まで計画を進めている。世界のディズニーが社を挙げて日本を舞台にした、ほぼ日本語の時代劇ドラマに力を注いでいる。
この流れは日本を代表する歴史ドラマシリーズのNHK「大河ドラマ」を海外にも広げる絶好の機会だろう。60年以上にわたり日本の歴史上の人物に焦点を当ててきた実績を生かさない手はない。
物語の主人公の世界的な知名度の高さが大きな問題にならないことは「SHOGUN 将軍」がすでに証明している。モデルの徳川家康は日本人であれば誰でも知っているが、海外では侍の1人という認識に過ぎない。知名度以上に実は海外でも受ける重要なポイントは、普遍的なテーマを扱っているかどうかにある。時代の変遷の中で人の生き様が見えてくる面白さを見出してきた「大河ドラマ」はこの条件を満たす。
ビジネスドラマとしての魅力もある「べらぼう」
現在放送中の「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」はビジネスドラマとしての魅力もある。横浜流星演じる主人公・蔦屋重三郎が幾多の失敗を重ねながら名もない町人から「江戸のメディア王」にのし上がっていく様子を描いている。舞台こそ江戸時代だが、目の前のプロジェクトを成功へと導いていく過程は現代と大きくは変わらないと感じさせる。サクセスストーリーとしての面白さがあり、国境を超えて共感を生むはずだ。題材そのものは海外にも広がるポテンシャルを秘めている。
製作するNHKも攻める動きを見せている。世界のドラマ界が最も注目するフランスのTVドラマ祭「シリーズ・マニア」で「大河ドラマ」をはじめとするNHKドラマのプレゼンテーションを現地時間3月26日に行った。10万人規模のドラマファンや業界関係者が参加し、Netflixの新作発表などが注目されるなかで決して目立つ存在ではなかったが、6人のNHK現役プロデューサーが登壇し、作品づくりの背景を真摯に語った。