NHK大河で福原遥が演じる吉原の花魁の悲劇…「たがそで」を1億円で身請けした男が理不尽にも処刑されたワケ

NHK大河で福原遥が演じる吉原の花魁の悲劇…「たがそで」を1億円で身請けした男が理不尽にも処刑されたワケ

蔦屋重三郎が活躍した時代、吉原の遊女・誰袖(たがそで)が約1億円で武士に落籍され、世間の注目を集めた。作家の濱田浩一郎さんは「身請けしたのは勘定組頭だった旗本。蝦夷地開発計画にも関わったキレ者だったが、彼の運命は暗転する」という――。

福原遥演じる若い遊女「誰袖」は最高位の花魁

大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(NHK)で主人公の蔦屋重三郎(演・横浜流星)を慕う「当代一の花魁」として登場してくるのが、福原遥さん演じる誰袖です。

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2022年9月2日、NHKの連続テレビ小説「舞いあがれ!」で主演を務める福原遥が始球式に登場=甲子園

ドラマにおいて誰袖は大文字屋の遊女であって、かつては「かをり」と名乗っていました。

誰袖の名は『吉原細見』などにも残り、吉原の名物男である大文字屋市兵衛(伊藤淳史)の妓楼で、最高位「呼び出しの花魁」になったことが確認できます。その美しい姿は山東京伝こと画家名・北尾政演(古川雄大)も浮世絵に描きました。

しかし、誰袖が蔦重を慕っていたというのはフィクションでしょう。

この誰袖を身請けしたとして有名なのが土山宗次郎孝之(栁俊太郎)です。

その身請け金がこれまた「べらぼう」で1200両(米価で換算し現在の価値で6000万円~1億円ほど)とも言われています。鳥山検校(市原隼人)に落籍された遊女・瀬川(小芝風花)の1500両という金額にも匹敵します。

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北尾政演(山東京伝)画『吉原傾城新美人合自筆鏡』に描かれた大文字屋の遊女・誰袖(たがそで)、中央(出典=国立博物館所蔵品統合検索システム)

約1億円で誰袖を落籍した男、旗本の土山宗次郎とは?

宗次郎は藤右衛門孝祖(勘定組頭)を父として生まれました。宗次郎には妻もおり、それは日下部七十郎の娘です。宗次郎が父と同じ勘定組頭にまで出世したのが、安永5年(1776)11月のことでありました。

宗次郎は牛込御細工町に豪華な邸宅を構えています。それは「酔月楼」と称されました。豪華な邸宅において、宗次郎は文化人らと交友していきます。例えば大田南畝(号・蜀山人、演・桐谷健太)。狂歌や黄表紙の作者であり、蔦屋重三郎とも懇意にしていました。それから、南畝とも仲が良かった狂歌師・戯作者の平秩東作(内藤新宿の煙草屋、演・木村了)も宗次郎と交友がありました。東作は平賀源内(安田顕)とも親しくしており、「狂歌界の長老格」とも評されますが、その生活は貧しかったとされます。

宗次郎や南畝・東作はよく一緒に遊んでいるのですが、南畝の日記『三春行楽記』(『大田南畝全集 第8巻』岩波書店、1986年)には、正月3日、宗次郎邸で「男女交錯、相酌無算(男女が酔って乱交し、酒をどんどん飲ませ合った)」と乱痴気騒ぎの酒宴を催していることが記されているのです。

その2日後、南畝は宗次郎とその愛人「流霞夫人」と傀儡(人形遣いの見世物)を見物したり「中戸楼」で遊んでいます(流霞夫人は日下部七十郎の娘とは別人と考えられています)。ちなみに『三春行楽記』には遊女「誰袖」や「書肆耕書堂」(蔦屋重三郎が営む本屋)も登場するのです。

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2025.04.29

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