何があっても心が折れない人はこれが圧倒的に強い…「面倒な人とは縁を切る」が正しくない心理学的理由
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挫折しても、立ち直る人と、そうでない人がいる。何が違うのか。心理学博士の榎本博明さんは「立ち直る力が強い人には8つの心理的傾向がある。この傾向を意識すれば、一時的に落ち込むことがあっても、けっして潰されることなく立ち直っていくことができる」という――。 ※本稿は、榎本博明『自己肯定感は高くないとダメなのか』(筑摩書房)の一部を抜粋・再編集したものです。
「苦手な人」との関わり方
前回の記事では、自己肯定感とは、安定的・持続的なものであるとお話した。
ほめられれば高まり、叱られれば低下し、何かがうまくいけば高まり、うまくいかないと低下するような一時的な気分の高揚とはまったく異なる性質のものだ。
そうした、本当の意味での自己肯定感を高めるにはどうしたらいいのか。
本稿でも引き続き、2020年に「教育新聞」に「なぜ「自信のない子」が多いのか――自己肯定感を育む11の方法」として連載したものをもとに、重要と思われることを列挙しつつ解説していく。
①とくに親しくない相手とのかかわりを無難にこなす経験を積む
私たちは、親しい絆によって支えられるが、面倒な相手とのかかわりには大いに頭を悩ますものである。
人間関係は、ストレス緩和効果をもつこともあるが、ストレス源にもなり得る。社会人にとっての二大ストレス源が過労と職場の人間関係とされるが、子どもや若者にとっても人間関係が大きなストレスになっていたりするのである。
コミュニケーションが苦手な子どもや若者が増えているということで、新人採用にあたってほとんどの企業がコミュニケーション力を最も重視している。なぜコミュニケーションが苦手なのかと言えば、集団遊びが少なくなるなど人間関係に揉まれることが少なくなったからである。
昔は近所の子どもたちの集団遊びがあった。そこでは、年齢に関係なくみんなで遊んだ。年上の子と遊ぶことで、頼ったり従ったりするかかわりに馴染む。年下の子と遊ぶことで、保護したり注意したり大目に見たりするかかわりに馴染む。さらには、親しい子ばかりでなく、あまり親しくない子や仲の悪い子とも遊ばねばならないため、いろんな距離感でかかわる訓練になる。
ところが、今はとくに親しい数人の同級生と遊ぶばかりなので、いろんな距離感でかかわる経験が乏しい。あまり親しくない友だちとは、ほとんどかかわることなく過ごすことができる。似た者同士で過ごすばかりであるため、異質な相手とどうかかわったらよいかわからない。それに加えて、習い事や学習塾に通う子どもが多く、子ども同士で遊ぶ経験自体も乏しくなっている。